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迷いの森。



そこに踏み込めば最後振り返っても辺り一面は同じ風景が続く。



道はない。行けども行けども踏み入れば先は木、木、木、木、木、木、木、木、木、木足元は草、鬱蒼と生い茂る草や花、どこかで聞こえるそれは鳥のささめきか、はたまた精霊の噂話か、木々の間にも埋めつくすほどの木。先は見えない。



絶対踏み込んでは行けない。


だってそこは迷いの森


手招きして食らうように誘い込んだものを帰してはくれない。



そんな、昔ながらの言い伝えが今もなお根強く語り継がれている森があった森の言い伝えは伊達じゃない。

確証や本人の証言はないが軒並み近くに住んでいた人間は姿を消したのだから。

探索隊なんかも駆り出された年があった彼らは誰一人帰ってはこなかった。


それで終わり。

調べたくても調べられない。

触りたくても触れられない覗きたくても覗けない人はあっさりとそこを手放した。


柵を貼り巡らせ森一帯を囲ったのだ。

まるで難攻不落の城別にその森が周りの街や村を襲うこともなかった魔物がでてきたこともなければ動物が顔を出したこともないただそこに佇むだけ。




そんな迷いの森の奥深く赤い屋根の家にひとりの少年とひとりの魔女は住んでいた。






「おはようございます!ルルーシカさん!」



朝のひやっとする森の空気を胸いっぱいに吸い込み真っ黒な瞳と真っ黒な癖毛がぴょんぴょんと跳ねた髪をくしゃくしゃとかき乱し少年は元気よく赤毛赤眼の魔女に朝の挨拶をした。




少年は身長160センチほどの背丈でまだまだ伸び盛りと言わんばかりの幼げな風貌が抜けきらない可愛らしい顔をしていた。さらにそこに拍車をかけるように肌は透き通るように白く相対する黒髪と瞳がさらにその肌の色を引き立たせ、華奢な腰回りも含め中性的な容姿であった。



男というにはあまりにも柔らかい目元やそこまで硬さのでていない柔らかな頬目元にすこしかかるほどの癖っ毛すこし胸元の開いた黒い長袖の服とゆったりとしたベージュ色のパンツをはいていた。

ただ、どんなに柔らかな相貌をしていもやはりその開いた胸元は男の子のもので鎖骨は綺麗に浮き出ていた。



彼は自分の年齢を知らない。

また、年齢を気にしたこともない。

目の前の赤髪赤眼の魔女にマグカップを渡しその中に注がれたばかりの熱々のコーヒーが芳醇な香りを放っていた。



季節は秋。


肌寒さに女は二の腕を撫で、少年から渡されたマグカップを服の袖を布宛のように指先まで引っ張るとその袖で包むようにマグカップを両手でくるんだ。



「おはよう。ありがとう」



はにかんだ少年に女も優しく微笑んだ



ルルーシカと呼ばれた女はサラサラのうねりひとつない赤髪とすこし黒みがかった赤い眼をしていた。

桜色の薄い下唇をキュッと噛むそれは彼女の癖のようなものだった。

背丈は彼より少しだけ小さかったひざ下まであるゆったりとしたふわふわで肌触りのいい毛布のような真っ白な服を着ていた。その相貌は幼くもみえ、かと思えば大人びたその雰囲気も相まって大人の女性のように見える。その真っ白な綿毛のような服が朝日に照らされ神々しくさえ見える。





二人が食事をとる正方形の木製のテーブルに収められていた木製の椅子に腰掛けながらルルーシカは熱々のコーヒーをふーふーと冷ました。





その湯気と朝日が反射し女を優しく照らす少年は黒髪の癖っ毛の合間から眼に映る幻想的なまでの女性の姿にぽかんっと口を開いて見惚れてしまっていた。





「ん?」





ルルーシカはまるでそんな彼の心情を見透かしてしまっているかのように魅惑的にはにかんで魅せた。



お、、恐ろしい。



少年はそんな彼女の魅惑的で小悪魔な殺人級のはにかみに少し恐怖すら覚えながらそれでも耳と頬を熱くせずにはいられなかった。



ルルーシカ



彼は彼女の名前しか知らない。




この部屋には外へつながる出入り口のドアを含め五つのの扉があった。



足元も壁も天井もすべて木の木目が出た内装のその部屋は木のぬくもりと香りがほのかに漂う。

家の入り口から入って右側には大きな窓があったそこから容易に外に出ることもでき真ん中に正方形のテーブルと二つの椅子それと窓際に大きな窓に重ならないように出入り口側の壁側にくっつけた淡い紺色をした二人掛けのくたびれたソファがひとつあった。


天井には大きな魔石灯が備え付けられていて透明色のそれは少年の顔ほどある大きさの宝石のようなキラキラした石がそのまま裸の状態で天井にはめ込まれていた。

夜になると柔らかな光を放つそれはどんな構造になっているか彼は知らない。



それから窓の正反対側は少し奥まったつくりになっておりそこにはキッチンなるものがあったそこで料理を作るための

道具が綺麗に整理されていた。

そこには少年を横にしても少し足りないくらいの艶やかな横長の石の天板があった。

高さは少年のへそくらいまでありそこに火をだす魔石の板が二つ、綺麗な水が流れだしどこかにな流れていく穴がついた大きなくぼみがひとつ、そして食べ物をきったりするスペースがあった。




彼は記憶がないのでなにがすごいのかはわからないが、ルルーシカ曰く自分が経験し見てきた人間の家にあるキッチンを自分なりに作り出した最高傑作なのだそうだ。



さらに横には中に入れるとものを冷たくして保存する黒い石造りの箱があった。

これは温度を設定するのに難儀したらしく何度中のに入れたものを氷漬けにしたか数えきれないと過去話を楽しそうに話ていた。


彼女はものを作ったり研究することがとても好きな人物であった。




昔、ルルーシカが見よう見まねでこの家を作ったらしくこんな大きなものを一人で?!っと目を大きくしたことを彼は思い出した。




部屋は人10人入ってもゆっくりとくつろげるほど広く更に窓から右側の壁には、木製の扉が2つあり1つはルルーシカの部屋になる。

昔は僕もそこで寝ていた。

今では考えられないが彼は勝手にそこを魅惑の部屋と呼んでいた(ルルーシカは知らない)




キッチン側に扉がもう二つあり一つはトイレ一つはお風呂である。

トイレは白 木製の扉を開くと全く世界を変えて白と黒を基調にした作りになっていた。

なんでも昔友達の家に行った時のトイレをイメージしたのだといっていた。

風呂はこれまた大きくここも白と黒を基調に作り込まれていた、大きな艶々の黒い石でできた丸い浴槽はかなり広く一人で入るにはあまりに寂しい大きさだった。





更に大きな窓ガラスがあり霞ませることもできたがくすませない状態だと浴槽に浸かりながら夜空を一望もできた。


彼女曰く露天風呂みたいにしたかったらしい。


そして問題はここ。

木製の扉を開け脱衣所と風呂を隔てるその扉はすごい透明度のガラス扉をだった。彼女曰くこれが流行っていた?らしく何度も彼を羞恥させた。



彼の部屋はルルーシカの部屋の隣だった。



彼の部屋は最初物置だったけど彼がルルーシカと眠れないと話すとルルーシカがそこを貸してくれた。


彼の部屋はとても簡素だったベットがひとつとを本を読んだりする机がひとつそれに備え付けられた椅子がひとつ

魔石灯がひとつそれだけだった。


物に執着のない性格のせいで部屋に何かを欲しがることもなくこのような現状を生み出している



「よく寝れた?ダダ」


ダダ。

これが彼の名前


本当の名前ではないけどルルーシカが僕を拾った日に彼につけてくれた名前だ。


名前の由来は簡単拾ったその日怯え震える僕がルルーシカを威嚇するときにだーだーと喚いていたのだそうだ。




別に彼に不満はない。

あのとき彼を献身的に支えてくれたルルーシカさんに感謝しかないしそれ以上にどう呼ばれようが彼女に呼ばれるなら彼はそれだけで幸せなのだ。



たとえそれがこんな情けない所以だとしても・・・・



「はい。」

彼は彼女の赤い瞳にじっと見つめられて少し気恥ずかしい思いで答えた。



ーーーーーーーーーーー




「はぁ?!あの板娘が弟子をとった?!」



女は目をこれでもかと見開き,目の前の男に唾を飛ばした。



女はどっかりと腰を押し込めた皮のソファにドスっと背中をあずけ足元どんっと組んだ



その豊満な体つきにたわわに実る双丘をこれでもかと腕で押し付け腕を組んだ大きなソレは今にもあふれ出さんとばかりにむちりと服に張り付いた。



その身体に比例するようにふっくらとした唇がゆっくりと不敵な笑みを浮かべる



少し霞んだ茶色の髪は肩まであり緩くウェーブがかかっており瞳は霞んだ翡翠の色をしていた。

身体にぴったりと張り付いた白いシルクのタイトドレスを身につけていたそれは肩から胸元が大きく開いておりそこからそのたわわは少しきつそうに大きな谷間を作っている。


足首まで流れるように伸びた生地は片側だけ大きく切れ目が入っておりそこから魅惑するかのように艶めかしい足が顔を出している。



男は眉間にしわを寄せた



「何を考えている?」



「・・・・なに?・・・なにってそれわかってて聞いてるんじゃないの?」



気の強そうな女はさらに口の端をあげたその不敵な笑みはまるでいやらしくなくそれどころかその整った顔のせいか愛らしさまで伺える



男は大きくため息をつくと大事にするなよ。と諦めたように肩をすぼめて女の前からゆっくりと去っていった。




「・・・・・あいつが弟子をとった時点でもう大事よ」



女は男に届くはずのない声で小さく呟いた。





ーーーーーーーーーーーー




「はっ!」




ルルーシカは背中をビクッと軽く反らした




「ルルーシカさん?」




ダダはルルーシカの驚いた顔に自分もびっくりして何事かと彼女の名を呼んだ




「・・・・・・悪寒が。」



二人は家の外で向かい合っていた季節の変わり目で冷たい風を浴びながら真ん中にペンが地面にちょんと置いてあった

この前弟子にする宣言から始まった魔法の稽古であった。家の周りは半径5メートルぐるっと円を書くように木も草も生えてはいなかった。


そこを越えれば鬱蒼と生える木々や草花が敷き詰められたように根を生やしていた。その円の中にはダダがよく日向ぼっこをする木でできた横長の椅子がひとつだけちょんと置いてあった。






「?」


ダダは目を開いてきょろきょろと辺りを見渡すルルーシカにキョトンとしていると彼女はふぅーと息を深く吐いて、まさかねと心配しすぎだと頭を振ってダダと向き合った



彼女は先程と同じワタのような見るからに暖かそうな白い服を着ていた。

ひざ下まであるその服に艶っぽい足がその姿をのぞかせる。



ダダはそわそわとした座っているときは気にも留めなかったけどこう目の前に立たれるとどうしてもその足元に目がいく




あの下って、、、何か履いてるのかな?




ダダはもうそのことで頭がいっぱいだった。





「ダダ、今日この地面に置いたペンを魔法を使って浮かせるの。」



ルルーシカはさっきまでの自分を振り払うように至って冷静に至って真面目にダダを見た。



「はい!」



しっかりしろ!

あの下に何があるかは今大切じゃない!

僕は決めたんだ、あの日僕の願いは思いは

夢はあの本に出てくるような、強くて、偉大で

かっこよくて、モテモテで・・・・僕は英雄になる!

あの本のように僕は!



ダダは己の雑念を振り払うように頭をぶんぶんだと左右に振る



「やり方に法則性はないの。魔法に既存や法則はない。もちろん模範解答もない。・・・・私だったらそのペンを宙に浮かせたいなら頭にイメージして・・・・こうする。」



ルルーシカは右手をペンの方に向けて手のひらを上に向けて人差し指をくいっと上にあげた。すると、指先からなにかふわっと音がし風がその指先から弧を描くように目にはみえない風の波が立った


するとペンはふわりと羽のように宙に浮いた。



「おおっ!」


ダダの感嘆も聞き終わらないうちにルルーシカはさぁっとダダを促した



「はい!」


両手をがっつり出しダダも見よう見まねで手に力を入れる


あがれっあがれっっあがれっっっあがれえ!



必死に頭の中でペンが浮かぶところを想像してみる。

ダダは歯をぐっと食いしばりペンを凝視するしかし、ペンはうんともすんともいいはしない。

ルルーシカは何も言わない。ただじっとダダを見守る赤いその眼で


やっぱりそんなすぐすぐできるものじゃないだ。ギリギリと歯を擦り合わせ更に指先に力を込めるルルーシカはふむ、と眺めた魔法、結局既存的でも法則性もないそれを深めていくのはどうやったって自分次第だ

ある程度の行程を組んで行うことが大体の主流。

杖で、力の伝達を簡単にしたり文字を刻むであったり、呪文、詠唱、まぁ、取り敢えず言葉を介して力の基盤の構築、具現化これがセオリーみたいなものだが




ルルーシカはそんなものすっ飛ばして私はこうやるなんていってのけて彼がどうなるのかを観察していた。




まぁ、最初はこんなものか。そう考えていた時、


ふわっーーーー


その時、風が吹きルルーシカの太ももをかすめる。白いひざ下のゆったりとしたモコモコの服がゆらめく。


そのゆったりした股下のせいか風を含んだ服はふわりと膨らんでその白く艶やかな太ももを少しだけお披露目した



「!!!っ」



ダダは渾身の思いに馳せるーーーーー



「ーーーあがれぇっ!!!!!」



ーーーーーーふぅわぁっーーーーーーーー




ソレはあがった。




「あ・・・ぁ・・・・」





ダダは両手を高々と上げて上がったソレを凝視した。




眼前に翼を広げるがごとき、いや服をまくしたてられたそれはまさに天使ルルーシカは何も言わない。ただじっと・・・・




「・・・・く・・・ろ・・・・」



沈黙ーーーー。



その白い服から顔を出した黒いレースのソレは服のかわいさのは相反してなんとも妖艶的でダダは目を逸らさずにいた




「・・・・いや。・・・・うん。」



がくっとひざから崩れ落ちるダダは思いっきり地面に額を擦り付けた



「ご、ごぉめんなさあぁあぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」



盛大にまくし上げられた裾をすすっと下に降ろしルルーシカはこほんっと咳払いをした。



「・・・・そうだね。君が健全な男の子ってことがよくわかったよ。」





そして宙に小さく浮き上がったペンもコトリと地面にに落ちたダダはそんなこと気づきもせずただただ謝罪をくりかえしていた。


ルルーシカはそのペンの動きを見て唇を甘く噛んだ。




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