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lost19 虚構の歴史、真実の物語  作者: JHST
第四章 三つ巴の戦い
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⑪空へ

「皆聞いてくれ」

 タイサが覚悟を決めた。


「今から部隊を二手に分ける」「正気か!?」

 デルが思わず叫ぶ。ただでさえ少ない戦力を二つに割いて、何の意味があるのか。まだ全員で行動した方が戦えると訴える。

 だがタイサは、親友の言葉を余所に頬を緩ませた。

「ああ、まだ正気だ」

 話を続ける。

「シドリー達を助けに行く為には、この飛竜を使って空から向かうしかない。しかも、運べる人数はそう多くはない。そこで、少数精鋭でシドリー達と合流、さらに外からは、こちらが包囲を突破する為に、なるべく大きな一撃を放ってもらう」

 ただし、敵陣に接近する時間的余裕はなく、外からの一撃は超長距離から狙える技でなければならない。そして一撃を加えた後、相手が怯んだ隙を見て脱出を図る。タイサの青写真は、計画というよりも博打に近いものであった。


「大きな一撃の超長距離攻撃って………そもそもそんな出鱈目な技を使える奴はいるんですかい?」

「………私がやるわ」

 ボーマの当たり前の疑問に、フォースィが名乗り出る。

「そうすれば、あなたは彼女達を救出し、撤退する事が出来る。そう解釈していいのかしら?」

「頼めるか?」

 頷くタイサは、彼女の体の性質を知った上で依頼する。

「いいわよ。その代わり、この周辺一帯のクレーテルをかき集めるのに………そうね、八分間を死ぬ気で稼げる戦力を残していって欲しいわ」

「はいはい! イリーナが残ります!」

 少女が元気良く手を上げた。


 タイサは既に人選を決めており、飛竜に乗る者を自分を含めエコーとギュードの名を挙げた。

「何で俺ぇ!?」

 呼ばれるとは思わず、ギュードが情けない声で自分を指さす。

「うるせぇ! 包囲突破とかそういう面倒な事はお前の得意分野だろうがっ!」

「勘違いもいい所だ! 俺は単独(ソロ)専門なの! 戦争とか戦術とかは専・門・外! って、聞いてねぇ!」


 横で騒ぐギュードを無視し、タイサは大魔王と向き合い、顔を見上げた。

「お前さんなら、自力で飛べるだろう?」

「問題はない、が………どうした? 随分と余を当てにし始めたようだが」

 大魔王の含んだ笑みをタイサは横目で笑い返す。

「使える者は使え、そう言ったのはお前だからな」

「成程。そうだったな」

 一度だけ鼻を鳴らす。

 大魔王は空からケリケラを呼び戻すと、ここに残るように指示を出した。

「そこの女神官の魔法がどの程度かは知らぬが、この者の能力で威力を倍にすれば見栄えも多少良くなるだろう。ケリケラ、お前はここに残り、この者達を援護するがいい」

 大魔王の言葉に、地面に足を降ろしたケリケラは小さく頭を下げる。


「さぁ、行くぞ。今は時間が黄金よりも貴重だ」

 タイサはエコーとギュードを飛竜に乗せ、最後に自分が乗ろうと飛竜の鎧に足をかけた。


「あ、兄貴!」

 カエデがタイサの背中に声をかける。

 彼女は最初の一言目に迷い、声が出てこない。

「心配するな。兄ちゃんは必ず帰って来るよ」

「………あ。う、うん。絶対、絶対だよ!」

 振り向き、タイサはカエデの髪を撫でる。そして再び飛竜にかけた足に体重を乗せると、勢いよく竜の背中に跨った。

「デル! 後を頼む!」

「ああ、行って来い! 向こうで会おう!」

 デルは自分の剣を掲げ、タイサは杭打ちの盾を広げて互いの武器を重ね合う。金属音が響き渡り、余韻の残るその音に全てを込めた。


「行くぞ!」

 タイサ達、そして大魔王は勢いよく空へと駆け上がった。

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