乱世
何進が帰ってきた。
「くそ、あと少しだったのに!囮はなにをしていた!」
怒っている。どうやら、逃した黄巾軍が間に合ったみたいだ。
「何進殿。申し訳ありません。」
「ふん。次はないぞ。覚えておけ。」
曹操が謝ると、何進は満足したのか、毒を吐くのをやめた。とりあえず陣が前に進んだので、敵を攻めやすくはなっている。
しかし、一週間後。黄巾軍討伐について話し合っていた官軍の下へ、思いもよらない情報が入ってくる。
「張角が病死しただと!?」
勝利が叫ぶ。黄巾軍と官軍を上手く戦わせることによって、両方の消耗をはかる作戦は、誰もが予想できない事情によって断念せざるを得なかった。
「運が悪かったわね。坊や。約束はまた守ってもらうから、忘れないでね。」
「皆の者!敵の首領・張角は死んだ!敵はもはや、まとまりのない賊の集合となった!今こそ敵を滅ぼすぞ!」
何進は意気揚々と演説する。この戦、張角の弟の張梁はまだ生きているとはいっても、最早結果は目に見えていた。
「全員、持ち場につけ!総攻撃をはじめるぞ!」
慌ただしく、準備が始まった。
「曹操、一つ提案がある。」
軍議が終わると、勝利は曹操に話しかける。
「あら、なにかしら。」
「黄巾軍って、ようは今の政府に反感を持ってる奴らだろ?引き入れないか?」
曹操が驚いた顔でみてくる。
「引き入れるって、私の軍に?」
「ああ、そうだ。勢力を均衡させるためには、最早これしかない。張角が生きていれば、削り合わせることできたが…」
「しかし勝利、そんな奴ら仲間に入れても使えるのか?」
夏侯惇が不満げに言う。
「考えてみろ、夏侯惇。恐らく、あいつらの中には真に世直しの志を持って動いてる奴らもいる。そんな奴らを仲間に引き入れることができたら、戦力になると思わないか?」
「確かにそうだが…どうやって引き入れるのだ?」
夏侯淵も不思議そうに言う。
「?何言ってんだ。誘いに行けばいいだろ?」
三人は首をかしげるが、説明する。
「まあ、待ってろ。明日までには戻る。自陣にいてくれ。」
勝利は音もなく去っていった。
ー
「曹操様!勝利が、300人くらいを連れてきています!」
準備をしていると、夏侯惇が勝利を見つけた。
「ほんとに連れてきたのか?あいつ。」
夏侯淵が驚いている。
「曹操!戻ったぜ!ついてきてくれるみたいだ!」
勝利は少し返り血を浴びていた。どうやら荒っぽいこともしたのだろう。
「さて、ならあと少し、頑張ろうぜ!」
勝利がそう言うと同時に、進軍のドラがなった。
ー
「大勝…ね。」
それから数日の攻撃で、敵は瓦解した。張梁は殺され、最早敵は逃げるしかなかった。
「皆の者!わしらの勝ちじゃ!褒美は後で各々に通達する!それまで、所領でゆっくりと休んでいてくれ!」
何進は高らかに言う。
「曹操。今のうちに、兵の調練をして、畑とかも整備しておこう。乱世はこれからだ。」
曹操は、その時のために準備をしておくことにした。
ようやく兵の調練が終わり、整備が整った矢先、皇帝・霊帝が崩御した情報が入ってきた。