表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恐怖確率未定  作者: 夢春
弐ノ部
16/19

第16話 友達追加

 彼女とケンカをしたのは、つい先日のことだ。

 きっかけはささいなことだった。しかし、彼女にはどうしてもそれが許せなかったようで、口論の末に走り去ってしまった。

 以降、彼女からの連絡は一切ない。こちらから連絡すれば、あるいは状況が変わるかもしれないが、あいにく僕にそんな勇気はなかった。


「なにやってんだ、僕は」

 

 情けない自分に嫌気がさした。

 その時、ズボンを通して振動が伝わってきた。淡い希望を抱きながらスマホを取り出す。


『レーカさんに友達追加されました』


 一気に脱力し、ベッドに寝転がる。

 天井を見上げていると、再びスマホが震えた。

 またしても「レーカ」というアカウントからだった。

 今度は個人メッセージに通知がきている。

 送られてきたのは一本の動画だった。怪しい動画ではないかと一瞬ためらうが、好奇心から再生を押してしまう。

 映し出されたのは、殺風景な部屋。中央にイスが一脚置かれているだけだ。

 イスにはウエディングドレス姿の女が、画面に背を向けて座っている。

 女は石像のように動かない。

 妙な寒気を覚え、腕をさすった。

 やがて、歌声が聞こえてきた。

 オペラ歌手のような美しい歌声だ。

 僕は自然と歌声に聴き入った。嫌なことや悩みごとが洗い流されていく。あれだけ悩んでいた彼女のことも、どうでもよくなっていた。

 頭が真っ白になる。

 女のウエディングドレスのように。


*  *  *

 女性は目の前の彼を見て、その場へと座り込む。


「ねぇ、なんで?」


 女性は尋ねるが、彼は答えない。


「お願いだから、もう一度わたしの名前を呼んで」


 女性は懇願するが、彼は答えない。


「もう一度やさしく微笑んでよ」


 女性が見つめる中、彼の瞳は焦点を定めていない。


「ごめんね、ごめんね」


 女性は謝り続けるが、彼はそれを拒絶するように体をゆらす。

 どこからか聴こえて来る歌声が、妖しいメロディーを奏でていた。

 

 

 

 

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ