⑩追い詰められる者達
「仕方ねぇ。最後まで付き合ってやるぜ………腐れ縁だからな」
ギュードが背中を向けて、ドワーフ達と相対する。
「………悪いな」
「うるせぇ」
両手に新しい『杭打ち』を巻き付けたタイサは、周囲を確認する。
既にドワーフ達の死骸は三十を超えているようだが、騎士団側でも戦っていればその数は増えていく。そして大魔王は相変わらず馬車に背中を預けたまま腕を組んでいる。だが、彼の足元では数体のドワーフが傷のないまま絶命していた。
「そうだ、魔方陣!?」
地面を掘られていれば、転移用の魔方陣が破壊される可能性が高い。だが、幸いにも魔方陣の真下からは敵が沸き上がっておらず、デル達騎士団との戦闘は魔法陣から離れて行われていた。
「良かった。魔方陣が壊れては帰れないからな」
その時、タイサの頭に言葉にできない違和感が浮かび上がる。
―――魔方陣は何故壊されていないのか。
そもそも、タイサの作戦が見破られた事はこれが初めてではない。ついこの前も、相手に先手を取られたばかりであった。
タイサは自分が万能ではないと理解しつつも、この状況を偶然で片付ける事に躊躇う自分が心の中に存在している。
「いや………だが、そうなると」
タイサの視線が、自然と原因になりそうな存在に向けられる。
証拠はない。タイサはすぐに首を左右に振った。
赤鎧のドワーフは未だに穴から沸き続けている。今はこの窮地を抜けきる事に専念した。
「隊長! このままではキリがありません!」
「こうしている間にも、シドリーさん達は包囲され続けています」
エコーとバイオレットの正論に、タイサは決断を迫られる。最善の手ではなくとも、何かしらの行動が求められていた。
「密集だ! 全員飛竜を中心に円陣を組め!」
タイサの号令に、フォースィとイリーナがボーマとカエデの近くに集まる。デル達騎士団もドワーフを引きつけながら集合を果たし、タイサ達の隙間を埋めていく。
大魔王もいつの間にか、飛竜の前で立っており、数十人の円陣が完成する。
「タイサ。集まったはいいが、この先はどうする!?」
円陣を組み、互いに支え合う事でドワーフ達の攻撃には耐えられるようになったものの、周囲を囲まれ、身動きが取れなくなっていた。さらに手の空いたドワーフ達が近くに置いてあった物資の木箱に火を放ち始め、荷馬車が燃え上がる。それを引いていた馬は、のけ反りながら鳴き声を上げて草原の奥へと走り去っていく。
「………生きて帰ってもエルザに殺されそうだ」
デルの背筋が冷える。
だが、この状況でも魔法陣に手を付ける者はいなかった。




