犠牲
「董卓様!敵が一騎打ちを望み、呂布と今戦っているみたいです!それが、どうも曹操の軍師だとか」
本陣にいた賈詡が董卓に言う。
「なんですって…!」
董卓は驚く。その時、後ろから人が近づいて来た。
「董卓様。これは好機です。一騎打ちをしてる横から軍勢を率い、その軍師を殺してしまいましょう。」
董卓軍もう一人の軍師、李儒だった。
董卓は、李儒を好きになれなかった。能力は申し分ないのだが、性格に残忍なところがある。
董卓は軍勢を率いて、出陣した。
ー
「呂布はいるか!俺と一騎打ちをしろ!」
勝利がありったけの声量で叫ぶ。敵陣が綺麗に縦に割れ、真ん中から赤い馬に乗った武将がやってきた。
「お前が呂布か?」
「…そう」
目を見た。綺麗な目をしている。しかし、隙がない。
勝利は騎乗したまま、棒で殴りかかった。向こうも戟で合わせてくる。この世界で攻撃が受け止められたのは、これが初めてだった。
実に巧みに馬を操り、右、左と棒を振るう。呂布もそれにあわせ戟を使い、お互い相手に致命打を与えようとするが、打ち合いが続いていた。
勝利が呂布を見る。呂布は頷く。二人は同時に馬から降りた。自分の足で立った状態で、再び激しく打ち合う。
呂布が飛び上がる。戟を振る。勝利も棒で打つ。呂布の攻撃は勝利の服をかすめ、勝利の棒は呂布の肩に当たる。
「…強い」
「お前もな!」
勝利は激しく打ちかかる。しかし、肩に当たった影響を感じさせないほど、綺麗にあわせてくる。ここまで勝利と互角に戦えるのは、元の世界にいた時もそうはいなかった。
勝利は懐かしさを覚えながら、一撃を放った。
ー
「劉備様!曹操殿!行ってまいります!」
関羽が意気込む。
「はやく!勝利が死んじゃう!」
袁紹が呑気に話しかけてくる。
「曹操、落ち着け。お酒でも飲むのだ。」
暖かいお酒を差し出してくる。曹操は受け取ったが、とても飲む気にはならなかった。
「関羽ちゃん。大丈夫だと思うけど、気をつけてね。」
劉備の声を聞いて、関羽は馬に乗ってかけた。
関羽は味方と一緒に敵兵を蹴散らして華雄を探した。
「華雄はいるか!」
こちらも半分に分かれ、華雄が出てくる。
「お前も剣のサビになりにきたのか?」
「すまぬが話してる暇などない!殺させてもらう!」
「やってみろ!小娘!」
華雄は様子見の剣を振るう。しかし、剣は空を切り、関羽は打ち合うことなく華雄の首を刎ねていた。
「戻ってまいりました!」
流石に、袁紹も、曹操も驚く。まだ曹操の手にあるお酒は暖かかった。
「よし、敵を壊滅させるぞ!」
袁紹が諸将に、華雄軍をせめるよう連絡する。
「勝利を助けないと!」
しかし、袁紹はそのような思いなどない。
「いや、全軍で華雄軍を攻める!」
曹操は絶句する。はなから、勝利が生き残ることなど考えてないのだ。
「しかし、それはあまりにも!」
関羽も食い下がるが、認められない。
袁紹は準備に向かった。
「これはあんまりだ。曹操殿。私たちの軍勢だけで勝利殿を助けに行きましょう。」
関羽が言う。劉備も異論はないみたいだ。
「ありがとう。是非力を貸してもらえるかしら。」
曹操も命令違反など気にしていないみたいだ。
「袁紹も、自分が手柄をあげることに必死だろうし、こっちの動きに気づくとは思えないわ。いきましょう。」
曹操軍、劉備軍は、勝利を助けるため、呂布軍に向かっていった。