⑪空へ
「皆聞いてくれ」
タイサが覚悟を決めた。
「今から部隊を二手に分ける」「正気か!?」
デルが思わず叫ぶ。ただでさえ少ない戦力を二つに割いて、何の意味があるのか。まだ全員で行動した方が戦えると訴える。
だがタイサは、親友の言葉を余所に頬を緩ませた。
「ああ、まだ正気だ」
話を続ける。
「シドリー達を助けに行く為には、この飛竜を使って空から向かうしかない。しかも、運べる人数はそう多くはない。そこで、少数精鋭でシドリー達と合流、さらに外からは、こちらが包囲を突破する為に、なるべく大きな一撃を放ってもらう」
ただし、敵陣に接近する時間的余裕はなく、外からの一撃は超長距離から狙える技でなければならない。そして一撃を加えた後、相手が怯んだ隙を見て脱出を図る。タイサの青写真は、計画というよりも博打に近いものであった。
「大きな一撃の超長距離攻撃って………そもそもそんな出鱈目な技を使える奴はいるんですかい?」
「………私がやるわ」
ボーマの当たり前の疑問に、フォースィが名乗り出る。
「そうすれば、あなたは彼女達を救出し、撤退する事が出来る。そう解釈していいのかしら?」
「頼めるか?」
頷くタイサは、彼女の体の性質を知った上で依頼する。
「いいわよ。その代わり、この周辺一帯のクレーテルをかき集めるのに………そうね、八分間を死ぬ気で稼げる戦力を残していって欲しいわ」
「はいはい! イリーナが残ります!」
少女が元気良く手を上げた。
タイサは既に人選を決めており、飛竜に乗る者を自分を含めエコーとギュードの名を挙げた。
「何で俺ぇ!?」
呼ばれるとは思わず、ギュードが情けない声で自分を指さす。
「うるせぇ! 包囲突破とかそういう面倒な事はお前の得意分野だろうがっ!」
「勘違いもいい所だ! 俺は単独専門なの! 戦争とか戦術とかは専・門・外! って、聞いてねぇ!」
横で騒ぐギュードを無視し、タイサは大魔王と向き合い、顔を見上げた。
「お前さんなら、自力で飛べるだろう?」
「問題はない、が………どうした? 随分と余を当てにし始めたようだが」
大魔王の含んだ笑みをタイサは横目で笑い返す。
「使える者は使え、そう言ったのはお前だからな」
「成程。そうだったな」
一度だけ鼻を鳴らす。
大魔王は空からケリケラを呼び戻すと、ここに残るように指示を出した。
「そこの女神官の魔法がどの程度かは知らぬが、この者の能力で威力を倍にすれば見栄えも多少良くなるだろう。ケリケラ、お前はここに残り、この者達を援護するがいい」
大魔王の言葉に、地面に足を降ろしたケリケラは小さく頭を下げる。
「さぁ、行くぞ。今は時間が黄金よりも貴重だ」
タイサはエコーとギュードを飛竜に乗せ、最後に自分が乗ろうと飛竜の鎧に足をかけた。
「あ、兄貴!」
カエデがタイサの背中に声をかける。
彼女は最初の一言目に迷い、声が出てこない。
「心配するな。兄ちゃんは必ず帰って来るよ」
「………あ。う、うん。絶対、絶対だよ!」
振り向き、タイサはカエデの髪を撫でる。そして再び飛竜にかけた足に体重を乗せると、勢いよく竜の背中に跨った。
「デル! 後を頼む!」
「ああ、行って来い! 向こうで会おう!」
デルは自分の剣を掲げ、タイサは杭打ちの盾を広げて互いの武器を重ね合う。金属音が響き渡り、余韻の残るその音に全てを込めた。
「行くぞ!」
タイサ達、そして大魔王は勢いよく空へと駆け上がった。




