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lost19 虚構の歴史、真実の物語  作者: JHST
第八章 それぞれの矜持の為に
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⑨肉も骨も切らせて

 エクセルの報告を耳に入れながら、バイオレットはバールに鋭い視線を向ける。

「力は力に負ける。力を追い求めた者は必ず孤独になります。それは生物として、最も弱い存在なのです」

「王は常に孤独になる者。私にとっての弱さとは、誰かの助けを借りなければ生きられない存在をいう。貴様の弁など、唯の弱者が互いに傷を舐め合う言い訳にしか過ぎぬ」

 バールがバイオレットの目前に瞬時で現れた。

 だがバイオレットは彼女の動きを予測し、頭を振り上げていた。

 大きな音を立てて額同士が激しく衝突する。


「ぐっ!」

 初めてバールが数歩よろめき、後退した。

「………姿は見えなくとも、何度も見せられれば、流石に動こうとする瞬間くらい見えてきますよ」

 自分の額からも一筋の赤い道を作りながら、バイオレットもまたよろける。

「縮地、でしたか。どうやらあれは瞬間移動と表現するよりも、高速移動に近い技のようですね………しかも直線の移動しかできない極めて単純なものです」

 背後に回り込めたのも、複数の縮地を連続しただけに過ぎない。一度の縮地よりも。背後に回った方が僅かだが時間がかかっていた。誤差とも呼べる時間の差。これを彼女は誤差だと決めつけず、技の性質だと見極めた。


「だから何だというのだ。見えなければ、対処のしようがない事に変わりはないぞ!」

 再びバールの姿が消える。

「そうでもありません」

 バイオレットは剣を持ったまま高速で回転を始めた。

 そして、止まる。

「………全周攻撃なら、必ずどこかで当たります」

「馬鹿な………」

 バールの左腕が綺麗な切断面を見せながらゆっくりと床に向かって落ちていく。

 高速で動いていた事が災いし、バイオレットの振る剣の威力だけでも、彼女の自慢の肉体を切断する事に、それ程強い力は要らなかった。

 だが同時に、その威力はバイオレットにも反作用として等しく跳ね返り、彼女の剣が柄の根元から高い音を立てて折れる。


「エクセル、私の体を使って相手の動きを真似てください」『イエス』

 バールの腕とバイオレットの剣が同時に落ちる。

「糞がぁぁぁぁ!」

 絶対的優位だった立場を崩され、バールは残った右腕で拳を作り、純粋に殴りにかかった。

 あらゆるものを砕くバールの拳に対し、バイオレットもエクセルに体を預けた事で、全く同じ動きで左腕で拳を作り、純粋に殴りにかかった。

 二人の拳が、寸分の狂いなく相打つ。

 そして金属と拳が砕ける音を共に響かせ、腕が砕ける音が体内で何度も跳ね返った。

「うぐぅぁぁぁぁ!」

「こ………これで両手は使い物に………なりませんね」

 バールは自分の砕けた自慢の拳や別々に折れ曲がった指を見て叫び、バイオレットは砕けた拳だけでなく、肘から突き出した大きな骨から大量の血を噴き出しながら、青白い顔のまま笑みを作る。

 笑ったままのバイオレットの顔をバールが右足で蹴り上げた。

 彼女の蹴りは彼女の首の骨を折り、頭蓋骨を破砕させる威力があったはずであった。だが、砕けたのは蹴りを受けていない騎士の籠手のみに留まる。


『籠手に込められていたリザレクションが尽きました』


「………あと三回」

 バイオレットは蹴られた顔を無理矢理戻すと、口元から血を流しながらバールの放った足とは逆の左足を力の限り踏みつける。

「はっ! その程度の力で―――」「十二番を解放」

 怒りと余裕の笑みが混ざった顔のバールの顔が引きつり、バイオレットと共に爆発に巻き込まれた。

 二人が、爆心地と対照的な位置にある壁に叩き付けられる。

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