④緑髪の学生
「それじゃぁ隊長、俺達もぼちぼち行きますかい?」
ボーマが肩を後ろに動かし、肩甲骨を鳴らしながら、まるで昼食にでも行くかのような緊張感のない声を上げた。
「そうだな」
タイサが素直に頷く。
一体誰が通り抜けたのか。その正体は分からないが、タイサはその目的が自分達と同じ目的地だろうと想像していた。
「既に賽は投げられている」
「ならば不安になっても目は変わりません。その目で勝負するしかないのですから」
バイオレットがタイサの言葉に乗る。
「その通りだ………行くぞ!」
タイサ達は大通りを走り、フォースィを追いかけた。
数分をかけて街の中心まで走り、ブレイダスの名所である中央広場の隕石跡に入ると、フォースィの背中が見え始め、タイサ達の足がゆっくりと止まる。
かつてはこの場所を防衛の拠点とし、シドリー達の魔王軍と戦った場所でもあったが、タイサ達の目の前にいたのは一人の女性と一匹の巨大な魔物だった。
「やはり、来たのですね」
女性が振り向く。肩に触れる長さの緑色の髪、それだけでなく鮮やかな翡翠色の軽鎧を身に付けた女性は、大きな丸眼鏡の中心を指先で小さく上げると、大きな溜息をついた。
そして彼女の倍はあるであろう大きな魔物が膝をつき、空を仰ぐように倒れる。周囲には魔物の腕と思われる肉片が石畳に落ちており、その全身は酷く焦げていた。
「四本腕の悪魔、77柱のヴァサーゴと彼は名乗っていましたが………それ程の脅威ではありませんでしたね」
女性は眼鏡を取ると、ポケットの白い布でガラス部分の汚れを拭きとる。
「お久しぶりですね。フォースィさん」
眼鏡をかけ直し、女性が小さくなった紅の神官を睨みつけた。
「………知り合いか?」
味方とも思えない。そう感じさせる空気の中、タイサがフォースィに確認する。
「知り合い………と呼ぶには、随分と浅い関係よ」
フォースィが腕を組む。
「彼女はドリス。この街の訓練学校の校長だったマドリーさんの娘よ」
お茶を一杯運んでもらっただけの仲だと付け加える。
「その貴方が、何故ここにいるのかしら?」
彼女を含め、生き残った訓練学校の生徒達は、この街を放棄する際に住民達を避難させ、共に王都へと向かったはずである。いかに彼女が勇者組としての実力を認められていたとしても、77柱の幹部級を単身で倒せる力などある訳がない。




