第3話 喪服の女
ある日の夜、私は2階の自室から窓の外を覗いてみた。窓の外は雨が降っている。今日1日、こんな天気だった。
私は視線を、闇夜に光る自動販売機に向ける。自室の窓からだと道端に置かれた自販機がよく見えるのだ。
そして、気づいた。自販機の前に女が1人、傘を差さずにポツンと突っ立っている。その女は喪服を着ているみたいだ。
どこかでお葬式でもあったのかな?そう思いながらも、雨の中、傘も差さずにどうしたのかと不思議に感じた。しかし、深く考えても仕方がないと思いその日は寝ることにした。
―次の日の夜
今日も1日雨だった。雨は今もシンシンと降り続けている。
私は今日も自室の窓から外を見た。そして、昨夜と同じ場所に女はいた。昨日と同様、喪服を着ている。やはり傘は差していない。
私はその女を、目を凝らしてジッと観察してみた。自販機の明かりに照らされているため、女の姿はよく見えるのだ。そして、それにより驚くべきことがわかった。女は傘を差していないにも関わらず、濡れている気配がないのだ。
次の瞬間、女がこちらを向いた。私は恐怖で悲鳴を上げてしまった。
こちらを向いた女の両目、そして大きく開かれた口は空洞となっていたのだ。私は叫びカーテンを急いで閉めた。
数分が経過した。私は好奇心に逆らえず、恐る恐るカーテンを開けてみた。
幸いなことに、自販機の前にあの女の姿はなかった。私は深呼吸をした。未だに心臓はドキドキしている。
カーテンをしっかり閉めた私は、今日はもう寝ることにした。そして、毛布をめくって凍りつく。そこには、あの女の顔があったのだ。空洞の目が私をジッと伺っていた。
いつまでも、いつまでも―――。