強敵
戦況が変わった。おそらく、華雄は殺されたのであろう。
しかし、勝利はそれを強く意識している暇はなかった。
「…こんなに強い相手がいたなんて。やっぱり、世界は広い。」
「喋ってると、舌を噛むぞ?」
うちかかる。お互い、戦いながら喋っていた。
「呂布よ。俺たちの勝ちみたいだぜ?」
「関係ない。」
呂布にとっては、華雄が負けようがどうでも良かった。それより、ここまで強い相手と戦えてるのが嬉しかった。
「強い相手と戦えると思って、董卓軍に入った。間違いじゃなかった。」
呂布は、強い相手を求めていた。互角に戦える相手とは出会ったことがなく、孤独を感じていたのだ。
しかし、徐々に呂布に疲れが見えはじめる。無理もない。もう数時間戦っていた。
肩を突く。呂布の肩にあたる。勝利の攻撃をかわせなくなってきた。
しかし呂布は、死んでも満足だった。ここまで強い相手と戦えたのだ。はじめて、孤独から逃れることができた。
「呂布、どうやら限界みたいだな。」
「貴方と戦えてよかった。多分私は負ける。…一つ、お願いがある。私が死んだら、董卓様を守る人がいなくなる。貴方が守ってあげて。孤独を感じながらも、おかしくならなかったのはあの人のおかげ。お願い。」
呂布の動きが止まる。勝利も動きを止めた。
「…そうか。」
勝利が棒を振りかぶる。呂布は動かない。勝利が振り下ろそうとした時、声がかけられた。
「待ちなさい!」
呂布の目の前で棒が止まる。声の方を見ると、軍勢を連れて董卓が叫んでいた。
「呂布は殺させません!私の可愛い可愛い、娘を。例え私が死んでも、殺させません!」
勝利の方をじっとみる。
「その軍勢で俺を殺そうとしてるのか?」
董卓は首を振る。
「この軍勢で坊やを殺せるとは思ってません。ですが、この娘だけは殺させない。私の首が欲しいのでしょう?私の首を差し上げます。それで、終わりとしなさい。」
董卓の横にいる奴が慌てて止める。
「董卓様!それはなりません!」
「…一つ、借りがある。」
勝利が続けた。
「黄巾軍の時、助けてもらった。あの借りを返そう。」
勝利はそういって、馬に乗る。
そういえば、一つ言うことを聞く、という約束をしていた。
「坊や。ありがとう。」
董卓は丁寧にお辞儀をする。
「…あの時の借りを返しただけだ。それと、呂布。久しぶりに、楽しかった。また、闘おう。」
「…ありがとう」
呂布もお礼を言う。
勝利は、手を振って、駆けていった。
「勝利!?あんた無事だったの!?」
途中で曹操・劉備軍と会う。
「勝利!お主が死んでいたらどうしようかと思ったぞ!」
「やけに早かったな。華雄をそんな早く倒してくれたのか?」
「そうよ〜勝利君。関羽ちゃんったら、勝利君が心配で心配で…」
「姉上!すぐそういう方向にもっていかないでください!」
関羽は顔を真っ赤にしている。
「曹操、悪い。心配かけたな。」
曹操が涙目だったので、頭を撫でる。
「…気安く触らないで」
はねのけない。照れているだけみたいだ。
戦場にも関わらず、甘い雰囲気が漂ってきたところを、張飛が崩す。
「なんだありゃ!?」
火が、燃えていた。確か董卓の拠点・洛陽。ここからでも見えるということは、全てを燃やしているのだろう。
伝令が入る。
「董卓が、都に火を放ち、帝を連れて別の場所へ移ろうとしています!恐らく…長安!」
そんなことはありえない。さっきまで、董卓は戦場に出ていた。それから戻るにも間に合わない位置だ。
「何が起こっているんだ…?」
様子を見に、進軍することにした。