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かざす花  作者: ななえ
第6章
32/68

第4幕

 古賀家の年始は遅い。

 それはあくまで親族間の年始のことだ。円恵寺自体は一日からやっている。むしろ元旦は稼ぎ時だ。

 その忙しさが一段落ついた頃に、古賀家の年始は行われる。年始というよりは七草粥に近い日にちだ。

 壮司は自室で袴の紐を結んだ。絹の手触りが心地よい。

 一年に一回、この年始のときに着る紋付き袴は、巴の父――壮司にとっては伯父から譲ってもらったものだ。羽織には当然、古賀家の紋が染め抜いてある。

 この格好をすると、気が引き締まる思いがした。

 古賀一族が集まる年始は壮司にとって決して楽しいものではない。不動の姓が表すように、壮司は異端だ。

 しかし、どんなに異質であろうとも、存在だけは知らしめておかないとならない。

 この家の後継ぎとして生きていくのだから。

 静かな決意を込め、自室の襖を開いた。

 色留袖を着た祖母が、離れと母屋をつなぐ渡り廊下の先にいた。

 おせち料理の膳を持ち、相変わらず文句のつけようのない完璧な歩みで進んでいく。

 その足が唐突に止まり、祖母は首だけをこちらに向けた。

 突然向けられた瞳は、厳かに強く訴えていた。

 ――わかっていますね、壮司さん。

 それは、祖母と自分にだけに通じる言葉だ。

 その意を受けとり、壮司は見つめ返した。

 その壮司の態度が、祖母の満足に足るものだったかはわからない。祖母は歩を再開し、廊下の奥へ消えていった。

 その代わりに、巴が渡り廊下の先に現れた。

「壮司」

 こちらを向いた彼女の服装も、今日は振袖だ。青い地に銀糸と絹糸で優美な鶴が描かれている。

 薄化粧をほどこしているせいか、驚くほど大人びて見えた。

「もうすぐ叔父さまが見えるぞ」

 そう言った巴も、どこか物憂げに見えた。

 この家の正統な娘である巴でさえ、年始は気をつかう行事であるのかもしれない。

 壮司は巴が出迎えのため、玄関の方へ向かったのを見送り、自身も母屋へ渡った。

 いつもと変わらない、巴の様子に安堵した。

 あの次の日も、巴は泣きはらした顔で朝食の席についた。ずいぶんと心配したが、その日以降はいつも通りの巴だった。

 もっとも、それ以降と言っても、壮司は短期のアルバイトに精を出し、あまり家にはいなかったのだが。

 クリスマスもお正月も、勤労少年よろしく過ごし、冬休みの課題を合間に挟んであけくれたのだった。

 そんなある夜のことだった。祖母が壮司の部屋に訪ねてきたのは。

 今年、数えで十八になった。

 果たさねばならない義務を前に、もう逃げも隠れもできないのだと知った。

 仏教には零の概念はない。元旦に一つ歳をとる数え年というのは、祖母の中でいまだに息づいていた。

 十八、もう大人だ。もし、壮司が古賀家に引き取られず、施設にでも放り込まれていたのなら、否が応でも独り立ちせねばならない歳だ。

 実際、夏には結婚すらできる歳になる。

 いい加減覚悟を決めなくてはならないのだった。

 

  ―◆―◆―◆―◆―

 

 父は三人兄弟の長男である。

 壮司の母である妹、そして四つ違いの弟がいる。

 その弟には、二人の息子がいた。

 何とも皮肉なことだった。

 傍流である妹と弟には男児が生まれ、肝心な本家には女児しか生まれなかった。

 しかも、婿取りも満足にできない娘だ。

「あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします」

 壮司が堅苦しい口上を述べ、頭を下げる横で、巴もそれにならった。

 広々とした玄関には、叔父一家が勢揃いしていた。

 叔父と叔母、それと大学生と高校生の従兄弟だ。

 叔父と叔母は和装だったが、大学生の息子はかっちりとしたジャケットを着ていた。

 壮司と巴と同じく、立志院に通う、高校生の息子は短期留学中でいなかった。

 彼は、毛嫌いする叔父一家の中で唯一交流のあるひとりだった。

 さすがに年末年始は帰国していると思っていただけに、多少落胆した。

「はい、おめでとう」

 叔父が鷹揚に応え、家へ上がる。巴はすかさず叔父からコートと鞄を預かった。

「巴ちゃん。すてきな振袖だこと」

 奥に下がろうとした自分を、叔母が笑顔をふりまいて近寄ってくる。

 案内をしようとしていた壮司はまったくの無視だ。

「……ありがとうございます」

 微笑を添えて、曖昧に応えるしかできなかった。

 彼らが壮司に対して冷たいのは今に始まったことではない。本人に聞こえるようなところで悪口を言ったり、無視をしたりとやり口も陰湿だ。

 たかだか高校生の甥相手に、大人気ない態度をとるのだから、まったく救いようがない。その理由も本人には責のない、生まれときたものだ。

 叔母の虚飾で塗り固めたような賛辞を受けながら、壮司にちらりと視線を向けた。

 彼らの無駄話が終わるまで、辛抱強く待つ壮司は石のようだった。

 座したまま、ぴくりとも動かない姿勢も相まって、さながら修行僧のようだ。

 こういう壮司は見たくない。

 すべてを諦めたように受け入れて、表情を消す壮司は痛ましくて歯がゆい。

 不当な扱いを受けているのに、何もしてやれない。

 しょせんは祖母の駒にすぎない巴には、降りそそぐ悪意から彼を守る手段など何も持ってないのだ。

 生まれは変えられない。壮司は一生涯この侮蔑の視線にさらされなければならない。

 古賀家にいる限りは。

「明義さん、玄関では寒うございましょう。早くお上がりなさい」

 永遠に続きそうな、叔母の話を打ち切ったのは、廊下の角から現れた祖母だった。

 明義、興味がないので覚えてないが、叔父の名前だろう。

 とたんにつまらなそうな顔で壮司に先導され、廊下を歩いていく叔父一家を見送り、巴はひとまず奥に下がった。

 叔父と叔母のコートをハンガーにかけつつ、床をにらんだ。

 叔父と叔母の打算的なまなざし。壮司への侮り。

 どれもこれも吐き気がする。

 壮司の風当たりが強いのは、その出自のせいばかりではない。叔父はふたりの息子のどちらかに寺を継がせたがっているのだ。

 住職という職に魅力があるわけでなく、それに付随する固定資産が目的だろう。

 だから、壮司が目障りなのだ。

 叔父の息子も息子で、坊主になれば一生遊んで暮らせると思い込み、壮司をライバル視している。

 その一番の近道が、この自分と結婚することだと思っているから、叔母は薄ら寒くなるほど、にこやかに話しかけてくるのだ。

 この家をとりまくものすべてが厭わしく、疎ましい。

 本来なら俗世間から一番遠くにあるべき仏寺で、こんな醜い争いが行われているかと思うと、呆れたくもなる。

 巴は収まりのつきそうにない気持ちを胸に飼いながら、居間へ向かった。

 

  ―◆―◆―◆―◆―

 

 祖母は今まで、壮司との婚約を公表しなかった。それだけでなく、壮司を後継ぎに据えることも胸にしまったままだった。

 婚約の件はわかる。祖母は不妊症だった母の娘である自分もまた、子を為せない可能性があるとにらんでいたのだろう。

 もうひとつ、後継ぎの件は何とも厄介だった。

 叔父を始めとする外野が猛反発するのは必至だ。

 叔父たちはこの寺を私腹を肥やす道具としてしか見ていない。

 その点、祖母はこの家の支配者だが、その力を濫用したりはしない。祖母の目的は先祖代々続いてきたこの寺を守ることだけなのだ。

 だから、祖母が叔父夫婦に寺を明け渡すはずがないと確信していた。

 それが壮司にとって幸か不幸かはわからないが。

 すっと襖が開き、流れるような動きで祖母が上座の一席に座す。

 家で一番大きな一室は、さらに続き間の襖がとり払われ、奥行きのある空間になっていた。

 そこに人数分の膳が整然と並び、席次も厳格に決まっていた。

 後継ぎの定まっていない以上、巴は名目上総領娘である。上座に程近い、祖母の隣に座っていた。

 それから叔父一家が座り、末席には形式だけの壮司の母の席があった。

 例年なら、その隣、もっとも下座に壮司の席があったのだが、今はない。ぐるりと宴席を見回しても、彼の姿はなかった。

 なぜ――?

 なぜ壮司がいないのかを探ろうと、巴は不作法を見とがめられないように、瞳だけをせわしなく動かした。

 ふと、違和感が襲う。

 その正体を突き止めようと、目を凝らす。

 床の間の前、父が座る上座の横にもうひとつ膳が置いてあった。

 それが誰の席なのかは明白だった。

 巴の考えを裏づけるかのように、襖がまた開いた。

 最上級の僧衣に身を包んだ父がへりをまたぎ、室内に入る。

 そして、その後ろに続いて入ったのは、壮司だった。

 叔父一家の談笑がぴたりと止んだ。

 壮司が父の隣に座す。一瞬にして叔父の顔が凍った。

 父の隣。それは古賀家の主に準ずる位置だった。

「みなさま、あけましておめでとうごさいます」

 異様な雰囲気の中、突如祖母の声が響きわたった。

 叔父は今にも祖母に詰めよりそうな雰囲気であったし、叔母はひたすら困惑した顔をさらしていた。

 巴の心も波立った。

「昨年、大過なく過ごせましたのは、皆々さまのおかげでございます。心より御礼申しあげます」

 祖母が年賀状の形式化したようなあいさつを朗々と述べる。

 しかし、はっきり言って誰一人耳に入っていなかった。

 視線は祖母を通り越し、壮司に向いていた。

 祖母はそれどころでないこちらの様子など、まったく意に介した様子もなく、さらに重々しく口を開いた。

「この場を借りて皆さまにご承認いただきたいことがごさいます」

 みな一様にさっと顔を固くした。それこそ、新年のあいさつよりも何百倍も重要な事柄だ。

「この度、曹玄さんの後を継いでいただく方として、正式に壮司さんをご紹介します」

 かなりの広さがある部屋の隅々まで、沈黙が落ちた。

 父はもとより、壮司も祖母も、彫像のように表情は動かない。

 それとは逆に、巴の内側は荒れ狂っていた。

 まだ自分は壮司の許婚だ。たとえ終わりかけていようとも、肩書きだけはもっとも彼に近しい相手だ。

 なのにこんな重要なことを知らなかった。知らされていなかった。

 壮司が後継ぎであることなど、とうにわかっていた。

 祖母にとって、たっぷりと恩がある壮司は、叔父の子供たちよりはるかに思い通りにしやすいだろう。彼は誰より祖母に従順で忠実だ。

 何を言われたって、壮司には是と答える他ないのだから。

 叔父は場所をはばからずに、激昂しそうな勢いだったし、叔母は隠しもせずに、壮司への嫌悪感をあらわにしている。

 フォローに回らなければ、と思う一方、ショックが大きくて動けない。

 巴もまた、叔父たちと同じように、この家の核には関わりのない存在なのだ。部外者なのだ。

 この家の当主たる絶対条件は子供をもうけることだ。

 祖母は壮司を後継ぎに定めたと同時に、巴に許婚失格の烙印を押したのだ。

 いらないと言われたのだ。

 こんな形で、壮司とのつながりは断ち切られた。

 もとより自分は壮司を家族としては見ていない。許婚としても、家族としても、友人ですらなくなってしまった。

 残ったのは、同じ高校に通う、生徒会メンバーという関係だけだ。それも期限がくればあっさりとなくなるものに過ぎない。

 本当に何もかもなくなってしまったのだ。

 自分の周りだけ切り取られたかのように、温度もざわめきも感じない。

 何となく理解した。祖母はきっとこのようにして、父を傀儡にしたのだと。

 幾度なく、心に強い負荷をかけ、圧迫し、気力を失わせてしまった。いつしか、祖母の言いつけに従うことによって、安定を得るようになった。麻薬を吸うように、それがないと生きていけなくなってしまった。

 ……自分はそうなるものか。

 絶望の裏側で奮い立つ気持ちがあった。

 自分は遠くない将来、この家を出ていく。

 外に出れば十六年間吸い続けた、“麻薬”は薄らぐだろう。

 だが、壮司は。壮司はどうなる。この家で生きることを宿命づけられた彼にとって、間違えなく祖母の一番の犠牲者になるのだった。

 それをわかっていて、ひとりだけ外の世界に飛び出していくことは、ひどい裏切りに思えてならなかった。

 この期に及んで、そんな気持ちが胸の奥でくすぶっていた。

 

  ―◆―◆―◆―◆―

 

 きしり、と床がきしむ音がしたのは真夜中だった。

 壁時計は一時を差している。

 古賀家はとうに明かりが落ち、屋敷の中は静まり帰っている。

 壮司は眠れずに、文机の上のスタンドだけをつけ、本のページをめくっていた。もっとも、壮司に本を読む習慣はないので、活字は頭の上を滑っていくだけだった。

 退屈しきっていたのて、物音をすばやくとらえる。

 この離れには壮司と、母しかいない。母がまた錯乱して屋敷内を徘徊し始めたのかと、壮司はそっと襖を開いた。

「……」

 幽鬼のごとくぼんやりと闇に浮かび上がるその姿に、壮司は絶句した。

 寝間着の白い単衣姿の巴が、廊下に立っていたのだ。

「こんな時間にすまない。話がしたくて……」

 ためらい気味に切り出した巴に、壮司は思わず頭を抱えたくなった。

 今日は確かに話をする時間もないくらい忙しい一日だった。

 興奮状態の叔父が、いつまでたっても勢いを失わずに、まくしたてていた。また来ますと残し、やっと彼らが帰ったときには夜になっていた。

 後にはほとんど手がつけられなかった大量のおせち料理が残り、その片づけに追われた。

 今日は忙しかった。それは認める。

 しかし、こんな時間にそんな格好で男の部屋を訪ねてくるのはいかがなものか。間違えなく祖母に大目玉を食らうだろう。

 当たり前だが、壮司は逡巡した。

 それでも、夜気に身を震わす巴を見て、あきらめたように「……わかった」と言葉を吐いた。

 押し入れから座布団を出し、巴に勧める。マッチをすって、ストーブに手早く火を入れた。

 そうして改めて、巴の前に座った。

「話は何だ」

 前置きも何もなく、壮司は本題を突きつけた。

 長居をしてもらっては困るのだ。

 巴はすぐには答えなかった。言葉を探すように、目を伏せている。

 それを根気よく待つぐらいの余裕はさすがにあった。

「……いいのか、お前は」

 ストーブが燃える音に負けそうなくらい、小さな声だった。つぶやきに近いような問いかけだった。

「いいのか、後継ぎになっても……」

 巴は視線を外していた。怒りや悲しみ、戸惑い――一言では言い表わせない雑多な感情が、彼女の顔に影を作っていた。

「お前の決めたことなら、私が何も言うべきではないとわかっている。けど、お前は何もわかっていない」

 巴は苦しげに言葉をしぼった。

 巴自身、出すぎた真似だと思っているのだろう。

「俺が何をわかっていないと思うんだ?」

 壮司は静かに問いを返した。

 すべてをわかっているつもりだった。

 自分の立場も、祖母が壮司自身でなく、後継ぎの器が欲しいだけだということも、巴に残酷なことをしたということも。

 他の誰に言われなくとも、わかっているつもりだった。

「その恩義に凝り固まった頭で何がわかるというんだ!」

 自らの声量の大きさに気づいて、巴はハッと口を片手で覆った。

 祖母の部屋から遠く離れていても、下手に大声を出せば気づかれてしまいそうだった。

 祖母は並の人間ではないのだ。

「……」

 壮司は黙り込んだ。巴の勢いに圧されたのではない。どうやって自分の気持ちを説明したらいいのかを考えていた。

 壮司の感情は、親に守られてきた者には到底理解できないものだろう。

 祖母は壮司に衣食住を与えた。立派な学歴を与えた。居場所を与えた。役割を与えた。生きていく意味を与えた。

 それが壮司のような、与えられることが当たり前でない子供には、神のような行いに見えるのだ。

 与えられた義務が、侵しがたい神聖なものに見えた。

 ときに、そのせいで大切な誰かを犠牲にすることがあっても、だ。

「お前とは違う意味で、わかっている」

 噛みしめるように断言した。

 巴は客観的に見て、こちらの立場を危ぶみ、これからを案じてくれている。

 だが、壮司は違う。

 壮司の義務感はこうしなくてはならない、という風に働くのではない。もはや本能に近く、何も思わなくても、家を継ぐことは当然の行いだった。

 この家の闇を吸い込み、果てようとも、むしろ本望かもしれなかった。

「この家にいたら、お前みたいのはきっとダメになる」

 壮司の断定などで納得するはずもなく、巴の苦々しい言葉は続く。

「後継ぎなんて叔父さまにあげればいい」

 巴が身を乗り出し、自分の肩をつかんだ。

「中傷も侮蔑も、お前が我慢することじゃない。何も恥じることはないんだ!!」

 上下に揺すぶられ、視界が揺れた。間近に、巴の必死な顔があった。

「どうしてそれが、お前にはわからない……!」

 巴の手が、力を失って、壮司の肩から落ちる。その手は途中で拳となり、壮司の胸を叩いた。

「……だからわかってないと私は言うんだ」

 胸に拳をついたまま、うなだれたように顔を伏せる巴を見て、どうして彼女がまだ側にいてくれるのだろう、と思った。

 壮司は巴から奪うことしかできないのだ。

 彼女の幸せも、居場所も、役割も、壮司がこの半年足らずの間に奪ってしまった。

 もう何も奪いたくなかった。

 壮司は文机の横に畳んである、藍の羽織りをとった。それをそっと巴の背にかけた。

「……帰れ」

 この言葉を突きつけることが、非情だとわかっていた。

 巴が唇をわななかせ、壮司を見上げた。

「もう帰れ。いいな」

 反論をはさませる余地もなく、一方的に言い放つ。

 こちらを見つめ続ける巴の目に浮かぶ表情は、怒りか、失望か。

 何かを言おうと、巴の唇が動くが、結局何も言えずに引き結ばれた。

 そのまま、流れるように立ち上がり、襖が開かれた。

 襖に手をかけたまま、巴は立ち止まっていた。

「……お前がこの家につぶされるのは嫌だ」

 ぽつりと意図的に感情を込めないつぶやきだけを残して、襖は閉じられた。

 胸に叩かれた感触が残っていた。

 鈍痛がいつまでもするような気がした。

 そんなわけはないのに、壮司は知らないうちに、痛みにこらえるように、眉根を寄せた。


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