左足
……あれ?
時計を見て見ると、長針と短針とが六時五十四分を差している。
何か、半端な時間だなぁ。後一分で切りの良い所なのに。まぁ、別にどうでもいいけど。
部活が終わり、只今自転車置き場へ向かうところ。
そこでふと、昨日友人が話したことを思い出した。
『午後七時丁度、右足が少し重く感じた。
気のせいか、と男は気にせずに歩き続けるのだけれど、足はだんだん重くなっていく。
遂に歩けなく成程重くなると、何かに足を引っ張られるような感触がしたらしい。
それで、足の重みが消えたらしいんだけど、足を見てみたら――。
うん? ああ、これでおしまいだよ。続きは知らない。
えー、そう言われてもなぁ。自分で試してみたら?
いやいや、そいつに会うのなんて簡単だよ。条件を満たしていればいい。
例えば、メリーさんは携帯電話がないと成立しない。そう言うことなんだよ。
わからないかなぁ。まぁいいよ、別に。
因みに、そいつと会う条件はこの話を知っていること。
え? なら僕は会ったかって? いや、そんなことはないよ。
あぁ、言い忘れてた。そいと会うにはもう一つ条件があるんだよ。それは――』
――午後七時に右足を前に出すこと。
携帯電話を取り出して開く。そこには『18:59』の文字。
七時になるまで待とうか、と一瞬思ったけど携帯を閉じる。
そもそも、そんなことが本当に起きるはずはないじゃないか。バカバカしい。
自転車の籠に荷物を置いて、鍵をはずす。
いつも一緒に帰っている友人は、今日は塾だからと先に帰った。
まったく、白状な奴である。
サドルに腰かけ、ペダルを踏む。初速の為に力を入れると、左足に違和感を感じた。
はっと気づき、携帯電話を取り出すと、『19:00』と表記されている。
あれ? 今、どっちの足が前だったっけ?
……いや、変なことを聞いたからだ。だから、左足が少し重く感じるだけだ。
そう気を取り直し、再び足に力を込めた。
おかしい。足が重くなってくる。
いや、いやいや、そんなはずはない。ちょっと神経質になっているだけだ。
けれど、足は少しずつ重くなってくる。
家のマンションに着いた。
あと少し、あと少し。
自分に言い聞かせて、駐輪所に止めた自転車に鍵もかけずに家へ向かう。
あぁ、足が重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。重い。
何かに引っ張られ――
何か硬いものの上に横になっている。すぐにコンクリートだと気付いた。どうやら、倒れていたらしい。
目を開けると、辺りが赤く染まっていた。何だろう?
夕日かな、と思って空を見るが、とっくに日は沈んで月明かりが差している。
そう言えば、左足の違和感がない。
そう思って左足に目を
向 け
足
が
も
げ
血
が
が
が
が
が
流
……あれ?
時計を見て見ると、長針と短針とが六時五十五分を差している。
何か、何かなぁ。切りの良いと言えば良いんだけど、ちょっと微妙な時間。後ちょっとで七時ジャストなのに。まぁ、別にどうでもいいけど。
部活が終わり、只今自転車置き場へ向かうところ。
そこでふと、昨日友人が話したことを思い出した――――――