⑤突破、そして合流
タイサが息を飲む。
「………これじゃぁ戦争の形が変わっちまうな。数が意味を成さない」
魔物達が信奉する理由が分かった気がする。タイサは大魔王に作られた躯の道を走り抜けながら、熱くなった背中の上を汗が流れていくのを感じた。
遂に貴族派、新生派の陣を横断に成功する。両軍は甚大な被害から立て直す事で手一杯になり、タイサ達を追撃する集団はついに見えなくなった。
「よし、ここまでくれば大丈夫だろう」
タイサが速度を落とし、周囲もそれに合わせて足を止めていく。アモンやシドリーは疲労から地面に膝をつき、地面や空に向かって息を吐き続ける。エコーとバルバトスは周囲の警戒に当たり、ギュードが乗った飛竜はタイサ達の中心に降り立った。
「言いたいことは山程あるが、まぁ、何とか抜け切ったな」
ギュードが地面に足を降ろす。
それと同時に大魔王が空を見上げると、黒い翼をもったケリケラが色々と背中に乗せ、足で掴みながら降りてきた。
真っ先に落とされたのが、大鉄球を背負ったボーマだった。
「あいたぁっ!」
地面で二度跳ねる。
「兄貴! 良かった、無事で!」
カエデがケリケラの背中から飛び降り、兄へと近付く。
ケリケラが羽ばたきを調整しながら地面に足をつけると、イリーナと服を抑えるフォースィ、そしてバイオレットが降り立った。バイオレットはタイサ達の様子を確認するや、すぐにエコーの下へと駆け寄り、すぐに周囲の警戒へと移る。
「フォースィ………助かった」
謝罪と感謝の言葉を込めてタイサは目の前の少女に頭を下げた。彼女の姿は、一気に十代半ばまで若返っており、身長もイリーナよりも頭一つ分大きい程度まで縮んでいた。
「気にしないで。こっちも覚悟の上だったから。でも、出来れば魔法はしばらく撃ちたくないわね」
「分かってる。ありがとう」
右を上げれば左が落ちる。肩から落ちそうな紅い神官服を何度も引っ張りながらフォースィが警告する。声もまた随分と若返り、いつもよりも高くなっていた。
そして彼女は大魔王を見上げる。
「で、私はあと何回使えばいいのかしら?」
嫌味を込めてフォースィが右頬を吊り上げた。
「そうだな。その姿ならあと十四回だな」
大魔王は感情を見せる事無く彼女の問いに答えると、手のひらを向けて指を開く。すると彼女の周りに黒い粒子が浮き上がり、彼女を中心に螺旋状に舞い始めると、次第に大きすぎた服が縮み始め、少女の体に合う大きさへと変化した。
「随分と都合の良い魔法ね。今度教えてもらえるかしら?」
「次があればな」
大魔王が鼻で笑い背を向ける。
―――嫌な男。
フォースィは小さくそう呟き、自分の身長とほぼ同じ長さの魔導杖を器用に回転させると、鼻を鳴らしてタイサへと足を運ぶ。




