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レオドラン視点 2

 この周辺は四大国で成り立っている。

 リーファル・ハオス・アリノバ・フォルン、その周りを小国が占めている。

 現在では我がリーファル国においては、その七割と友好国として手を結んでいる。がしかし、俺が産まれた時はハオス国の国王がそれなりに野心家である為、大きな揉め事は起こさぬものの緊張はぬぐえなかった。

 それを回避したのは俺が十二歳の時。何やらきな臭さを感じた為、ハオスの王子と連携を取り、黙らせた。

 この王太子は父親と違って、なかなか物分かりが良かったので今現在国王となった彼とは友人関係にある。


 リーファルは豊かな資源に満ち溢れている。

 そんな国の第一王子として生まれた俺は、物心ついたときにはそれなりに何でも出来た。

 物事は一度見聞きすれば覚えるし、体は簡単に動くので剣や武術も上達は早かった。魔術においては魔力は人の数倍ある為になんなく使えた。周辺は笑っていれば優しい王子様を作り上げてくれる。

 ……退屈だった……。



 そんな俺が六歳の時、ルー・マルロス・セル・トーマスが現れた。

 最初の印象は『随分と顔の整った奴らだな』だった。

 その中でもルーは天使と間違えるぐらい可愛かった。

 まぁ、男だと分かっていたのでそれぐらいしか思わなかったが、セルは馬鹿だった。

 ルーの手を取り「私はグロッセル・ラナ・イーグル。可愛いお嬢さん、お名前をお聞きしても」と言った。

 全員が固まった。

 この時のセルはまだ黒マントなんか着ずに、正統派美形の素顔を晒していたな。

 黒マントを着だしたのは、ルーの真実を知ってからのような気がする。

 余りの恥ずかしさから、セルは俺を王子として忘れていたのか、俺の背に隠れた。

 ……トーマスも馬鹿だった。

 そんなセルを「ねー、ねー、どうしたの? この子が女の子に見えたの? えー、どうして? 分かんないなぁ」と揶揄い続けた。

 それを「可哀そうだろ、やめてやれ」と必死で止めるマルロス。

 ルーは半泣きで何故か皆に謝っていた。

「ごめんねぇ、僕が女顔だから。でもね、僕が悪いんじゃないんだよ。だってそういう設定なんだもん。もう少ししたらちゃんと立派なイケメンになるからぁ」

 設定? イケメン? 何それ?

 俺を真ん中に囲み俺の立場を忘れ、騒ぎ続ける馬鹿な奴らを見ていたら、無性に楽しくなってきた。素直な可愛い奴らだなと。

 俺はこの時、初めて心の底から笑えたんだ。


 それから少しして他の子供達にも会ったけれど、やはりこの四人以上におもしろい奴らはいなかった。

 ほとんどが親に言いつけられているのか、自らの意志なのか分からないが、大げさに媚びてくる奴らばかりで、特に女は酷かった。

 甘やかされて育った我儘令嬢。

 俺が優しくするのが当たり前。

 自分を気にいるのが当たり前。

 周りにいる奴らはライバルだ。

 そんな感情を一切隠そうともしない。

 どうしてこんな奴らの機嫌を取らないといけないんだろう。まぁ、それが一番丸く収まるからだ。

 本当に貴族というやつは面倒くさい。いや、王族か……。


 そうして同年代の女に嫌気がさした時、俺は侍女に襲われた。

 七歳の俺に相手は二十歳ぐらいだったが、夜中にふと目が覚めると知らない女が俺の上にいた。

 俺と目が合うと女はにたぁ~と笑った。

「ああ、何て美しいんでしょう。神をも凌ぐ美しさだわ。私はいつも貴方様の傍で心を震わせておりました。貴方様の知らないとても気持ちのいい事を教えて差し上げます。どうか力を抜いてください。私は貴方様にご奉仕したいのです」

 一人で訳の分からない事をブツブツと言っている。

 そうしてその女の手が、俺の体に触れた瞬間…… バキッ! ……殴ってしまった。

 だって気持ちが悪かったんだもん。

 しかし、襲ってくるのは侍女だけじゃなかった。

 この事件を皮切りに既婚・未婚関係ない貴族の女・護衛騎士・家庭教師に従僕、果ては神父にまで狙われた。

 俺は片っ端から殴りつけた。

 紳士道に反する? 知るもんか。子供の俺に手を伸ばす方が悪い。

 簡単に入ってくる俺の私室には、護衛騎士など当てにならない。

 俺は独自の最高級の結界を張り、寝台の横には必ず剣を置いて寝た。

 俺の世話をする侍女も、厳選に厳選を重ねて五人だけに絞っている。

 俺のいない間の掃除も彼女達に任せてはいるが、その間監視の魔法はかけている。何か異常があればすぐに俺に分かるように徹底している。

 俺の剣の腕やら魔法の威力が高まったのは、必然的な事なのかもしれない。

 しかし、そんな俺の行動はあまり表には知られていない。ルー達も知らないだろう。まぁ、ことがことだけに公に出来る事ではないからな。

 俺の女(人)嫌いは重度になっていた。


 そんな中、俺は国王と王妃に呼ばれた。確か俺が十歳の時だった。

「レオンは婚約する気はないか?」

「あるはずがない!」

 キッパリと言い切った。

 確かにこの国の貴族の婚約は早い。一桁の年齢から決めてしまうのが大半だ。

 現に俺の友人四人にもすでに婚約者がいる。

 だから何だ?

 今の俺にどうしろと?

「俺は俺の立場を分かっている。この大国リーファルの第一王子だ。ちゃんと結婚して子をもうけ、次世代に繋げる良い国にするのが俺の役目だ。心配しなくてもいずれはそのように動く。でもそれは今じゃない。俺が俺のタイミングで決める。余計な根回しはしないでくれ」

「りょうか~い」

 王妃は、親指と人差し指で輪っかを作り言った。

 王も横でうんうん、と頷きながら俺を見る。

「お前がそこまで分かっているなら、我々は何も言わないさ。まぁ、元より私よりも優秀だしな、後は任せた」

 軽いな、おい。

「鬱陶しい誘いは続くだろうが、全部丸投げするからよろしくね」

 てへっと舌を出す王様。

 父上、貴方もう三十歳でしたよね。別にいいですけど……。


 それから六年、王と王妃はあの約束通り何も言わない。まぁ、俺の下に二人の王子と姫もいるから、いざとなったらそこから調達してもいいか。とあの時のように軽く考えているのかもしれない。

 けれど、俺は見つけた。やっと見つけた。

 俺のすべてを捧げる女に。

 彼女が十歳だからどうだというんだ。

 今は多少、無理があるかもしれないが、六歳差などすぐに気にならなくなる。

 幸運な事に彼女は年よりも上に見えるし、中身もしっかりとしている。

 マナーも学問も問題なさそうだし、好奇心旺盛な彼女なら王妃教育も頑張れるのではないだろうか。いや、彼女が病弱で無理だというなら、そんなものしなくてもいい。いやいや、子を産む行為さえ体の負担になるならば子も産まずとも構わない。それこそ兄弟に頼んだっていい。

 だって俺には彼女が必要だから。

 初めてなんだ。こんなにも人が欲しいと思ったのは。傍にいたいと思ったのは。

 あの翡翠の瞳に囚われてしまった。

 今日会ったばかりの俺に婚約を望まれて、彼女はどんな風に思ったのだろう。

 馴れ馴れしい奴? 気持ちが悪い?? だから断った???

 あ、ちょっとへこむ……。

 まぁ、仕方がないさ。今日の彼女は俺に興味などもちはしなかっただろうから。

 ごめんね、リリ。俺なんかに見つかって。けれどもう逃がしてはあげられない。

 全力で囲いに行くよ。


 ああ、リリ。今すぐ君に会いたい。

 君の翡翠の瞳に俺を映して欲しい。


 そして一日でも早く諦めて、俺の傍にいてね。君を必ず守るから。

 

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] レオン様、かっこいいんだかキモいんだか。賢そうなのに。 お父様も溺愛加減が気になるし、弟が何気に転生者な匂いがする。 [一言] にいちゃんが拗らせていそうで。兄としては面白くない気持ち…
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