④黒い少女
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タイサの全身からは黒い煙が立ち上っていた。
これで四発目。
一発毎に黒は大きくなり、両手の大盾で防いでいる複数の金属とそれを支える腕が軋みとなって
全身から悲鳴を上げる。
「た、隊長!」
背後でエコーが叫ぶ。
「顔を出すな! 触れれば消えてなくなるぞ!」
一呼吸の時間をおかれて五発目がタイサ達を襲う。先程よりも黒の波動は大きく、晴れるまでの時間がさらに長くなる。
「ほぉ、随分と耐えおるわ。これだけ耐えられたのは二百年ぶりだろうか?」
人の背はあるだろう長い背もたれ、金の刺繍がふんだんにあしらわれた領主の椅子の前で立っていたのは、その豪華さを全て反転させるだけの純粋な黒いドレスを纏った少女だった。イリーナよりも背の低い少女の肌は、熟練の職人が作った人形のように白い一方、腰まで届く長い髪、艶のある舞踏上で使われるような靴、ドレスの腰を結ぶ背中の大きなリボン、ネックレスの鎖から中心に光る宝石までその全てが、等しい黒で統一されていた。
少女が77柱が1柱、闇のアスタロッテ。新生派の最後の一人である。
「ザガンはたったの一撃で消えてしもうたが………やはり、貴様が魔の王を名乗っていた事は間違いなさそうじゃな」
身なりに全く似合わない老婆の言葉で話す少女は、からからと年齢にふさわしい高い声と妖麗の女性のような男を誘う表情で笑い出した。
「………何て顔で笑いやがる」
両手の盾を降ろし、タイサとエコーは壇上で笑う少女から目を離せずにいた。
タイサ達がこの謁見の間に足を踏み入れたのは、今から十分前。
それは77柱の1柱である新生派の幹部、ザガンが領主の椅子に座り頬杖をついていたアスタロッテに、魔王派と停戦と和解を提案していた所であった。
タイサ達の姿に、ザガンは一瞬驚いたものの、すぐにタイサ達を指さし今からでも遅くはないと彼女に説いた。
そのザガンを、アスタロッテは指先から出た黒い光で消滅させた。まるで視界に直接引いた墨のような線は一切の妥協を許さず、生ある者の存在を許さず、この世から消し去ったのである。




