表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/188

06 アカデミー

「まあぶっちゃけオレらには見えないからあんま変わらないんだよな」

「まあな」


 故に、イオもマリアの存在については半信半疑と言ったところだ。

 他にも見える存在が居てこれなのだから、フェザーンと遭遇する前に言った場合はどうなっていた事か。

 

「あーでもアレだな。そんな昔の剣士様なら何か貴重な情報知ってるんじゃないのか? 聖剣の使い方とかで」

「それがコイツ生きてた頃聖剣無かったらしいんだよな」

「何だよ使えねー」

『こ、この……イオちゃんめ! その憎まれ口が腹立たしいわ! オルガに向けられてる時は笑えてたのに!』


 この師匠。本当に良い性格をしている。

 

「何だっけ。オガクズ流? はオレには使えないのか? いや、エレナとかでも良いんだけどさ」

『オーガス流! オーガス流だから! 誰がオガクズか!』

「オーガス流な。マリアがヒートアップするから間違えないでやってくれ」

「オッケーオッケー。オーガス流な。で、どうなんだよ」


 と、イオはマリアへ問いかけた様だが――残念。マリアの位置は正反対である。

 

『ふんだ! イオちゃんみたいなへっぽこ霊力が使えないわよ! 後の二人も以下同文!』

「無理、だそうだ」

「って事は、やっぱりオレらには関係ねえって事かあ……使えねえ」

『あああ! 使えないって言ったなあ! って言うか何でイオちゃん妙に私に辛辣なの!?』


 そこはオルガも不思議であった。イオ自身、何でこんなに当たり強くしているのか不思議に思っていた。

 まさか、オルガと二人だけの会話だと思っていた場に第三者が居たという事にここまで怒っているとは本人含めて誰も思わなかった。

 

「えっと、私には全く見えませんが、マリアさんは私たちの声が聞こえてるんですよね? よろしくお願いします」

「うむ! 私もよろしくだ!」

『はい、よろしく。やっぱりエレナちゃんはいい子ね! ウェンディちゃんも明後日の方向向いてるけどよろしく!』


 まあ、そのマリアの挨拶も向こうには聞こえていないのだが。

 ほんの少しマリアも嬉しそうだった。

 一度たりとも口にはしていなかったが――オルガ以外にも一応存在を認知されない事はストレスだったのだろう。

 

「んでそのマリアは何時成仏するんだ?」

『言い方に悪意を感じる!』

「んー一応、契約と言うか約束は交わしてるんだけどな」

「幽霊と約束う? 守れんのか」

『幽霊馬鹿にすんなー! 約束位守れるわ!』


 マリアの声は耳を塞いでいても聞こえてくるので煩いのは耐えるしかない。

 

「大雑把に分けると二つだな。一つはオーガス流を俺が習得する事」

「それ、オルガのメリットじゃん」

「いや、オーガス流って途絶えたらしくてな。現代で復活させたいとか」

「途絶えてしまったのですか。それは……」

「うむ、情けないな!」

『私が途絶えさせたんじゃないし……! 私の後の代が途絶えさせたんだし……! 多分……』

「んでもう一つは?」

「自分の死んだときの事を知りたいんだとさ」


 そう言うと三人とも胡乱気な顔つきになった。オルガも同じような顔をしたから良く分かる。

 

「普通忘れるか? それ」

「簡単には忘れない物では無いかと思いますけど……いえ、死んだこと無いので分かりませんけど」

「うむ、閃いたぞ。忘れたいほどひどい有様だったのだ」

『ウェンディちゃんの特に酷くない?』


 マリアがぼやくが、オルガも三人と同意見なので頷くにとどめる。

 

「だから偶に暇なときにマリアの出身地を調べようとしてるんだが……昔の事で全然分からん」

「いつでしたっけ?」

「400年前」

「……ああ。それは」

「うむ。難しいな。地名も大きく変わっているだろう」

「そうなんだよな」


 だから後は大陸地図からマリアの記憶にある地形を照合して絞り込もうと考えていたのだ。

 とは言え、その大陸地図を入手なり閲覧なり出来る様になるにはまだまだ時間がかかりそうだが。

 

 そう思っているとイオがふと思いついたように言った。

 

「ふーん。じゃあオレも暇なときに手伝ってやるよ」

「それは助かるが……良いのか?」

「良いって良いって。早く見つければその分オルガは自由の身になれるんだろ?」

『ねえねえ、オルガ。何かイオちゃんさっきから私をさっさと成仏させようとしていない? 気のせいかしら』


 多分その予感は正しい。イオもそこまで深く考えていない様だったが……この二人、もしかして相性悪いのではないだろうか。

 姿が見えるようになったらどうなる事やら。

 

「後、一応言っておくけどこの事は他の奴には内緒で」


 幽霊が憑りついていますなんて話。積極的に喧伝したい物ではない。

 ただでさえ聖剣無しという事で無駄な注目を浴びているのにそこへ燃料を投下する事も有るまい。

 

 まあ、それを信じる人間がどれくらいいるかはオルガとしても疑問だが。

 

「わざわざ言わねえって。仲間を売ったりはしないっての」

「そうですね。オルガさんが実験体として捕まってしまうのも困りますし」

「うむ……アカデミーの連中は倫理観と言う物がないからな」

『え。何。何か怖い事言ってる』

「その、アカデミーと言うのは……?」


 オルガも初めて聞く名称だった。

 

「ん? 知らないか? 西管区にある研究施設の総称だよ」

「何でも魔獣を素材とした新しい理論を実証しているとか。その中で色んな聖剣以外の超常現象を起こす物を収集しているとか」

「うむ! 一度研究者以外として入ったら二度と出られないと評判の場所だ!」

「頼む。絶対他の人には言わないでくれ」


 そんな恐ろしい組織があったとはオルガは全く知らなかった。聖剣以外の超常現象。

 思いっきりマリアはそこに当てはまる。

 流石のマリアも身体を震わせていた。

 

『か、身体が無いのに寒気がしてきたわ! 何そのおっそろしい場所! 西の方には絶対行かないわよ!』


 オルガとしてもそんな場所、行きたくない。西管区のアカデミー。覚えた。

 絶対近寄らない。人の為になるのかもしれないが、実験動物にされるのはごめんである。

 

 今後もマリアについては他人にバレない様に注意して行こうとオルガは固く誓った。

マッドしかいない研究機関。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] オルガってめっちゃMPが多いタイプだったんですね。 聖剣がアレなので、てっきりそちらも人並み以下なのかと… 逆に言えば、オルガが他の聖剣を手に入れたら(それこそイオのようなタイプとか)その…
[一言] ばれたらばらされる
[一言] 研究所に行けばマリアの状態も分かるんじゃないか?と思ってしまった。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ