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過去の話とあったかもしれない幸せな未来④

泣き続けるリサを落ち着かせ、一旦帰る事にした。放って置けなかったため、モロー家に来るように伝えたが、家に帰りたいと1人で帰ってしまった。


その後リサの両親の遺体はモロー家が請け負い、葬儀もモローが執り行うこととなった。


死後数日で葬儀が行われる。

久しぶりに会ったリサは少しやつれており、全く言葉を発さず、葬儀の時も亡くなった時に母親が抱きしめていたという魔法石を手にし、ただただ涙するだけだった。


「リサ」

「………」


遺体が土に埋まっていく様子を見ながら隣にいるリサに声をかける。当然のように返事はない。


「リサ」

「………」

「リサ、大丈夫だ。俺がいる。」

「………」

「生活に困ったら言ってくれ、仕事だっていくらでもある。」

「………」

「寂しくなったら言ってくれ、一緒にご飯を食べよう。」

「………」

「辛くなったら言ってくれ、いつだって一緒に泣こう。」

「………」

「リサ、俺はいつだってリサの支えになりたい。リサ、だから大丈夫だ。大丈夫。」

「…アシル!」


やっと聞こえた久しぶりのリサの声。

いつも声が聞こえるだけで嬉しいのに、今日は悲しくて仕方がない。

大きな声で泣くリサの肩を強く抱き、俺も大声で泣きじゃくった。



葬儀も終わり、リサを家まで送り届けた。

葬儀中よりは元気そうだが、それでも空元気なのは間違いなかった。


「アシルありがとう。アシルがいてくれて助かったよ。私1人じゃ何も出来なかったもん。」

「まあここら辺を取り仕切る商会だからな。リサは何も気にするなって。あとこれ今渡すものじゃないかもしれないけど…」


ある程度の金額の入った封筒を渡す。

父親からの香典と、商会からの見舞金。そしてそれ以上の俺からの金。

少しの間何もせずゆっくり出来るだけのお金が入っている。


リサは受け取り中身を見ると驚いた。


「こんなに受け取れないよ!」

「お前の両親は色々稼がせてくれたからな。当然の金額だよ。受け取っておけって。」


本当はこんなに貰えるはずはない。

でもそれを知らせると遠慮してしまい喪に服す時間がなくなってしまうかもしれない。

金で恩を売るような感じがして複雑だったがこれが正解だと思う。


リサは複雑な表情をしながら「わかった。助かる。ありがとう。」と礼を言い、封筒を引き出しにしまった。


そして封筒と一緒に遺品の魔法石をしまった。


「その魔法石ってお袋さんが最後持ってたんだっけ?」

「そうなの。すごい大事そうに持ってたみたい。発掘したばかりにしては綺麗な形なのよね。」


丸みを帯び、手のひらに収まるくらいに少し加工されたような魔法石。

発掘したばかりでこの形はまずない。違和感が強い。


「もしかしてこれって何か魔力が入ってたりするのか?」

「え?」


これから何かに使うと言わんばかりの形、もしくは『使った後』。リサの両親が何かに使おうと思っていた可能性もゼロではない。


「でも何が入ってるんだろう。お母さんが入れたのかな?」

「いや、入ってるものを買ったのかもしれない。でも石だけじゃわからねえな。」


引き出しから出された石をまじまじと2人で見る。


「この大きさ、何に使うかなぁ」

「鉱山で使うって言うなら灯りか?」

「灯りの魔法石をランタンに入れず手持ちにするかなぁ。それに鉱山で使うには高価すぎるよ。」

「確かに。じゃあなんだろう…あっ!」



ひとつの記憶を思い出す。以前貿易のため隣国と連絡を取った際、ニュアンスも含めて伝えたいと言われて魔法石に「映像」を入れたもの見たことがある。その時の石と同じくらいの大きさかもしれない。


「いや、違うかもしれない。でも、ちょっと待っててくれ!」

「アシル!?」


リサの言葉を無視するように急いで家に帰りその時使った映写機を手にした。

もしかしたら検討はずれかもしれない。でも何か写っていたら、それがリサの支えになるような物なら。


祈るような気持ちで映写機を持ってリサの家に再度向かった。

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