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第14話 魔道入門!

《グルートさん……ショボくないですか?》

《オ、オメェ……随分とはっきり言いやがるなァ……》


 ライオンさんの顔が引きつる。


 だがそんなことは知ったことではない。

 全然ステイタス上がってないんですけど。

 進化ボーナスより少ないよ。


「ダル殿、それでいいのですよ。本来、“寄生”での能力値ボーナスなど、ないようなものなのですから。ダル殿のもう一つの寄生先が異常なのです」


 スカルおじさまはそう言うと、ソファーのような形に削られている岩に座った。

 どこから取り出したのか珈琲を、これまたどこから取り出したのか真っ白なコーヒーカップに注ぎ始めている。


 さすがおじさま……。

 こんな洞窟でも超絶優雅空間を構築していらっしゃる……!!!


「“寄生”での実質的な利点は他にあります」

《熟練度と経験値の獲得、だなァ》


 〔スキル獲得 【統率者】 Lv1〕

 〔熟練度上昇 『思念伝達』 1/30→2/30〕


 おお、ライオンさんが言った傍から貰えたよ。

 字的に念話の下位互換かな?


「まあ、他にもありますが……。今回重要なのはそこです」


 おじさまが説明を続ける。


「まぁつまり、グルートが魔法系スキルを使えば」

《僕も魔法系スキルを覚えられる、と》

「そういうことです。魔法の場合は少しコツがあるので、そこは直接的な指導が必要ですがね」


 おじさまが、よく出来ましたとばかりにニッコリと微笑んだ。

 くぅー、ハンサムスマイルありがとうございます!!!


 ん、待てよ。

 ってことは、グルートさんの持ってる属性の魔法しか使えないんじゃないのか?

 どんな属性があるのかは知らないけど。


《グルートさんって、どんな属性の魔法を使うんですか?》

《あァ? んなの決まってんだろ? オレは“業炎の暴君”だぜ?》


 うわっ、羨ましい……。

 まあでも、業炎ってことは。


《炎系ですか?》

《いや、【波濤魔法】を持ってるぜ。水魔法の最上位魔法よ》


 ……は?

 名前詐欺かよ。

 そんな俺の冷たい視線も意に解せず、ライオンさんは喋り続ける。


《あとは【灼熱魔法】だな。生憎だけど炎系は持ってないんだよなァ》


 なんだ。

 それなら詐欺ってわけではないかな。

 あれ? 

 でも、灼熱魔法は炎系じゃないのか?

 ……聞いてみるか。


《【灼熱魔法】は炎系じゃないんですか?》

《何言ってんだオメェ。【灼熱魔法】は【熱魔法】の最上位魔法だぞ? 熱いところしか共通点がねェよ》


 ふぁっ、よくわからんな。

 とにかく【熱魔法】は炎系じゃないのか。

 覚えておこう。


《んじゃ、狩りにでもにいくかァ。付いてこい》


 ライオンさんが好戦的な笑みを浮かべてそう言い、その巨大な体躯を持ち上げた。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ──俺はもしかしたら、天才かもしれない。



 ライオンさんと一緒に、ナワバリの外で狩りをしていたんだけど──ヤバい。

 何がヤバいって、魔法系スキルの上がりようがヤバい。

 

 まだ狩りを始めてから一時間も経ってないのに、【熱魔法】はいつの間にか【焦熱魔法】になってたし、【水魔法】のSLvは何故かもう7になってた。

 気づけば【魔道】なんてスキルも手に入れてるし、もうほんと意味わからんがな。


 ライオンさんに聞いてみても、彼は首を傾げるだけだ。

 若い頃のライオンさんは、何ヶ月もかけて【焦熱魔法】を習得したらしい。

 【魔道】だって、本来はもっと長い時間、それこそ何年もかけて習得する物なんだとか。


 これが転生チートという奴なのだろうか。

 嬉しいんだけど、なんだかすごく不安だ。

 実際、これが転生チートなんだとしたら、歴史に名を残してるような転生者はもっといるでしょ。   

 

 えーやだやだ。

 面倒くさいことに巻き込まれてる気がする……。


《おいダル、また出てきたぜェ》


 重いため息をついていた俺は、ライオンさんの呼びかけに『魔力感知』を発動する。

 十二時の方向から疾走してくる魔力、距離は約100メートル。

 数は……三か。

 この方向だと、丁度森から出てくる感じかな。


 歩き続ける俺とは逆に、ライオンさんは少し後ろへと下がる。

 ライオンさんは万が一というときのための保険だ。

 戦闘は基本的に俺ひとり。

 

 まずはっと。

 【焦熱魔法】発動。

 焦熱魔法は熱魔法の完全な上位互換。

 火力そのものの上昇に加えて、ただなんとなく加えるだけだった熱に指向性を持たせるいう物だ。


 これで、今出せる最大火力で目の前の地面を帯状の結界を作るように加熱していく。

 ライオンさんの使っていた灼熱魔法は岩石もモンスターも融解させていたが、俺にはそんな火力は出せない。

 だが、隙を作るのならこの火力でも十分だ。


 やがて、目の前の木々の隙間から飛び出してきたのは、三匹のヒョウ。

 黄色い肢体をしならせながら、大地を蹴り、俺をその牙で刺し殺さんとやってくる。


 ──が、次の瞬間。


 後一歩と踏み込んだ奴らは、まんまと俺の“焦熱結界”に足を焼かれ、三匹とも動きを崩した。 


 そこに。


 『ウォーターカッター』!!!


 予め構築していた三つの水圧の斬撃を叩き込む。

 首を切り裂かれたヒョウ達は、赤黒い血を噴出しながらあっけなくその場に崩れ落ちた。


 〔熟練度上昇 『ウォーターカッター』 17/30→18/30〕

 〔熟練度上昇 『並列構築』 3/10→4/10〕


 あのヒョウ達、俺の二倍近い体長だったんだけどな。

 多分、平均能力値も俺より高かったんじゃないかな。

 ……やっぱり魔法ってすごいわ。

 楽しいし。

 ヒャハーだわ。

 戦闘狂になりそう。



 ──その後も俺達は順調に狩りを続け、仕留めすぎた大量の獲物を運ぶのに苦労し、生態系をどうのこうのとおじさまに叱られたのだった。

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