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lost19 虚構の歴史、真実の物語  作者: JHST
第六章 命を懸けて
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⑤家族の名誉に懸けて

「クライル宰相………いえバージル王より、大体の事は聞きました。貴方達が王国を裏切り、魔物と行動を共にしている、と」

 ドリスがフォースィだけでなく、タイサ達も順々に睨みつける。

「成程、クライルからか………。それなら、俺達が何を言っても信じてもらえないだろうな」

 タイサが困った困ったと頭を掻く。


「それで? 君は俺達とどうするつもりだ?」

「例え同じ人間であっても、蛮族と手を組む人達を許す訳にはいきません」

 ドリスが自分の翡翠色の鎧に手を置く。

「人類に代々受け継がれしこの『勇者の鎧』の名にかけて、貴方達を見逃すつもりはありません」

「勇者………ですって」

 フォースィの表情が曇る。

 『勇者の鎧』と呼んだ彼女の軽鎧は、タイサの『魔王の鎧』と色が異なるだけで、細かい装飾部分を除けば多くの点で類似していた。それだけでなく『勇者の鎧』は街を脱出する際に王都へと運ばれており、クライルから直接話を聞かされている彼女ならば、それを身に付ける流れになってもおかしくはない。


「はい。私はウィンフォス王国の新たな王より、十三代目の勇者を拝命しました。私が蛮族達を排除し、弱き人々を導き、王国の平和を取り戻します!」

 ドリスは悦に近い自信に満ちた目で頷き、改めて自分の名前と与えられた使命を口にする。


「そう………十三代目。十四ではなく、彼は十三を名乗らせたのね」

 フォースィの拳が震え、魔導杖を握る手の肌が白くなる。

 そして組んでいた腕を解き、彼女はタイサの前に一歩出た。

「ここは私に任せてもらえるかしら」

「フォースィ!? し、しかしお前の体じゃ!」

 使える魔力も限られている。ましてや相手は学生とはいえ勇者が使用したと言われる鎧を纏い、持ち主の能力を極限にまで増幅させているに違いない。77柱の一人を簡単に退けている時点で、それが脅しではない事を証明していた。


 だがそれでもフォースィは首を左右に振り、タイサの心配を受け入れなかった。

「悪いけど、ここは譲れないわ」

 歴史上は十二代まで存在した国家に認められた存在、勇者。

 だが真実の数は十三人。二百年前に十三代目の勇者が存在していた。

「………十三代目は二人もいらないのよ」

 勇者の妹の娘として、叔父の名誉を誰かが守らなければならない。フォースィは自分の肉親が存在しなかったと扱われた事が許せなかった。しかもクライルは全てを知った上で、故意に十三代目を彼女に与えている。それが彼女の存在と尊厳を大いに傷付けた。


「隊長、自分も残りやす」

「ボーマまでっ!?」

 バツが悪そうにボーマが名乗り出る。

「俺には女の子を一人だけ置いていく事なんざ出来ませんぜ………それに、魔法使いだけじゃぁ、戦いようがないでしょうや?」

 全員が生き残るための最上の策を出し続けなければならない。その上で、ボーマの提案は決して間違ってはいない。


「いいのか?」

 タイサが短く尋ねる。

「任せてくだせぇ。隊長の『盾』の名前を汚す事はしません。きっかり仕事を果たしてみせやしょう!」

 騎士鎧に包まれた大きな腹を大きく叩き、ボーマが笑って見せる。

「………隊長。ご無事で」

「勿論だ………お前もな」

 タイサとボーマは互いの拳を当てた。

 そして、タイサが走り抜ける。

「ボーマ、必ず追いつきなさい」

「当たり前ですよ、副長。俺ぁ、二人の結婚式に最前列で参加して、隊長と副長の恥ずかしい昔話で盛り上げながら、腹が割ける程食べ尽くす予定ですからね。こんなつまらない場所では死ねませんよ」

 エコーもボーマと互いに笑みを交わし、タイサと共に広場を抜けていく。

 バイオレットは小さくボーマとフォースィに会釈すると、二人を追いかけていった。


「………本当に良いの? 今なら追いかけられるわよ」

 三人の姿が見えなくなり、フォースィが肩をすくめてボーマに冗談を飛ばす。

 ボーマは肩に背負っていた大鉄球を地面に落とすと、石畳を砕きながら汗で濡れた前髪を勢いよく払った。

「なぁに、女の子を守るのは騎士の役目ですから」

 ボーマは白い歯を見せて笑っているが、彼の頭からは汗は飛び散り、石畳に染みを作っている。

「………お礼はしないわよ」

「え、嘘っ!? あ、いや………も、勿論、騎士は見返りを求めないっすよ。あは、あははははははっ」

 わざとらしい笑いで下心を隠そうとするボーマだったが、何一つ意味を成していなかった。

「別にもう騎士じゃないんだから、いちいち気にしなくていいのに………」

「し、しまったあぁぁぁぁぁ!」

 自分が既に騎士ではなかった事を今更思い出し、ボーマは大鉄球に寄りかかるように膝を折る。


「でもまぁ………生きて帰れたら、食事くらい付き合ってあげるわ」

 フォースィの蚊の鳴くような声に、ボーマは即座に立ち上がると、大鉄球を抱えてドリスへと飛び込んでいった。

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