プロローグ
アレンディア大陸――広くて多様な地形を持つ大陸だ。
北には険しい雪山が連なり、東には果てしない砂漠、南には熱帯林が広がる。
そして中央には、肥沃な平原がのんびりと広がっている。
森や川、湖が点在し、古くから魔法や冒険者文化が根付く土地でもある。
大陸の中心部には、アレンディア大陸を治める古の王都――カレドニアを擁するエルデナ王国がある。
平原と森に囲まれたこの王都は、他の国々とは違う。
静かで穏やかな国だが、その騎士団は大陸随一の力を誇っていた。
この大陸では、国や街はダンジョンを中心に発展してきた。
冒険者や商人が集まり、そこから繁栄していくのだ。
しかし、王都カレドニアは例外だった。
ダンジョンは存在せず、広大な平原と森に囲まれた土地に古くからの王都が築かれ、国の中心として栄えてきたのだ。
平和な国土は村や街の暮らしにも色濃く反映され、冒険者でさえも、ここでは一息つくことができる。
よって多くの冒険者は周辺国に点在し、王都カレドニアにいる冒険者は駆け出しの者が多い――いわば登竜門といったところだ。
王都カレドニアには、石造りの城壁と金色の尖塔、広場や市場が広がる。
冒険者ギルドや商人ギルドもここを拠点に活動し、政治も文化も経済も、この街を中心に回っている。
石畳の街路は大小の通りや広場が入り組み、まるで迷路のようだ。
街道沿いには宿屋や商店が並び、王都を訪れる者は平和な空気に包まれながらも、どこかワクワクする“冒険への期待”を胸に歩くことになる。
王都へと続く街道沿いには、旅人や商人が立ち寄る中継地もある。
その代表がハーベル宿場。
小さな町だが、馬車や旅人が行き交い、情報交換や簡単な買い物もできる便利な場所だ。
周囲の諸国もまた、多様な文化と危険を抱えている。
北の雪山地帯には、厳寒の地で戦士と魔法使いたちが鍛えられるノルフィア王国。
寒さに鍛えられた民は戦闘技術に長け、雪山の険しい地形を拠点に暮らしている。
東の砂漠には、商業と砂漠に適した魔法を誇るカリサ連邦。
広大な砂漠地帯に点在する都市では、強力な魔獣を従える魔獣使いたちがその力を示している。
南の熱帯林には、古代魔法が息づくヴァルティア王国。
濃密な森と湿地の中で、人々は自然と共存しながら生活している。
西の海岸沿いには、海上交易と海賊の脅威が入り混じるオルデン公国。
港町は日々賑わい、商人や冒険者が行き交う。
そして――エルデナ王国は、こうした諸国の中で唯一「平穏」を象徴する場所だ。
だが、平和だからといって、何も起こらないわけではない。
古の王都には未知の遺跡が多く、森の奥にはまだ見ぬ危険が潜む。
冒険者たちの物語は、そんな穏やかな土地からでも静かに始まるのだ。
そして王国の辺境には、小さな農村――ルーナ村がある。
森と川に囲まれた静かな村で、住民たちは助け合い、穏やかな日々を送っている。
村の外れには小さな広場と、生活品や農具を扱うなんでも屋、鍛冶屋、そしてパン屋がある。
そんな平和な農村の畑の一角で、まだ冒険者になることを夢見る青年アルスは、両親の手伝いをしながら今日も暮らしている――
普通で、でもどこか特別な日常を。




