第9話 カラカラカラ
その日は朝から雨が降っていた。
6時間目の授業中のことである。僕は急にお腹が痛くなり、先生の許可の下トイレへ行った。
授業中のため廊下は静まり返っていた。トイレに入った僕は2つある個室の内、手前の個室へと入った。
僕が個室に入ってしばらくすると、カラカラカラ。奥の個室からトイレットペーパーを回す音が聞こえてきた。カラカラカラ、カラカラカラ、カラカラカラ。音はまだ続いている。
どんだけ紙を使うんだと思っていた僕は、あることを思い出す。先ほどトイレに入ったとき、奥の個室は開いていた。後から人が入った気配もなかった。
すると、奥の個室には誰もいないはずだった。なのにトイレットペーパーは尚もカラカラカラと回っている。窓から風が入り込んでいるとも考えられるが、今日はそこまで強い風は吹いていない。
――じゃぁ一体、奥の個室には何がいるんだ!
カラカラカラ、カラカラカラ。音はまだ聞こえる。背筋に悪寒が走る。
そしてふいに、背後に視線を感じた。奥の個室の上からこちらを見下ろす、そんな視線を・・・。
僕は用を足すのも忘れ、トイレから飛び出し、一目散に教室へと駆け込んだ。そんな僕を見てクラスは笑いに包まれたが、今はそんなことはどうでもよかった。
それから僕は、二度と授業中にはトイレに行かなくなった。