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ヒーロー(恥)

 人類を終わらせる。

 そのための、世界征服を始める。



 数年前に宣言されたそれは、当時は失笑を買ったもの。

 今では、笑えない話。



 特撮などの創作でしか見ることがなかった、化け物という表現が似合うそれが、現実に災厄として降り掛かってくるなんて誰が思うものか。

 銃弾が効かない、ミサイルも効かない、ただの刃物なんて砂糖菓子のように。

 今までの生物というカテゴリーを踏み潰して現れたそられは、当然のように世界を蹂躙していった。


 なんのために。

 なんのためにこんなことをするのか。


 争いという行動の結果として、どうにも利益を産もうとしていないとしか思えなかった。

 ただただ無秩序に破壊と殺戮だけを繰り返していく。

 交渉なんて通じない。

 そうしてあの宣言を思い出すのだ、誰もが笑った最初の言葉を。


 しかし、絶望の影に希望の光は差す。

 ヒーローと呼ばれる異常個体の出現である。


 ヒーローといえば聞こえはいいそれは、言うなれば人間側の化け物。

 それは環境によって。

 それは裏切りによって。


 人類という一つの生き物がウィルスに抵抗するように。

 それらは唐突に出現し始めたのだ――――





 三つの獣の頭を持つ化け物に、昆虫のような外殻をもつヒーローが殴り飛ばされた。

 ケルベロス、そう名付けられている化け物は、両の手で足りない数のヒーローを肉塊に変えている。

 そのカウントが、今まさに一つ増えようとしていた。


 クワガタに似ているヒーロー――仮にクワガタマンと呼ぼう――は、ヒーローと呼ばれる化け物になって日が浅く、戦い方も拙かった。

 元人間のヒーローにはタイプがある。

 変身型と変態型。

 前者は通常は人間で、意思や感情によって体を化け物に変化させることができるもの。

 後者は、変化した肉体が元に戻らないもの。


 クワガタマンは後者の存在であり、隠せば戦わずに生きていけるかもしれない前者と違い、戦うしかなかった。

 それでも、異常な力を得ようとも、いきなり使いこなせることもなく。

 戦う技術も、戦うための、逆境を跳ね返すような強い意思の力も、彼は持っていなかったのだ。

 体が化け物なってしまおうと、恐怖はあるのだ。人間として生きてきた、その人格が確かにそこにある。ただ戦えと言われて、どうして戦っていけようか。

 化け物としての特殊能力も、腕力と外殻による防御力だけ。


 そして今広がるのは絶望である。


 ――俺は終わってしまうのか。

 ――化け物になって、全てから捨てられて。戦うことだけを拾えと要求されて。


 動くこともできず、ケルベルスの足が無造作に振り下ろされようとした時。


 「待てーい!」


 幾人ものヒーローが攻撃しても傷ひとつつかなかった。

 ケルベルスの足が消し飛んだのだ。


 思わぬ攻撃を受けたケルベロスは、即座に再生しながら後ろへ飛ぶ。


 そうして、クワガタマンは、見た。



 変態である。

 いや、クワガタマンは変態型であるが、そいつ――彼はそういう意味の変態ではない。

 蛹が蝶に変わるような意味の変態ではない。


 そう、ヘンタイ、いいや、hentaiと表現すべきだろうか――


 明らかにコロシアイの場にどころか、日常にも相応しくないhentaiが、クワガタマンの前に立っていた。

 ケツを晒して。


 おパンツ様を頭に被り、蝶々の仮面をつけている。

 体には靴下とブラジャーを装備。局部は何故か不思議な光が差し込んでいるため、よく見えない。

 首には『ポチ』と書かれた首輪が光っている。


 「ただ人を殲滅していく悪鬼の所業、許しがたし!」


 ――許しがたいのはお前の格好だ――


 死にかけていたことも忘れて、クワガタマンは頭の中で全力でつっこみを入れた。

 そして、始めて自分がクワガタっぽくなっていることに感謝した。

 これよりはマシだ。そう思ったのだ。

 ケルベロス、敵側の化け物に攻撃が通じたことから、ただの人間ではありえない。

 同じバケモノでなければ、どんなに力が強くても、どんな武器を使っても、傷をつけることはできないのだから。


 「喰らうがいい! パァンツァーレッヴォリュウショーン」


 クワガタマンが初めて自分を認めていた時、決着は着きかけていた。

 いつの間にやらぼろぼろのケルベロスに、hentaiが両手を広げると、不思議な光が差している部分からあらゆるパンツが飛び出したのだ。

 男女、用途、サイズ、色。その全てを含んだソレは、一直線にケルベロスの各口へと飛び込んでいく。


 ああ。パンツァーって、パンツか。


 死んだような目になりつつも現実逃避気味にクワガタマンがその考えに至った時、ケルベロスは内側から破裂した。


 「成敗! これにて終了である! セイギは勝つ!」


 花火のように詰められたパンツが咲き乱れるそれを見ながら、クワガタマンは思った。


 ――ないわー。あれはないわー。




 世界は危機に瀕している。

 至るところにやってくる化け物に、人類は恐怖している。


 それでもまだ負けては居ない。

 ヒーローたちは負けては居ない。


 光は差すのだ。




 クワガタマンはその後、悟りを開いたのか力を増し、十本の指に入るほどの実力を得た。

 そして、彼を助けたHENTAIは、後に唯一のHENTAI型ヒーローと呼ばれ、世界を救った重要な役目を負ったヒーローの一人として活躍したのである。


 特に活躍したヒーローは、平和になった後に像が建ったり特撮やアニメになったりもしたが、彼はだいぶ改変されてしまった。

 『ふぅ、セイギといえど、いや、セイギだからこそ平和には勝てなかったよ』彼はそう語っている。

 それを聞いた瞬間に、クワガタマンは冷静にレバーブローを放ったのであった。


 おわれ



羞恥マン

HENTAI型

恥ずかしさを力に変える(自他を問わない)


つまり……恥ずかしければ恥ずかしいほど強くなる……!!


Q.なんでこんなん書いちゃったの?

A.えっと、くだらなくてごめんなさい。思いついちゃって……?

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