表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
lost19 虚構の歴史、真実の物語  作者: JHST
第五章 乱戦の末路
64/123

⑧さいごのわがまま

「残った飛竜に、俺達とフォースィ達が乗り、大魔王は独自に行動する」

 タイサの確認に全員が頷いた。


「おい、俺の事を忘れてないか?」

 ギュードが顔を引きつらせながら親指を自分に向けていた。

「ああ、そうだったな。悪い悪い………ワザとだ」「ぶっ飛ばす」

 いつもと逆の立場にされたギュードが目の下を痙攣させ、舌打ちする。


「ギュード。お前には、頼みたい事がある」

「依頼か? いいぜ、ダチのよしみで三割増しで受けてやる」

 後頭部に両手を回し、ギュードは立場を戻そうと大袈裟な条件を提示してみせた。

 だがタイサは彼の冗談に返すこともなく顔を左に向け、横で立っている妹に視線を降ろす。

「………カエデを頼みたい。こいつをデル達の下に、落ち着いたら王都に送って欲しい」

「なっ!」「あ、兄貴!」

 ギュードとカエデが同時に声を上げた。

 彼女は兄のタイサに向き合うと両手を広げ、顔一杯の不満と不安が混ざって怒り出す。

「兄貴! ここまで来てそれはないよ! 私も最後まで戦う! 一緒に連れて行って!」

「駄目だ」

 対称的にタイサが静かに首を振る。

「悪いが、ここから先は素人冒険者はお断りだ。それに………運べる定員は限られているからな」

 あからさまな嘘。誰もが分かる言い訳だったが、それを指摘する者はいなかった。


「兄弟揃って死なれたら、俺は親父とお袋に顔向けが出来ない。分かってくれ」

「嫌だ! 私も一緒に行くんだ! ふざけるな馬鹿兄貴!」

 カエデが顔を赤くし、目に涙を浮かべながらタイサの胸当てを何度も叩き始める。

 タイサは最後の家族である妹の一打一打に、全てが込められている事を理解し、受け止めつつも、それでも冷徹に相手をしなければならない苦悩に耐え続けた。


「すまんな。兄ちゃんの()()の我儘だ」

()()って言うな! 兄貴の馬鹿馬鹿馬鹿!」

 体を揺らされながら、タイサは右手をカエデの肩に置く。


 その時、カエデは兄の袖と籠手の隙間から見えた肌の色に言葉を失い、瞳がしぼんでいく。


「兄貴………その腕、え………その色、何? これじゃぁ、まるで―――」

 最後の言葉を言い終える前に、カエデは力尽きたかのように倒れ、タイサの腕に寄りかかった。

「すまないな、エコー」

「いえ………今の隊長の腕では、そもそも力加減が難しいでしょうから」

 両手に付いた『杭打ち』と黒く染まった片腕に目を向けたエコーが、小さく笑みを浮かべる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ