⑨白対蒼
「蛮族め………僕と相打ち覚悟とはっ。だけど!」
その時、アイレンの視界が暗くなる。足元の影がなくなり、代わりに大きな影が彼の上を覆った。
それは全身からタネガシマを生やしたバルバトスであった。
「ミゴトダ。アモン」
「こ、こいつら!」
アイレンが背後を振り返り、眉間にしわを寄せる。
剣の威力がなまじ桁外れの為に、三人が散開した事が反って裏目となった。リーザとファルケンがそれに気付いて仲間の救援に向かうが、それでも密着に成功したバルバトスの方が二手早い。
アイレンは咄嗟に剣に力を込めると、即座に次の力を解放させた。
その瞬間、アイレンの後頭部に強い衝撃が入る。
「ぐっ!」
「マエダケトハ、オモワナイコトダ」
アイレンが振り向くと、そこには息絶えたはずのアモンの右足が振り上げられていた。
「そんな馬鹿な! あいつは死んで………しまっ―――」
アモンの下半身には銀色の金属が残されていた。
「コレガ、ワタシタチノ、イジダ!」
バルバトスに背中を見せたアイレンに向け、バルバトスは全身のタネガシマをほぼゼロ距離でアイレンの頭に集中させて解き放つ。連続した発砲音に合わせて白煙が舞い上がり、アイレンの上半身が見えなくなる程であった。
「だ、断罪の蒼剣! 第三の裁き!」
一瞬で白煙がかき消され、アイレンを中心に半球状の中で重力を無視した落雷が無数に発生する。落雷はまるで舞踏ようにうねり合い、範囲内にあるものを消滅させていく。
放電後、額から大量の血液を流すアイレスが地面に突き刺していた剣を抜くと、そこには何も残ってはなかった。
「こ、こいつら………僕だけを狙―――」
赤く染まった視線を上げると、そこには目を大きくさせ、右手の斧を振り下ろすシドリーの姿があった。
アイレンの首が胴体から離れる。
「アイレン!」
「こいつら………一人に攻撃を集中させて」
二手の遅れが仲間を死なせる原因となった。リーザとファルケンは僅か数秒の遅れが数分の遅れのように感じつつも、シドリーの左右に追いつき、その間合いに入り込んで放電した剣を振り上げた。
「「断罪の蒼剣! 第二の裁き!」」
同時に放たれる紫電の刀身。
「ガキ共がぁ! 魔王軍を! 私を舐めるなぁ!」
シドリーは両手の斧を振り下ろし、その刀身を受け止める。だが白銀の刀身は、氷が熱い鉄心に触れるかのように溶け始め、火花を散らすも二人の攻撃を遅らせる程度にしかならない。
シドリーは激しい放電に巻き込まれつつも冷静に判断し、頭上から新たな斧を呼び出すと、それを左右に落として壁代わりに使い始めた。
「そんなチンケな斧で!」
「………無駄ですよ」
光り輝く二本の刀身は、シドリーが用意した複数の斧を次々と溶解し、切断していく。




