めくるめく、規模の思考。
ノスタルジックな早苗さんの頭の中を覗いてみましょう。
早苗は空を飛んでいた。
まぁ、それ自体は大した事ではない。人だってコツさえ掴めば飛べる訳だし。ただちょっと里に買い物に向かっているところである。しかし、気がついたらじっと空を見上げていた。外の世界ではこの空の上には宇宙が拡がっていた。幻想郷はどうなんだろうか。宇宙が同じように拡がっているのなら、地球と場所は違うのか。そんなことを考えていた。世の中は案外広いものだし、結構遠くにあるかもしれない。
ふと、下が少しざわついていることに気がついた。居たのは妖精で探し物がなんだかんだと喚いていた。まぁ、妖精だからいいかと思い目的を思い出す。だいぶ飛ぶのも上手になったなぁとか思いながら里へと向かった。
私は里での買い物を終えて帰路に就こうとしていた。その時前方に見覚えのある顔が出てきた。阿求だ。別に彼女はなんてことはない……。でもあの紅葉のペンダント、見覚えが…。
そんなことを考えていたら彼女の前で立ち止まっていた。
「あの、早苗さん?」
「ん?あぁ、そのペンダントどうしたのかな、って」
「これはうちの庭に落ちてたんですよ。誰のか分からないけど、砂を落としたら綺麗だったしいいかなって」
「そう、似合ってるよ。ただ、少し見覚えがあったような気がしただけ。」
そのあと少し話をしてから阿求とは別れた。
帰りは散歩を兼ねて少し道を変えて、山を通ってみた。飛んでるけど。声を掛けられたのはその時である。
「おーい、早苗ー」
「?」
声は山の方から聞こえた様に思ったんだけど、姿が見えない。いや、よく見ると誰かが樹の上で手を振っていた。彼女は天狗の衣装に身を包んだ白狼天狗だった。
「どうしたのよ、椛」
「あ、うん。その探し物をしてるんだけど」
「探し物?」
どうやら彼女は文に貰った紅葉の形のペンダントを失くしてしまい、探している様だった。森は紅葉していて、見つけるのが難しいという。私も着けているところを何度か見たけどよく似合っていた。
そしてそれはさっき阿求が着けていたものだった。
「あぁ、あのペンダントはさっき阿求が庭で拾ったとかで身につけていたわよ」
「ほんと!?その人はどこに?」
「さっきは里の寺子屋のそばの花屋の前で女の子と話してたけど?」
「ありがとう、いってくるよ!」
猛スピードで飛んで行ってしまった。そんなに速く飛んだら着いた時に阿求は驚いてしまうんじゃないかとも思ったけど、もう姿も見えないしいいかな。
世の中は案外狭いものだ。だから外の世界も案外近くにあるのかも知れない。博霊神社から行けるぐらいだし。外と同じ星座もみえるし。
Fin
早苗さんがちょっとした日常から外に思いはせたりしました。
たまには日常的なものもいいかと。