第7話:魔王、襲来。「主様ァァァァァ!」に全力の重すぎ愛
「ドドドドドドドッ!!」
大地が震え、周囲の建物が揺れる。
俺は路地の隅で、全身が硬直していた。
目の前には、まぎれもなくスラ子――いや、もう“スラティア=グレイアーク”、最強の魔王が立っている。
「主様ァァァァァッ!!」
彼女は叫びながら、膝をついて地に頭を擦り付ける。
「お、おい……ちょっと、落ち着けよ……!」
戸惑いながらも俺は近づく。
しかし彼女は立ち上がると、豪華な漆黒の鎧の手で俺の腕を掴んだ。
「主様! あなた様が戻ってきてくれたのですね! 私、ずっと待ってました!」
その表情は、無償の愛で溢れている。
「スラ子……いや、スラティア。1000年経っても変わらず、俺を覚えててくれたんだな」
「はいっ! 主様のためなら、私は世界を征服しても構いませんでした!」
その言葉に、思わず笑ってしまった。
「そ、それは……まあ、ありがとう」
「主様のためなら、この魔王の力すべてを捧げます!」
彼女の目は真剣そのものだ。
俺の腕を強く握り、身を預けてくる。
「……なあ、スラティア。正直、今の俺には何が何だかわからないけど、これから一緒にやっていこうぜ」
「はいっ、主様!!」
その瞬間、俺の胸に熱いものが込み上げてきた。
1000年前の、最弱スライムだった彼女が、世界征服を成し遂げた。
それはまぎれもなく、“俺のスラ子”だった。