表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/55

第19話 迫り来る脅威

「ふむ、そんなことが」


 俺の説明を聞き終えたおじさまがそう言いながら、眼鏡を外して目元を揉む。


 揉めるのだろうか……。

 揉めてないよね。

 固そう。

 

「カカカ、気分の問題ですよ」


 なるほど。

 そんなもんか。


《おいダルゥ、そのキノコ、オレにも分けろよ?》

《あ、はい。もちろん》

《ヘヘヘ、今から楽しみだなァ》


 まさかグルートさんもキノコ好きだったとはな。

 仲間発見だぜ。


 まぁそれはそうとしてだよ。

 あのエルフは、なんでおじさまのナワバリ内にいたんだ?


 ちらりと視線をおじさまのベッドに向ける。

 今そこでは、布団をかけられたエルフ少女がぐっすりと眠っていた。


 その胸はつるぺただ。 


 いや、関係ないけどね。

 背負った時に胸が当たってドキドキする展開があると思ったらなかったんだよ。

 まさかつるぺただったとは。

 まぁ多分人型の女性には興奮しないんだろうけどさ……。

 悲しいかな。


 人知れずナイーブになる俺を余所に、おじさまが口を開く。


「グルート、女王陛下とは繋がらないのですか?」


 女王陛下? 

 誰それ。


《あァ、さっきから試してたんだけどよ。繋がんねェ。森の結界に引き籠もってんじゃねェのか?》

「ふむ、少なくとも結界を使わなければならない状況に陥っていると……」


 森? 結界?

 全く知らないぞ。

 うーん、今の会話から予測するに、グルートさんはどこかの女王陛下と念話を繋げようとした、のかな?

 だけど、森の結界のせいで繋がらない、とか?


 あ、だんだんわかってきた気がする。


 森に住む種族なんて、俺は森人族エルフしか知らない。

 エルフ少女がなぜかナワバリにいたから、グルートさんが森に住むエルフの女王に連絡を取ろうとしたと。


 ……女王?


 さすがグルートさん、そんなコネまで持ってるのか。

 え?

 マジで?

 グルートさんが? 

 エルフの女王とお知り合い?


 ないな。

 ないない。

 ありえない。

 冗談でしょ。 

 

「カカカ、事実ですよ。旧知の仲という奴です。若い頃はよくしのぎを削ったものですよ……」


 スカルおじさまが遠い目をしてるよ。

 若かりし頃という奴か。

 そういえば聞いてなかったけど、おじさま達の年齢凄そうだな。 

 500歳とか普通に超えてそう。

 ファンタジーだし。


《ッたく、テメェはジジイかよ》

「私はジジイですとも。まあ、そうなると必然的にグルートもジジイですね」


 おじさまが皮肉?

 珍しいな。


《ハッ、俺はまだまだ若ェよ》

「ふっ、心が体に追いつけていないのでは? まあ、私はまだまだ衰えてはいませんがね」

《あァ? 上等だぜ。どちらがまだまだ若いか、勝負しようぜ》

「ええ。この件が終わったらやりましょうか」


 おお!

 直接対決か!?

 どちらが強いのかは俺も気になる!


《いいぜェ。ンならサッサとこの問題を片付けちまうか》


 グルートさんの声は気のせいかいつもよりやる気に満ちている気がする。

 すげー頼もしいな。

 格好いいしな。


《あのー、僕も念話が通じないってところまではわかったんですけど。それで、どうするんですか?》


 俺も今やこのナワバリの用心棒の一人だ。

 このナワバリの異変は見過ごせない。

 この一週間で、ナワバリにも愛着が湧いてきたしな。


 ……おじさまとグルートさんがいるこのナワバリで、俺が必要かって言われると微妙なんだけどね。

 それは言っちゃいかんよ。


「具体的には……待ち、ですね」

《待ち?》


 俺の疑問を、スカルおじさまが説明してくれる。


「ええ。本当なら我々二人でエルフの森に行き、さっさと解決してきたいのですがね。森までは少し距離があるせいで、我々が留守の間にナワバリに何かがあっても対応できません」


 おじさまは椅子に座ったまま丁寧に話していく。


「とはいえ、ルルティーネが率いるエルフ達が森の結界に逃げ込む程の相手。私達のどちらかが加勢しただけで形勢が覆るとは限りません」

《ルルティーネってのはエルフの女王のことだ。頭の固い奴だが……実力は確かだ。怪我か病気でもない限り、そこらの雑魚相手に結界を張るなんてことはしねェはずだ》


 おじさまの説明に、すかさずグルートさんが補足する。

 やっぱりさすがのコンビネーションだね。


《なるほど。情報が足りなさすぎて、動くに動けないので、あのエルフ少女から何らかの情報が手に入るまで待つと》

「そうなりますね。少々もどかしいですが、今の我々には待つことしかできません」


 そう言ってため息をつくおじさまは少々どころか、すごくもどかしそうだ。

 友人の危機……だもんな。

 前世の俺は友人なんていなかったけど。

 別にコミュ障ってわけじゃないんだけどね。


《まァ、あいつのことだ。ヤベェことにはならないだろ》


 グルートさんがそう言う。

 楽観的……なわけじゃないな。

 信頼。

 圧倒的な、信頼だ。


「まぁ、それもそう───」


 おじさまが途中で言葉を切る。

 更に段々と、眉間に皺を寄せていった。


《どうしたァ? また河童が骸骨どもを誑かしたかァ?》


 グルートさんの言葉におじさまは皺を解き、目を閉じてフーッと息を吐く。


「……カカカ。喜びなさい、グルート。問題を解決するまで決着を待つ必要がなくなりましたよ」

《あァ?》



「見回りの眷族達が、やられました。

 敵さんの──お出ましです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ