弱すぎるとパーティーを追い出された僕はスライム使いとして覚醒しました。
「アルト君、君は弱すぎる。もう、このパーティから外れてくれ」
僕は冒険者パーティーのリーダーで、魔法使いのユーナにそう言われた。
「え!? そんな、急に言われても……」
僕は心臓をドキドキさせて、泣きそうになる。
剣士のイザベルは、目をそらして言葉を続けた。
「急じゃ無いよ。今までずっと我慢してたけど、もう限界なんだ」
よく晴れた草原で、僕は途方に暮れた。
「ここなら、スライムくらいしか出ないし、町も近い。冒険者になることは諦めて、はやく家に帰った方が良い」
僕は、その場において行かれた。
「待って、僕、まだついて行くよ!!」
弓使いのドロスが言う。
「お前を連れて行くことは、命を危険にさらすことなんだよ」
こうして、僕は一人草原に立ち尽くしていた。
しばらくすると、草の陰から傷だらけのスライムが現れた。
「お前も、一人なの?」
スライムはぷるんと震えた。逃げる様子は無い。
「こっちにおいで」
僕がスライムを呼ぶと、スライムは僕の元にやって来た。
「怪我、直してあげる。ヒール!!」
スライムの体が光り、無数の擦り傷や切り傷が塞がっていった。
「これくらいなら、僕にだって出来るんだよ?」
スライムがまた、ぷるんと震えた。
その時、スライムのステータスが空中に現れた。
「え? すらすけ? 君の名前?」
「ぷるん」
スライムに魔法をかけた右手が、じんわりと輝き始める。
「え? 何? 僕の手、どうしたんだろう?」
<ステータス表示完了、スライムを強化しますか?>
空から声が降ってきた。
僕は驚いた後に、すらすけを見つめて、頷いた。
「すらすけを強化する!!」
僕の右手はまぶしく輝き、その光はすらすけに吸収された。
「……すらすけ?」
「ぷるん」
すらすけの体に触れてみると、さっきよりも堅くなっているようだ。
「え? スライム強化のスキル? なにそれ? 聞いたこと無いよ!?」
すらすけは、一瞬宙に浮くと、鋭い水の矢を吹き出した。
「あ、ステータスが変わってる!?」
すらすけのステータスに友情と書かれた項目が増えていた。
「はみ出し者同士、一緒に冒険しようか?」
「ぷるん」
こうして、すらすけとスライム強化スキルを手に入れた僕の新しい冒険が始まった。