普通
二人「「はいどーもー!! よろしくお願いしますーっ!!」」
ツッコミ「僕ら緊張してますけどね、普通にいつも通り楽しくやらせていただきますーっ!」
ボケ「『実』はですねぇ……」
ツッコミ「いきなり漢字の読み方ミスしとるけど、普通言葉では間違わんよ?」
ボケ「『実話』ですねぇ……」
ツッコミ「イントネーションがおかしいけど普通に話して?」
ボケ「なんやさっきから普通普通って! お前にとっての普通は俺にとっての普通やないねん! 『常識』とか『普通』とかって言葉ほんま嫌いや!」
ツッコミ「なんかごめんな? 開始早々もうキレとるん?」
ボケ「お前が止めるから全然話始まらんやんけ! ええか、『普通』な、相手の話を最後までちゃんと聞くのが『常識』やぞ!」
ツッコミ「お前もガンガン言うとるやんけ!」
ボケ「じつは最近車買うたんよ」
ツッコミ「お!? 唐突に話始まったけどええな、何買うた?」
ボケ「ノーマル車なんやけど」
ツッコミ「『普通車』って言えや」
ボケ「俺な、他人に何でも『お任せ』するのってほんま嫌いやから、車も買うなら一から自分で決めたいねん」
ツッコミ「まぁその気持ちはわかるわ」
ボケ「ほんでな、派遣会社に登録して車の製造工場行ってボルト持ってインパクトドライバー持ってガァァァ!!」
ツッコミ「何しとんねん!! 一から過ぎィ! そんな理由で車を造る奴どこにおんねん!」
ボケが親指を立てて得意げな顔をする。
ツッコミ「ええ顔すな!」
ボケ「ほんでな、『流れ作業』やから流石に一人で車は造られへんのやけど」
ツッコミ「当たり前や」
ボケ「ほんの一部でも自分が製造に関わった車って、これはもう実質俺が造った車みたいなもんやん?」
ツッコミ「せやな」
ボケ「あぁ!?」
ツッコミ「同意したやんけ」
ボケ「愛着が湧くねんな、そうやって造られた車って」
ツッコミ「世の中いろんな物があるけど、みんな誰かの手で作られてんねんな。特に自分で作った物なら愛着湧くわなぁ。その気持ちはわかるわぁ」
半ば怒りの表情をするボケ。
ボケ「そんな俺の車が『流れ作業』で誰かの手によって『お任せ』で造られたなんて、もう……絶対に許さへんぞ!!」
ツッコミ「お前のキレるポイントもその感情も分からんわ!」
ボケ「なんでや! いま俺の気持ちわかる言うたやんけ!」
ツッコミ「ええから話進めろや!」
ボケ「ほんでな、ようやく車買うたけど、俺、免許持っとらんことに気付いてな」
ツッコミ「順番がめちゃくちゃやー!」
ボケ「いや、よくよく考えたら俺もいつかは歳とってお爺ちゃんになるやん?」
ツッコミ「何をいま考えてんねん」
ボケ「いつかは免許証を返納すると思うと……免許いらんなって」
ツッコミ「車がいらんわ!!」
ボケ「普通のツッコミすなや!」
ツッコミ「お前ごく自然に『普通』使てるやんけ! 普通じゃないツッコミってなんやねん!」
二人で顔を見合わせ、そして真顔で正面を向く。
二人「「『普通ってなに?』。どうも、ありがとうございましたーっ!!」」