第3話 転生したらまずやること
おはようございます。俺です。
え? よく眠れたかって?
ええ、とても快適な睡眠でした。
ねちょねちょとしたナニカに体を包まれ、ザラザラとした床の上でごろ寝したのですから。
起きてみれば、体の節々は痛いしベトベトしてるしふざけんなよ! ふわふわのベッドよこせよ!
俺は現代人のもやしっ子なんだよ! ふわふわに包まれたいんだよ!
唯一の俺の癒やしの時間をどうしてくれるんだよ!
……ふう。
少し取り乱してしまったようですね。
それでは今日も一日張り切っていきましょうか!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、なぜか死んだら虫になっていることが判明した俺だが、あのあとぐっすりと眠り込み、今ようやく起きたところである。
さっきの謎テンションのことなど知らん。
知らない知らない。
掘り返さないでください。
まあ、少し気がたってただけなんだよ。
……多分。
んで、話は戻るけどさ、俺は虫に生まれ変わってたんだよ。
これってさ、転生だろ?
ラノベとかでよくあるやつ。
なんでそんなものに巻き込まれたかなぁ。
面倒くせぇ、とも思ったけどさ。
俺、結構ウズウズしてきたんだよね。
だって転生だぜ?
殆どの異世界転生モノの主人公って、神とかなんかその辺から与えられたチート使って無双するんだぜ?
俺もなんらかのチート持ってるはずだろ。
神様とかに会った記憶はないけど。
まあ俺、体が虫ってこと以外は。
それ以外はモロ異世界転生モノの主人公なんだよね。
つまりチートも持ってるはず!
俺さ、若いうちに莫大な財産築いて、余生をダラダラ過ごすのが夢だったんだよ。
チート使えば余裕だろ。
もう勝ち組。
もうなに? エリートってやつ?
セレブ?
話しかけるな下級市民が。みたいな?
怠惰な生活おくれるぜ!
うはははははは。
おっと少し興奮してしまったようだな。
ふふふ。
それではまず、俺のチートを確認することから始めようか。
異世界転生モノの舞台となる異世界は、殆どが剣と魔法の世界だ。
つまりこの世界にも、魔法がある可能性は高い。
これはあくまで俺の予想なのだが、俺のチートは魔法関連だと思う。
なにせ俺は、14歳の頃から今に至るまでの3年間、オリジナルの魔法詠唱、オリジナルの魔法陣、オリジナルの魔法式、などなどエトセトラを生み出し続けてきた男だからな!
『ベルフ式魔道表』と呼んでいるそれは、3年間の血と汗の滲む努力の結果、系統、序列、複合式、などなどの概念も取り入れた完璧な物となっているのだ。
あ、ベルフってのは俺のネットでのHNだ。
さて、やってみようか!
俺は早速、部屋の入り口とは逆側の壁にむかって魔法を発動する準備を始める。
発動するのは、俺の『ベルフ式魔道表』でも随一のお気に入り。
目を閉じ、心の底の淵から溢れ出る闇を想像する。
さらに、それを引き出すようにして、尾針の先に集中させていく。
同時に心の中で詠唱を始める。
──我が深淵より零れ出す邪なる瘴気。
我が念に答えよ。我が願いに答えよ。
それは圧倒的なまでの蹂躙。鮮烈なまでの暴虐。
終末へといざなえ。
“暗黒破綻波”
……。
…………あれ?
おかしいな、なにも起こらないぞ?
俺の予測通りだと俺の周りに大きなクレーターができるはずなんだけどなぁ……。
やっぱり声に出して詠唱しないとダメなのかな?
もしかしたらこの魔法がたまたまダメだったって可能性もあるし、他も試してみるか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
えー、結局魔法はムリでした。
もう最後のほうなんて、メラ◯イアーとかファ◯ガとかも試してみたけどムリでした。
テンションだださがり。
さげぽよ。
もしかしたら声に出して詠唱してないから、かもしれないけど。
はぁ。
それだともう俺魔法使えないじゃん。
はぁ、夢が。
少年の無垢な夢を壊しやがって。
はぁ。
まあ、次いってみるか。
魔法が使えないんだし、もう殆ど可能性はゼロに近いけど。
これも異世界転生モノでよくあるやつだ。
それこそゲームみたいな感じのやつ。
よし、じゃあいくぞ。
どうせ出ないんだろうけどさ。
『ステイタス』!
……え? まじで? なんか出たんだけど。
心の中の叫びに呼応したのか、俺の視界に『ステイタス』が浮かび上がる。
ーーステイタスーー
名前:ダル
種族:ホワイトパラセクト 《詳細》
レベル:1
体 力:10/10
精神力:15/15
持久力:10/10
攻撃:3
防御:3
魔力:5
魔防:3
敏捷:1
〈先天的スキル〉
【寄生虫 Lv1】
・寄生針 1/10 《詳細》
・暗視 1/30 《詳細》
【転生者】
・言語翻訳 《詳細》
・ヘルプ(低) 《詳細》
・自己ステイタス開示可 《詳細》
【*** Lv1】
・**** 1/30 《詳細》
・******* 《詳細》
〈獲得スキル〉
──なし
……見るからに雑魚なんですが。