埋伏
ー黄巾軍営ー
「波才様!どうやら、張角様のところから援軍が来たみたいです!人数は200名、どうしますか?」
「ふむ、率いてる者を連れてこい!」
勝利は、黄巾軍の隊長、波才の下へ連れていかれる。
「遅ればせながら、膠着している状態をなんとかするため、参上しました!」
勝利率いる200名は、全員黄色い頭巾をかぶっており、既に黄巾軍と見分けがつかないようになっていた。
「ふむ、その黄色い頭巾を見るに、援軍ということは間違いない。」
そう、黄色い頭巾は黄巾軍として認められたものしか配布されないことになっている。勝利は、曹操と出会った時に倒した黄巾軍の頭巾を取りに行き、全員に装着させていた。
「必ずや憎き官軍を倒してみせましょう。ところで一つ、作戦があるのですが…」
「なんだ、申してみろ」
勝利は地図を広げた。
「はっ。敵の陣形を少し見てみたのですが、統率の取れ方的にも、どうやら色々な軍が一時的に集まっているみたいで、兵の練度に差があります。1番統率がとれているのはここの曹操軍で、取れていないのはここの何進軍です。ここは、曹操軍等、統率の取れた部隊に少数をもって撹乱させ、その間に敵の主力である何進軍を攻め抜く、というのが良いと思います。」
「ふむ、被害はどのくらいだ?」
「およそ、500。敵も、何進軍が崩壊すれば退却するはずかと。」
「よし、ならその作戦でいこう。膠着状態をなんとかしたかったところだ。勝利、お前は率いてる200とここの陣営を守っておれ。」
「承知しました。ご武運を。」
「皆の者!憎き官軍を滅ぼす時が来た!1000と4000にわかれ、1000の軍勢で敵の精兵を撹乱し、その間に何進軍を4000で滅ぼすぞ!」
波才は次々と部隊長に指示をし、戦闘準備が整った。
馬のいななき、怒声がする。どうやら出発したみたいだ。
勝利は、守りを固めた。
ー官軍ー
「敵が攻めてきたぞ!作戦通りだ!」
夏侯惇は興奮気味に騒いでいる。どうやら、はなから勝利が裏切るなどと思っていなかった様子だ。
4000が向かってきている。堅陣を組まれたのではどうしようもなかったが、こうやって攻める陣を敷いているのであれば、いくらでもやりようはある。
「よし、いくわよ!夏侯惇は右翼から騎馬隊で敵を分断し、夏侯淵は片方を、私はもう片方を対応するわ!まだ戦は始まったばかり。ここで終わりじゃないから、気をつけていくのよ!」
曹操がそう言い終わると、夏侯惇は自らを先頭に敵を粉砕していく。割れる。夏侯淵は割れた右側を、遠くから射かけた後、剣をもって出ていく。曹操は割れた左側を、卓越した用兵によって倒していく。敵が潰走をはじめるのは、時間の問題だった。
一方、何進軍は目の前に1000の兵がいるとは言っても、まともにやりあってこない軍勢である。
「いけ!手柄を立てろ!あいつらよりも多く殺せ!何をボーッとしておる!さっさとやらぬか!」
何進は、自分は軍の奥にいて指示をするのみで、兵士達になんとか手柄を立てるように命令していた。しかし、敵は1000であり、しかも戦うことが目的ではないので、なかなか一気に倒すことはできない。
「ふん、まあよいわ…この戦の手柄は全てわしのもんじゃ…」
1000の兵は、4000の兵の異変を受け、方向を転換して退却していった。
「曹操様!敵が退却していきました!」
「上手くいったわね。」
そう、勝利の作戦は、何進の兵200と、曹操の兵200を交換して、一時的に曹操が200と残りの何進軍を指揮し、200を何進が率いて撹乱兵とあたる、というものであった。
「まだ戦は半分しか終わっていないわ!ここから追撃をして、敵を潰滅させるのよ!」
そう、戦はまだ終わっていなかった。敵は軍営に退却するであろうが、勝利が後ろからそこを攻撃し、こちらと挟み撃ちをする作戦であった。
敵を痛めつけても、自分の陣へ退却すれば、それ以上はどうしようもない。かなりの犠牲を覚悟で攻めるしか方法はない。
陣へ退却させないようにして、敵に大打撃を与える。それが勝利の最終段階であった。
「勝利が死なないように、さっさと追撃をするわよ!」
曹操率いる精兵200が、全員騎馬に乗りかけはじめた。