第10話 骸骨紳士と
2章開始です
「おお、目が覚めましたか」
目を覚ますと、そんな声が聞こえてきた。
ここは……?
どこだろう……?
「ここは私の家ですよ。森で倒れているあなたを見つけ、運んできたのです」
そうか……俺は……。
「いや、ここまで運ぶのは中々大変でしたよ。
やはり私も年でしてね」
俺は寝かされているベッドから起き上がり、お礼を言おうとして──
隣にいた骸骨と、目が合った。
「おやおや、まだ無理をしてはいけませんよ。
これを、暖かいスープです」
俺は目を見開き、絶叫しようとして──声が出ないことに気づき、ブクブクと泡を吹いて気絶したのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
いや、うん。
ほんとすみません。
「カカカカカ、お気になさらなくても大丈夫ですよ。
よくあることなので」
骨を震えさせて快活に笑う骸骨さん。
突然、骸骨さんの笑いが突然止まったかと思うと、不思議そうな顔をしてこちらを見て、合点がいったというように手を打った。
「そういえば、まだ私の名前を教えていませんでしたね。私はスカル・ラストポーンといいます」
スカルさん、覚えやすい名前ですね。
「あなたの名前は?」
……ダルっていいます。
「ほう、珍しい名前ですな」
そう言って珈琲らしき何かを啜るスカルおじさま。
真っ黒のスーツに身を包んだおじさまは、紳士といっても差し支えないだろう。
意識を取り戻した俺は、スカルおじさまと会話していた。
そう、会話である。
ん?
お前はしゃべれないだろって?
ふふふふふ、貴様は常識に囚われすぎだな。
ここは異世界。
しかも『ステイタス』とかいう謎要素が存在する世界だ。
なんとおじさまは【読心術】というスキルを持っているらしく、俺の心を読むことで、会話が成立しているのだ。
おじさますげーよ。
戦闘なんかでも利用できるよね、すごすぎる。
「いや、そうでもありませんよ。
ところでダル殿、あなたはどこから来たのですか?」
きた。
テンプレだよね、これ。
なんて答えればいいのかね。
まさか別の世界から来たなんて言えないし。
……あっ。
「別の世界ですか……。“転移者”という奴ですかな?」
穏やかな微笑を浮かべたまま問い掛けてくるおじさま。
やはり女殺しだ。
骸骨だけど。
「いえ、私も話には聞いていましたが、実際に会うのは初めてでしてね」
え、話には聞いていた……?
あの、転生者って結構いるの、いるんですか?
「カカカ、心の中でも敬語を使う必要はありませんよ」
いや、さすがにそれは……。
それで、転生者って結構多かったりするのですか?
「私の知っているのは“転移者”ですが……。稀に、途轍もない力を持った人間がどこからともなく現れると。
残念ながら“転生者”というのは知りませんね」
なる程、転生者はあんまりいないのか。
……いや、違うな。
転生者は転移者と違い、異世界から来たなどと明言する必要はないもんな。
まあでも、転移者はいるのか。
その人達に会いに行くのがいいのかな?
俺が一人でウンウン唸っていると、じっと此方を見ていたスカルさんが口を開いた。
「……カカカ、どうやらあなたは悪い人ではなさそうですね」
あ、すいません。
思考に集中してしまって……。
「いえ、いいのですよ。これからの方針を考えていたのでしょう? それが決まるまでは、この家にいても構いませんよ」
いや、そんな、これ以上お世話になるなんて、とんでもないです。
「ふむ、それならば滞在する間、私の手伝いをするというのはどうでしょうか?」
手伝い、ですか?
「ええ。実はここら辺一帯は私のナワバリでしてね、用心棒のようなことをしているのですよ」
おじさまは一旦言葉を切り、珈琲を啜る。
俺にも珈琲は出されてるけど、飲んでいない、というかこの体では飲めないので、黙って次の言葉を待った。
「実は、あなたが倒れていた森も私のナワバリでして、あるゴブリンが誰かが倒れていると教えてくれたので、私が向かったのです」
まじかよ。
ほんとありがとうございますだよ。
いまだにあんなところで気絶していたと考えるとゾッとする。
そのゴブリンさんには後でお礼を言いに行かないとだな。
「最近は私の手が回らないことも増えてきてまして……。
滞在する間、手伝っては頂けませんかね?」
ふむ、これこそwinwinという奴だろう。
用心棒というのは少し怖いが、多分このおじさますげー強いだろうし、なんとかなると思うんだよね。
あの巨龍にはさすがに勝てないとは思うけど、あんなのがゴロゴロ至らたまったもんじゃないし、大丈夫だと思う。
──勿論答えは、決まっていた。
是非、よろしくお願いします!
……いや、“寄生”したいだなんてそんな下心はないですよ? ほんとですよ?
1章を少し改稿しました。
ミスを直しただけなので大筋に変化はありません。




