08 予行練習
答え合わせの時間です!
本日四回目の更新!
『無いわーオルガさん無いわー』
「そりゃ、オレは口調はこんなんだし、見た目も女っぽくはないけどよ……」
『男の子は砂、女の子は砂糖で出来てるって言わないかな。根本が違うのに……無いわー』
「気付いていなかったのはちょっとショックだぜ」
「本当に申し訳ない」
左右から責め立てられてオルガは深々と食堂のテーブル前で頭を下げる。
よく考えなくとも、マリアから責められるのは完全にお門違いである。
コイツ、どうにかして参りましたと言わせてやりたい。
触れるのならデコピンの一つでもしてやるのに……! と歯噛みしているとマリアが。
『何か今変な事考えている気配がした』
と勘の良さを働かせて来るので油断できない。
クラスが違うので、遠目に姿を見かける時は大体男女兼用の戦闘着だ。
男女で分かれている制服見れば一発だったのに……とオルガは間の悪さを呪う。
とは言え、しっかりとイオの事を見ていれば分かった事――かもしれないので非はオルガにある。
故に余計なことは口に出さずに土下座を敢行しているのだ。
『しかしオルガ、迷いの無い土下座ね……その姿勢の良さにはちょっと惚れ惚れするわ』
「っていうかそこまでしなくても良いぜオルガ? そんなに気にしてないから」
「いや、昔にも一度間違えたことがあってな……その時は大分根に持たれたから次が有ったら只管に謝ろうかと」
『……前にもやったんだ。こんな事』
「次が無いようにしようとは思わなかったのかよお前」
『二度ある事は三度あるって言わないかな……』
二人から似た様な事を言われて、オルガは耳が痛い。
「ま、良いや。兎に角明日からよろしくな、オルガ」
そう言ってイオは去って行く。
オルガも寮の部屋に戻る。そろそろ点呼の時間だ。
学院の寮は四人部屋だ。
碌に名前も覚えていないが――きっと相手も同じだろうとオルガは思っている――ルームメイトが居る部屋。
そこでマリアと話していたら独り言を延々続けるヤバい奴である。
それ故に説明を求むと騒がしかったマリアと話すために深夜に部屋を抜け出して寮の裏庭に来ていた。
『ちょっとオルガってば。一応オーガス流は門外不出なんですけど!』
「その結果途絶えたって言うなら世話無いよな……」
『あんですと?』
イオと自主練を共にするという事は、オルガのやっている事も見られるという事だ。
マリアはそれが不満らしい。
マリアとの契約を果たすために少し調べたところ、とりあえずオーガス流剣術は学院の資料には名前が残っていなかった。
それを揶揄するとマリアはむくれた。
「って言うかお前! 人の身体勝手に動かすなよな! 余計な奴に目を付けられたじゃねえか!」
『だってアイツムカつくんだもの!』
「自分の身体でやってくれよ……俺のでやるな」
『有ればそうしてるわよ』
不機嫌そうに鼻を鳴らしてマリアは吐き捨てた。
流石に今のは少々意地の悪い言い方だったかもしれないなとオルガは思う。
『……その、悪かったわよ。でも、オルガが本気で嫌がっている事は私にだって出来ないんだからね!』
つまりは、無意識下でオルガもあのカスタールに一発かましてやりたいと思っていた。
だから何の制止も無くマリアは剣を抜けたという事らしい。
「まあ……スカッとしたのは認める」
『でしょ!』
あっと言う間に機嫌を直したマリアが笑顔を浮かべた。
切り替えの早い奴、と思いながらオルガは話を元に戻す。
「イオの事だけど……放っておくのも可哀そうだろ」
『甘いわよオルガ。そんな人の事気にしていられる場合? 両賭けしてどっちつかずって言わないかな』
言うだろうか?
恐らく今一番退学に近いのは誰かと問われたら真っ先にオルガの名が挙がる。
その程度には崖っぷちなのも事実。
しかし。
「お前さっき聞いたよな。何で強くなりたいのかって」
『ええ。誰かを護るって約束したんでしょ』
「……そうだよ。だからだ」
んん? とマリアは怪訝そうな顔をした。
『えっと、あの子がその誰かって事?』
「いや、あいつは初対面」
『ちょっと謎かけやめてよ……私そう言うの苦手なんだから』
頭痛を堪える様な表情を――頭痛があるのかは知らないが――しているマリアへオルガは補足する。
「強くなりたい理由はそれ。聖騎士になりたい理由もやっぱりそれだ。人を護りたいんだよ俺は」
『……約束した誰かじゃなくても?』
「そう。俺が約束した誰かじゃなくても、助けを求める人の助けになりたいって思う」
その言葉にマリアは困った様な表情を浮かべた。
『それで自分が聖騎士になれなくなっても?』
暗に、イオの事情に巻き込まれることでオルガが退学になる可能性を告げる。
それでもオルガは頷いた。
「イオを見捨てて聖騎士になれてもそれは俺が望んだ聖騎士の姿じゃない」
自分の将来を賭けてでも大した接点の無い相手を助けるのだと。オルガはそう言い切った。
それは自分の理想ではないと。
その答えに――マリアは深々と溜息を吐いた。
『それ、絶対後悔すると思う』
「かもな。でもここでイオの事情を少し知って見捨てたってなったら俺は自分を許せない」
そう言い切ると、マリアは諦めた様な呆れた様な表情を作った。
『オルガがそう言うなら仕方ないわね』
「悪いな、師匠」
『頑固な一番弟子を持つと大変だわ。でも、そう言う意地を通すのは嫌いじゃない』
「だと思った」
そう言ってマリアは笑う。
『さて、遅くに悪いわね。そろそろ明日に備えて寝ましょう』
「そうだな。お休みマリア」
『ええ。お休みオルガ。良い夢を』
だけどオルガは知っている。
マリアは眠らない。
じっと、暗闇の中で目を閉じて朝が来るのを待っている。
初日以外、眠りにつけていないのだ。
世界が眠りに落ちた中で一人、取り残されている孤独感はオルガにも分かる。
そんな彼女も助けたいと、オルガは思っているのだ。
そして翌日。
「よう、昨日ぶりだな色男」
出来れば顔を合わせたくなかったカスタールと連日顔を合わせる事になったオルガは露骨に顔を顰めた。
予想が当たっていた人はブ(以下略