貂蝉
「董卓は都に火を放ち逃げ出した!大軍で長安へ向かっているようだ!」
軍議がはじまった。袁紹がわめいている。
ただ、反董卓連合は追撃をするつもりはないみたいだ。董卓の力は十分に減らすことができたし、あの大軍に追撃すると被害が馬鹿にならないからだろう。
「曹操。ここは、負けるの覚悟で追撃すべきだ。」
「勝利。どういうこと?私たちが追撃しても、被害は知れてるし、こっちの被害は大きいわよ?」
「あくまで俺たちは、反董卓連合なんだ。ここで被害がでかいからと追撃しなかったら、民の信頼を失うことになる。むしろ、ここで俺たちが追撃すれば、義を感じた優秀な人材が集まってくるぞ。」
「なるほど。先行投資というわけね。分かったわ。」
「皆の者、よくやった!ここまで董卓を追い詰めることができたのは、諸将の活躍あってこそじゃ!では、これにて、反董卓連合を解散する!」
「坊や、軍議はどうであった?」
「ああ。袁紹はあくまで董卓が軍勢を率いて長安へ向かっている、と考えている。俺たちは、今から追撃に出る。呂布、いいな?」
「…うん。」
「作戦はこうだ。俺、呂布、賈詡、夏侯惇は顔を隠して追撃をし、敵兵にまぎれ込み長安まで行く。曹操達は、追撃をしたあとひいてくれ。」
「あなたまた危険なことを…」
「とりあえず、敵に紛れ込むのが今回の目的だ。いくぞ!」
「毎回心配する方の身にもなりなさいよ…」
曹操は呆れるが、追撃の準備に移った。
敵の殿軍は思ったよりもしっかりしていた。
被害は出ているが、曹操は追撃の手を緩めない。
「全軍、前へ!本体に追いつくのよ!」
しかし、多勢に無勢である。戦力差が相当ある曹操軍は、次第に勢いがなくなっていった。
「曹操様!勝利以下四名、入り込んだ模様です!」
夏侯淵が告げる。
「よし。全軍、退却!」
軍を引き返す。
「無事でいなさいよね、勝利…」
「よし。なんとかうまいこと潜り込めたな。」
「ああ。しかし、ここからどうするのだ?」
「とりあえず長安に入って、向こうの様子を見るしかないだろうな。」
勝利は突然後ろから殴られた。
「ちょっと!なんで私なんや!?さっきは聞かんかったけど、今の潜り込みの間に死ぬかと思ったで!?」
「お前、董卓軍に知り合いが多いだろ?うまく使えると思ったんだ。それから、お前の身は俺が守るから、心配するな」
「う…。そういうなら、分かったけど…」
「…それより、見えてきた。」
「…でかいな。」
大きかった。流石は昔の都、長安。
「よし、とりあえず董卓軍の将校から話を聞いて回るか!」
「それならいい奴が一人おんで!えらいべっぴんで、出身は謎やねんけど、董卓様と近くて、民のことを常に考えてる奴や!」
「…貂蝉?」
「そうや!」
勝利達はとりあえず、その貂蝉のところへ行くことにした。