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異世界転生したはいいものの

「いったーい…」


目覚ましより前に背中の痛さで起きる。

昨日は残業に残業を重ね、家に帰れずオフィスチェアを並べただけの簡易ベッドで寝たことを思い出した。


「椅子だもんね…そりゃ痛くもなるわ…ってあれ?」


起き上がろうとすると、かけた覚えのない薄っぺらい布団がかかっていた。

驚いて周りを見渡すと寝る前はオフィスだったはずの部屋は簡素な木造の部屋になっていた。


「え?ええ?ええええええ!!??」


オフィスチェアは粗末なベッド、デスクはガタガタの木のテーブル、高層ビルのため決して開くはずのない窓は風に当てられ勝手に空き、セキュリティ万全だったドアは隙間風を入れ放題のボロボロドア。ここはどう見てもオフィスではない。


「どういうこと!?」


慌てて布団を捲り、自分の服装を見ると昨日まで来ていたスーツではなく、簡素な白いワンピース。視界に映る髪の毛は明らかに就業規則違反の明るい金髪。


「なんで!!?」


急いで立ち上がり鏡を探すも見当たらず。辛うじて見つけた樽に入った水で自分の顔を見ると全く別人だった。


「嘘…だれ…!?」


水に映る人物はふわふわの金髪、きめ細やかな肌、恐らく黒ではない色の瞳。私が知っている私とは全くの別人。


驚きと恐怖で自分の顔を触った瞬間、この顔の人物の記憶が頭に流れ込み、同時に『私』の記憶とリンクした。


この世界は「好きな人には婚約者が」というゲームの中だ。





私は落ち着いて状況を整理した。

どうやらここはゲームの中で私はヒロイン。恐らく異世界転生というもので今ここにいると思う。しかしそのゲームは後輩がゴリ押ししてきたもので思い入れが全くなく、プレイしていたものの色々思い出せない。


思い出せるゲーム内容は…

・攻略対象が複数いる。王子、魔導士、異国の王子の3人?

・その攻略対象にはそれぞれ婚約者がいる。

・エンディングはそれぞれの攻略対象と結ばれるorハーレムエンドor平民エンドor魔法省エリートエンド。あとバッドエンドもあったような?

・個別エンディングを見るためにはそれぞれの攻略対象の婚約者である悪役令嬢を糾弾する必要がある。

・ヒロインは平民。親は最近死去。親から継いだポーション作りで生計を立てる予定。国で貴重な治癒能力が使え、それが魔法省の耳に入り国から保護されて魔法学校に行き攻略対象たちと出会う。

・攻略対象の好感度は見えないが、特定のキャラの好感度は見える。


思い出せないのは…

・ストーリーの内容

・分岐ポイント

・エンディングの詳細


元々作業ゲーは好きだったけど恋愛ゲームは好きではなく、このゲームもサブ要素だったアイテム作りばかりしていた。

攻略対象は確かにカッコよかったけど、社畜であった私の現実とはかけ離れすぎて全く感情移入ができなかった。


「どうしよう…エンディングいっぱいあるとの噂だったけど死亡エンドもあるのかな…?ってか異世界転生ってことは私も死んだってこと?」


確かに昼夜問わず働き詰めだった。

大手企業の子会社で、大手から天下りしてきた上司にこき使われていた。しかし死んでしまうなんて…


「せめて会社以外で死にたかったな…アユちゃん泣いてくれるかな…私の仕事がアユちゃん1人に行くと思うと申し訳ない…」


ゲームを勧めてくれた後輩を思い出し深いため息をついた。そしてそれと同時に重要事項がよぎった。



「…『私』の名前って何!!??」


『私』は誰として生きていけばいいのか。ヒロインの名前が全く思い出せない。


頭を抱えて悩んでいるとドアをノックする音が聞こえた。



「リサ ヤッマーダさんお届けものです」



私は思い出した。

思い入れがなさ過ぎて適当に本名を入れたことを。

中世系の文字列でも違和感がないように苗字を変えたことも。


そして思い出したと同時に適当な名前を入れたことを山田リサは深く深く後悔した。

読んで頂きありがとうございます。


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