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第15話 キノコ狩り!(前)

10000pvあざす!

 おじさまのナワバリに来てから、一週間が過ぎようとしていた。

 

 時刻は早朝。

 俺は心地の良い風と陽気を浴びながら、ナワバリ内で見回りという名の散歩をしていく。  


 おじさまのナワバリは、山に囲まれた緑地だ。


 緑が生い茂る中、誰かに踏まれ踏まれて出来た獣道。

 おじさまハウスの近くから、クネクネとした細い獣道を辿っていけば、やがて開けた空間に出る。


「おやぁ、ダル君かい? 今日も早いねぇ」

「ギャルルッ!」


 毎日の日課となったこの散歩のおかげで、すっかり顔なじみになったゴブリンのおばあさんと挨拶を交わす。


 そう、ここはゴブリン村だ。


 村といっても、家の数は二桁に上らない程度なんだけどね。

 ゴブリンというともっと繁殖しまくっているイメージだったのだが、それは少し違うらしい。

 

 木々で作られた家と、何かの畑がまばらに立っている村を気ままに歩いていく。

 早朝だからか、静まりかえっている村の様子はあの夜とは全くの別物だった。


 こういうのどかな雰囲気は好きだ。

 綺麗に澄んだ空気が鼻孔をくすぐる。


 角を曲がって井戸広場に出てみると、若者がふわぁと欠伸をしながら水を汲もうとしていた。

 ゆっくりと近づいていくと、こちらに気づき、声をかけてきた。


「やあ、おはようダル」

「ギャロルッ!」

「この前のは美味かったぜー」

「ギャルル」


 顔見知りだ。

 実はこの前のグルートさんとの狩りの後、仕留めすぎた獲物を処理するために、この村で焼肉祭りをしたのだ。

 ナワバリ中からおじさまの庇護下にあるモンスター達が集まってきて、あの夜は楽しかったなぁ。

 まぁその時、仲良くなった人が何人かいるんだよね。

 ちなみに、グルートさんの脳内の呼び方は変えた。ライオンさんってなんか可愛いじゃん。

 それは違うと思うんだよね。


 っと、水汲みでも手伝っていくか。


 【水魔法】構築開始。

 『ウォーターボール』

 

 超低速度になるように構築した四つの水弾を、若者ゴブリンの足元にある四つのバケツめがけて射出する。

 狙いは外れず、四つのバケツが満タンになった。


「おー。ダル、ありがとうなあ」

「ギャララ」

 

 ふっ、礼はいらないぜ。

 俺は踵を返してそこから立ち去る。


 バケツ運ぶの手伝ってやれよって思ったかもしれないけど、あいつはゴブリンだ。

 能力値的にも結構な力持ちだし、なんの問題もない。


 試しに振り返ってみると、あいつは六つの水バケツを持ちながらも、鼻歌を歌いながら軽々とスキップしていた。


 ほらな。

 心配するだけ無駄なんだよ。

 さて、今日は湖の方まで行ってみようかな。

 

 そんなことを考えていると、背中に何かの温もりが。

 首を曲げて振り返ってみると、緑の幼女がいた。

 

「ミミズさん、捕まえた!」


 エミネルちゃんが俺に抱きつきながら満面の笑みを浮かべる。


 やばい、可愛い。

 可愛いんだけどさ……。

 そこ完全に死角なんですけど。

 俺の手足じゃ全く届かないよ、そこ。


 体を捻ったりもしてみたものの、案の定エミネルは離れなかった。


「あはは! たのし!」


 楽しんでいるだと!?

 ぐぬぬ。

 幼女の癖にやりおるな。

 

「そうだ! ミミズさん、一緒にキノコ取りに行こうよ!」


 エミネルの提案に、一旦動きを止める。

 ……キノコ?


「あのね、山の方にたっくさんキノコがあってね。今からそれを取りに行くんだー! あ、お母さん達には秘密だよー」


 なるほどなるほど。

 エミネルちゃんはお母さんを喜ばせるために、村の外にキノコを取りに行くと。

 

 ついて行くしかあるまい。


 ……万が一のことがあるかもしれないし。

 うん、そうだよな。

 ついて行くべきだよな。

 そう、護衛役が必要だよね。


 別にキノコが食べたいからってわけじゃないよ?

 多分。


 そうと決まれば、『思念伝達』発動!

 オッケーという意志を伝える。


 この『思念伝達』は、『念話』とは違い、簡単なことしか伝えられないのだ。

 単語レベルでしか伝えられない。

 その上、精神的マインドを大量に食うというクソみたいなスペックである。

 早く『念話』が欲しいぜ。


「じゃあさっそく、いこー!」


 俺の背中に乗ったまま、エミネルちゃんが朗らかに言った。

 


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 

 二人で道なき道を歩き続けていると、やがて木々が鬱蒼とし始めた。

 太陽の日差しが遮られ、奥に進むごとに段々と薄暗くなっていく。

 倒木なんかも目立ち始め、如何にもといった雰囲気だ。


 ちなみにここまでの道程では、他のモンスターとは出会っていない。

 当たり前だ。

 

 グルートさんが発動していたであろう『威圧』の下位互換である『威嚇』を常時発動しているのだから。


 この技能は、なんか殺気みたいなの出して、近づいてくんなよ!ってやる奴で、俺より弱いモンスターは殆ど寄ってこなくなる。

 なぜかエミネルには全然効かなくて、効果ないのかなって思ったけど、グルートさんの威圧で慣れてるらしい。

 説得する手間が省けてよかった。


 あとは、『魔力感知』も常時発動してるからね。

 強そうな奴がいたら遠回りしてやり過ごす。

 まあ、おじさまのナワバリ内でそこまで強い奴はいないと思うんだけどね。

 いたとしてもおじさまの庇護下に入ってるだろうし。

 

 この両技能による完璧な布陣よ。

 クックック、俺のキノコ狩りの邪魔はさせんよ。

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