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lost19 虚構の歴史、真実の物語  作者: JHST
第六章 命を懸けて
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③弟子の覚悟

「………イリーナはどうするの? 完全に出遅れたみたいだけど?」

「うっうー! お師匠様は小さくなっても意地悪です!」

 平たい胸に両腕を集め、イリーナが涙目でフォースィに訴えている。


「行きます………行って話をしてきます」

 鼻をすすり、イリーナは涙を拭う。

「そう………なら、私も―――」「お師匠様は駄目です!」

 残ろうと言いかけたフォースィを、イリーナが大きな声で止めに入った。


 今までにない反応だった。

 思わずフォースィが口を小さく開けたまま驚いている。

「気付きませんでしたか!? さっき門の上を飛び越えていった人がいます!」

 イリーナの言葉に、フォースィだけでなくタイサ達も街の中心に顔を向けた。だが既に気配はなく、抜けてった正体も分からない。


「へぇ、流石は僕達の先輩だね。多重にかけていた隠密魔法の存在に気付けたなんて」

 シドリーの一撃で地面に沈められたアイレンが両手を使って起き上がる。彼の顔からは石の破片が落ちていくが、その肌に傷はなく、鎧にも埃が付いた程度にしか汚れていなかった。

「でもこれで、僕達の『お務め』の半分は終わったね」

「何言っているの。残りの半分も終えて、さっさと帰るわよ!」

 アモンやバルバトスの一撃を受けて止まっていた二人も動き出し、まるで何もなかったかのように攻撃を受けた場所を手で払う。


「お父さんっ!」

 唐突にイリーナがタイサの体に抱き着いてきた。

「い、イリーナ。いきなりどうしたんだ?」

「何でもない! 何でもないけど、ご挨拶!」

 互いの鎧が人肌の温もりを分け隔てているが、タイサは突然の事に驚きつつも、イリーナの言葉を受け止める。

 彼女は満面の笑みでタイサから離れると、周囲の大人達に一礼する。

「こういう時は………お世話になりました? って言うんだっけ?」

「何言ってるのよ。縁起が悪い」

 フォースィがイリーナの頭頂部を魔導杖で殴る。

「杖は痛いです。お師匠様」

「全く………成長しているんだか、お馬鹿になっているんだか………困ったものね」

 腰に手を当てて鼻で空気を吐き出すフォースィ。


「………イリーナ」

 フォースィは目線の近くなった弟子の顔を見つめると、小さくなった手で彼女の頭を撫でた。

「全ての『断罪』を許可するわ。その代わり、必ず私の所に帰ってきなさい」

「はい! 行ってきます!」

 イリーナは歯を見せるような満面の笑みを見せ、踵を返して走り去っていった。

 フォースィもすぐに振り返り、イリーナに背を向ける。

 通り過ぎ様に、タイサの右腕を竜の彫刻が飾られている魔導杖で何度も叩いた。

「………あなたも気を付けなさい。エコー、このろくでなしから一時も目を離さない事ね」

「分かってます」

 エコーが力強く頷く。


「さぁ、行くわよ」

 フォースィが街の中心に向けて歩み始める。

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