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田舎育ちの俺が王都に出てきたら、守りたい想いが強さになった  作者: 蒼月あおい
第一章

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第14話 情報収集と準備

 朝の柔らかな日差しが王都に差し込み、石畳の道を行き交う人々の活気が今日も街を満たしていた。

 アルスはいつものようにギルドへ足を運ぶ。まだ朝早い時間だったが、冒険者たちが集まりはじめ、掲示板の前には小さな人だかりができていた。


 受付に立つリナの姿を見つけ、アルスは軽く手を挙げる。

「おはようございます、リナさん」

「おはよう、アルスくん。今日も元気そうね」


 微笑むリナの声は朝の空気によく響く。

「今日は依頼を受ける前に、街を回って装備や道具を整えようと思います」

「うん、それは大切なことね。装備や薬は命に直結するものだから、しっかり選んで。……それと、王都には意外と便利な店も多いの。よく見て回るといいわ」


 助言を受け、アルスは頷いた。

「ありがとうございます。戻ったらまた報告します」

「ええ。無理せず、少しずつ慣れていけばいいのよ」


 リナの笑顔に背を押され、アルスはギルドを後にした。


 まず訪れたのは武具店だった。分厚い木の扉を押し開けると、鉄と油の匂いが鼻をつく。

 店内の壁には大小さまざまな剣や槍、盾、革鎧や鎖帷子がずらりと並び、客たちが店主と値段や性能について話し込んでいた。


 アルスはまだ今の装備を使えると判断していたが、それでも他の冒険者がどんな武具を選んでいるのか観察してみる。

 軽装の冒険者は短剣や革鎧を好み、重装の者は大剣や分厚い鎧を手に取っていた。


「いずれは自分も……」

 そんな思いが胸をよぎるが、今はまだ時期尚早だとアルスは自分を戒める。


 次に訪れたのは道具屋。棚には松明や縄、保存食、火打ち石、そして大小の薬瓶が整然と並んでいた。

「こちらは回復薬。軽い切り傷や疲労ならこれ一本で癒せるよ」


 店主の説明に耳を傾けながら、アルスは薬瓶を手に取る。赤みを帯びた液体が光に揺れ、頼もしさを感じさせる。だが同時に値札を見て、思わず眉をひそめた。

(……安くはないな)


 宿の一泊分に近い価格だ。頻繁に使えばすぐに所持金が尽きてしまうだろう。

 それでも命を守るための投資だと理解し、アルスは小瓶を一本だけ購入した。


 さらに薬草屋にも足を運んだ。乾燥させた薬草が吊るされ、店内には独特の香りが漂っている。

 傷の止血に使える葉、毒抜きの根、体力回復に効果のある実――冒険者が知っておくべき知識がそこには詰まっていた。


 店主の老女は気さくで、アルスに使い方や注意点を丁寧に教えてくれる。

「薬草は知識があれば買わずに森で採れる。ただし、似ている毒草も多いから、慣れるまでは安易に口にしてはならんよ」

「ありがとうございます。肝に銘じます」


 礼を言って店を出る頃には、アルスの頭の中には新しい情報がずっしりと詰め込まれていた。



 陽が傾き始めるころ、王都の大通りを歩いていたアルスは、人波の中にふと妙な気配を感じた。


 視線を巡らせると、人々の間に一瞬だけ、フードを深く被った人物の姿が見えた。

 背筋が伸び、歩みに無駄がなく、まるで周囲に溶け込みながらも異質な存在感を放っている。


(……また、あの人だ)


 以前にも何度か見かけた人物。偶然とは思えない頻度で目に入る。

 だがこちらを意識しているのかどうかも分からない。目が合ったかと思えば、次の瞬間には人混みに消えていた。


 アルスは小さく息を吐く。

(ただ者じゃないのは確かだ。けれど、今は……関わる時じゃない)


 そう心に留め、気持ちを切り替えて歩を進めた。



 夕暮れ、ギルドへ戻るとリナがカウンターに立っていた。

「おかえりなさい、アルスくん。どうだった?」

「ええ、装備や道具を少し整えました。薬草や回復薬のことも学べました」


 アルスが報告すると、リナは満足そうに頷いた。

「それなら安心ね。知識は力になるわ。きっとこれから役に立つはず」

「はい。今日は良い経験になりました」


 短いやりとりだったが、リナの言葉は温かく、アルスの胸に染みる。

 こうして一日を終えたアルスは、また一歩、冒険者として成長する手応えを覚えていた。

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