第7話 (睡眠中の相手との)初戦闘
あの後、大量にレベルが上がるなんて現象はなく、俺はゆっくりと眠りにつくことができた。
起きてみれば、いつも通りべちょべちょまみれ。
ただ、体の節々が痛むということはなくなってきたんだよね。
俺もこの生活に適応してきたということで。
我ながら身震いするぜ。
さて、今日はある計画があるんだよな。
モタモタしてられぬ。
さっさとやることやってしまおう。
俺は部屋から這って出て行く。
敏捷は上がったものの、あれは最高速度みたいなもので、俺はいつも通りゆっくりと移動していた。
速く移動するの、結構疲れるんだよね。
そういえば、昨日手に入れたスキル。
【気功法】と【呼吸法】っていうんだけど、あれらはなかなか有用そうだった。
特に【気功法】の『衝撃掌』ってやつ。
当分は、あれが俺の主な攻撃手段になるんじゃないかな。
ちなみに、【呼吸法】の方の『咆吼』ってのは多分使えない。
だって声が出せないから。
種族的な欠点って奴だな。
あと、レベルがMaxになったからか、視界の端にずっと〔進化確認〕の文字が表示されてるんだよね。
こんなところで進化したら、宿主さんに速攻バレて養分行きだろうからしてないけど。
脱出したときの楽しみにしておこう。
てか、進化するんだな。
お、目的地に着いたぜ。
俺がやってきたのは自分の部屋から少し離れた虫の部屋。
そこでは、早起きしてきた俺とは違い、一匹のホワイトパラサイトが暢気にぐっすりと眠っていた。
俺の、初めての戦闘。
体を曲げて尾針を突き出し、そこに体中から気を集めていく。
そして──
『衝撃掌』!!!
──目の前の虫めがけて圧縮した気を放つ。
眠っている奴は避けることもできず──直撃。
ホワイトパラサイトは数回ピクッピクッと痙攣したあと、息絶えた。
はい。
終わりっと。
体の内側に衝撃を飛ばしたおかげで目立つ外傷は殆どない。
これでいいか。
一度で成功してよかったぜ。
よし、じゃあ実験開始だ。
『寄生針』!
尾針をブスッと突き刺す。
〔熟練度上昇 『寄生針』 3/10→4/10〕
よし、寄生成功。
うわ、ステイタスが各種1ずつしか増えてないぞ。
あいつ倒すの技能使わなくても余裕だったんじゃ……。
ま、まあいい。
一旦帰るとしよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ただいま~。
さて、やるか。
ん?
何をやるかって?
よくぞ聞いてくれましたね。
それでは説明しよう!
ここを脱出するために必要な要素は三つ、強くなること、宿主側がパニックになること、そして、宿主の体内を把握することだ。
一つ目はクリアとして、二つ目は運か、もしくは自分でパニックを起こすかだ。
つまり、今やるべきなのは三つ目をクリアすること。
とはいえ、俺が体内を歩き回ってたら不審だし、少し強くなったとはいえ、数で来られればどうなるかはわからない。
見つかったら即養分だ。
ということで、俺はこの前手に入れた技能『傀儡操作』が使えないかと考えたのだ。
人型青モザイクを不意討ちで殺し、“寄生”して傀儡にする。
あとはそいつで体内を探索して、外までの道順を手に入れるってわけだ。
んで、いきなり本番は少し怖いので、お試しというかリハーサルだ。
OK?
じゃ、始めるぜー。
目を閉じ、心の中で念じる。
『傀儡操作』発動!
真っ暗だった俺の視界に、赤い景色が流れ込む。
無論、俺の目は開けていない。
傀儡の視界が映っているのだ。
〔熟練度上昇 『傀儡操作』 1/30→2/30〕
おう、上がった上がった。
試しに部屋の中を歩き回らせてみる。
なんだか、自分の体を動かすみたいな感じでできた。
ふむ、これなら問題なさそうだな。
あ、目開けたらどうなるんだろ。
小さくなって視界の端に行っちゃった。
今は視覚以外のリンクを切ってる状態だけど、五感全部リンクさせたらどうなるんだろうか。
いや、やらないけどさ。
気持ち悪そうだし。
さて、向こうを動かしながら俺も動く……これ結構難しいな。
なんだろう、思考が二つに引き裂かれるような、つらい。
〔熟練度上昇 『傀儡操作』 2/30→3/30〕
また上がったよ。
んー、どうしても動きが単調になっちゃうや。
もともと人間にマルチタスクって向いてないらしいし、仕方ないか。
……俺人間じゃないけど。
とりあえず一旦解除するか。
『傀儡操作』解除。
ふー。
疲れた。
うん、これなら計画も行けそうだ。
あいつの寄生は解除しなくてもいいよな。
死んだらどう処理されるのか気になるし。
そうしたら俺は今日の計画の為に仮眠を取っておくとしようか。
おやすみなさいー。