⑧刹那の極み
「………イリーナ。お前の剣は、あいつらと同じか?」
シドリーが黒の革手袋を引っ張りながら締まり具合を確認、そして白銀の斧を握り直す。
「全く同じか分からないけど………私は負ける気はないです」
イリーナの三回。相手の六回。
その差は三回。
「面白ぇ、単純な引き算なら、俺にだって出来るぜ」
アモンとバルバトスが、シドリーとイリーナの前に立つ。
「ナラバ、センジンハ、ワレワレニ、マカセテモラオウ」
バルバトスは拳をアモンの横に向けると、アモンもそれに合わせて拳を突き出してぶつけ合った。
「先にいくぜ。シドリー」
「………気にするな。後で追いつく」
シドリーが両手に斧を持ち、小さく笑って見せる。
「バルバトス! 行くぜぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「リョウカイダ、アモン!」
バルバトスは人の形を崩すとアモンの全身にまとわりつき、加速装置と鎧の役割を兼任した。
アモンが両膝を曲げて前に屈むと同時に、足に纏った銀の装甲から車輪が生まれ、初速から最大回転でアイリン達に突貫する。
「さぁ、リーザ! ファルケン! 断罪の時間だよ!」
「いいわよ!」「っ、了解!」
放電した剣を下に構えたアイレン達が、左右中央の三方向へと散開する。
だがアモンはそれに動揺する事なく、中央にいるアイレンを真っすぐに捉え続けた。既に速度は最大、風の音で周囲の声もかき消され、風の勢いで呼吸すら困難になっている。
「うおぉぉぉぉぉぉらぁぁぁっ!」
アモンが鎧となったバルバトスと分離し、慣性によって得た速さで飛び込む。アモンは自身の粗雑な魔力で作り出した炎を両手に纏い、燃え上がる両手ごと左右時間をずらしながらアイレンに叩き込む。
一方のアイレンも、アモンの捨て身の攻撃に臆する事なく、放電した剣を切り上げた。
「断罪の蒼剣、第二の裁き!」
発動の鍵となる言葉と同時に、アイレンの剣が強い光を放ちながらアモンの炎の拳と接触する。彼の拳は剣に触れると同時に黒炭と化し、右の拳、左の拳と順に、アイレンの攻撃を妨ぐ事すら叶わずに滅していった。
最早、アモンに両手で相手の攻撃を防ぐ事が不可能になる。
それでも彼の目は血走り、相手の動きを凝視し続けていた。
「ここだぁっ!」
既に左胸まで刀身を食い込まれていたアモンは、アイレンの腕が自分の左足を通過した瞬間を見極めると腰を捻り、左足を垂直に蹴り上げる。
「ぐぅっ!」
蹴り上げた左足の親指が、アイレンの下顎を押し上げた。剣を振り終える直前だった為に姿勢を変えられず、さらに隙を突かれたアイレンは、彼の最期の一撃の全てを受け止めてしまった。
同時にアモンの上半身は斜めに斬り裂かれ、右肩だけを残して消え去る。
下顎を打たれたアイレンが後方に数歩よろめく。




