第8話 脱出準備 (あんさつ)
さてさてさーて?
目を覚ませば赤い天井、シューっと謎の音を立てる液体。
今日は絶好の暗殺日和ですねー。
いつもと変わらないけど!
今の時間帯、他のパラセクト達は皆寝てるかな-?
うんうん、寝てる寝てる。
『傀儡操作』!
よしよし、我が“傀儡”にも特に異変はなしと。
解除。
さーて、あの青モザイクを倒すとしようか!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ようやく、俺が仮眠を取ってまで、長いこと待ち望んだ時間がやってきた。
ククク、やってきたなモザイク野郎!
さあ、俺達の短い付き合いもこれで終わりだぜ!
部屋の入り口から尻尾を出して、餌を引きずるモザイク野郎に向ける。
『衝撃掌』!
吹き飛ぶ青モザイク野郎。
勢いよく壁にぶつかって動かなくなったのを確認し、俺はゆっくりと近づいていく。
ふふふ、俺の勝ち……あ、まだ生きてたのかよ。
すぐに楽にしてやる……ちょ、ちょっと待って、叫ぶとか、しないよね。
ほ、ほんとにやめてよ?
仲間呼ぶとか──
「敵襲ゥゥゥゥゥウウゥ!!!!!!」
やりやがったこいつ!
死ね!
『衝撃掌』ッ!!!
〔熟練度上昇 『衝撃掌』 27/30→28/30〕
お、熟練度上がったぜ。
ってそれどころじゃねーよ!
やばいやばいやばい。
とりあえず『寄生針』!
青モザイクの死体に尾針を突き刺す。
〔熟練度上昇 『寄生針』 4/10→5/10〕
〔SLv上昇 【寄生虫】 Lv2→3〕
あれ?技能貰えないのか。
そういえば【気功法】とかはSLv5になって、やっと技能二つ貰えたんだもんな。
技能を貰えるのはもう少し先か。
だからそれどころじゃないって!!!
なに真面目に考察してんの俺!
と、とにかく部屋に戻るぞ!
うわ、なんか足音が聞こえてきた気がする!
全力疾走!
走れ! 俺!
速攻で部屋に這い戻り、目を閉じて寝ているフリをする。
ハァ……ハァ……。
よし、これでバレない……ってあれ?
よく考えたら、これってチャンスなんじゃないか?
青モザイクの仲間さえ引きつけられれば……。
道は運に任せるとしても、俺は安全に脱出できる。
むしろここでやり過ごしたとしても、皆殺しにされる可能性もある。
うん、俺なら絶対皆殺しにするわ。
疑わしきは罰せよってね。
やるか。
やろう。
やるしかない。
ふぅー、覚悟はできたか? 俺。
よし、『傀儡操作』!
俺が繋げる“傀儡”は二つ。
試しに殺したパラセクトと、さっき殺した青モザイクだ。
まず、パラセクトの方を囮にする。
部屋から抜けさせ、いつも青モザイクが来る方とは逆側に向かわせる。
そうすれば、青モザイクの仲間達はそいつを追うはずだ。
だが、あのパラセクトの貧弱なステイタスだと、すぐに捕まって養分だろう。
あいつには俺が逃げるだけの時間を稼いで貰わないと困る。
ということで、パラセクトを逃がしながらもう一つの傀儡、青モザイクで足止めしないといけないってわけだ。
俺は早速作業に入る。
まずは囮を部屋から出して……。
よし、このまま廊下を這わせておこう。
後は、青モザイクの性能次第なんだが……。
ステイタスの開示ってできないのかな?
「『ステイタス』!」
赤い通路に響く声。
あ、なんかしゃべれた。
あ、見れた。
ーーステイタスーー
名前:なし
種族:雑用細胞
レベル:14
体 力:30/74
精神力:65/65
持久力:55/55
攻撃:25
防御:15
魔力:14
魔防:14
敏捷:26 (+1)
〈先天的スキル〉
【小細胞 Lv2】
・暗視 3/30
・自己ステイタス開示可
【格闘法 Lv3】
・正拳突き 13/30
・軽快 1/10
〈獲得スキル〉
──なし
え、弱くね?
なに、俺こんなのにビビってたの?
まあ、寄生前だったら余裕で殺されてただろうけど。
ん? なんでこいつの体力増えてるんだ?
あ、俺の精神力がすげぇ減ってるわ。
俺の精神力を傀儡の体力にしたっぽいな。
なる程、死体の『傀儡操作』は精神力食うのか。
勉強になったわ。
青モザイクと視覚、触覚、嗅覚、聴覚をリンクっと。
パラセクトの方は視覚だけでいいな。
お、きたな──
リンクしたばかりの足止め係の視界を埋め尽くす、緑と白と青。
そう、現れたのは大量のモザイク集団だった。
ちなみに、この通路には、モザイクが一人で通るのがやっとという程度の幅しかない。
足止めには、絶好のスポットだ。
先頭にいたモザイクが早速仕掛けてきた。
囮を全力で這わせつつも、足止め係にはモザイクの攻撃を躱させ続ける。
いまだ──『正拳突き』!
攻撃してくるモザイクの腹部めがけて右ストレートを叩き込む。
〔スキル獲得 【格闘法】 Lv1〕
〔熟練度上昇 『正拳突き』 1/30→2/30〕
よし、スキルげっつ。
モロに足止め係の拳をくらったモザイクは倒れ込み、後ろから次のモザイクが突っ込んできた。
そいつの蹴りを躱しながらも、着実に囮を這わせ続ける。
ジリジリと退きつつも、俺は時間稼ぎを始めたのだった。