表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恐怖確率未定  作者: 夢春
壱ノ部
5/19

第5話 菜の花畑の少女

 あれは確か5年前のことである。

 当時私は小学校の教師をしていた。しかしその小学校は小さな田舎にあったので、生徒の人数は少なかった。私が担任を受け持ったクラスにはわずか8人しか生徒がいなかった。


 ある日、私は授業の一環として生徒達と共に春のお花探しに出掛けた。その時、私たちの目に留まったのは向こう一面に咲き誇る菜の花畑だった。あまりの美しさに皆歓声を上げていた。

「ねぇ、せんせい。あのおねぇちゃんはあそこでなにをやってるのかな?」

 すると、菜の花畑を見ていた生徒が私に妙なことを聞いてきた。

 私は生徒が指差す方を見てみるが、そこには誰もいない。

「あのおねぇちゃん、なんだかとてもかなしそうなかおしてるよ」

 さらには菜の花畑を見ていた他の生徒も妙なことを言い出し始める。

 私は菜の花畑を見てみるが、やはりそこには誰もいなかった。

「あっ、おねぇちゃんがこっちにきてだって」

 そう言うやいなや一人の女子生徒が菜の花畑の中へ入っていった。私は他の生徒達にここで待っているよう伝えると、急いでその子を追いかけた。


 女子生徒は菜の花畑の中心辺りまで来ると、そこで立ち止まった。すると突然地面を手で掘り始めた。女子生徒の奇妙な行動に戸惑いながらも何をしているのか尋ねてみた。すると、女子生徒は何かをブツブツと呟き始めた。

「苦しい、息ができない、苦しい、息ができない、苦しい、苦しい、苦しい、苦しい、苦しい――」

 私は全身から血の気が引いた。その声は私が知っている女子生徒の声とまるで別人だったからだ。女子生徒は尚も、壊れた機械のように繰り返し呟いている。

「苦しい、苦しい、苦しい、苦しい、息ができない、苦しい――」

 その時、地面の中に何かが見えた。女子生徒はさらに掘り進める。それはだんだん地面から掘り出され――ギャッ!私は思わず悲鳴を上げてしまった。


 地面から現れたもの。それは――腐った人間の死体だった。


 その死体は、以前よりこの田舎で行方不明になっていた少女の成れの果てだった。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ