⑧杭打ち、再び
デル達の後方。待機させていた騎士団の方角から、敵襲を知らせる笛の音が響き渡った。
「くそっ! してやられたぞ、タイサ!」
「ここはいい! デル、お前は王女殿下と共に騎士団と合流しろ!」
相手が人間ではない以上、赤鎧の者達の所属は確定している。タイサは、奇襲をかけた側が奇襲を受ける事による最悪の事態を思考し、必死に受け止める。それは、地面を掘って相手が移動してきた以上、新生派の魔王軍は、この場所に魔王派の一軍が現れる事を、ある程度想定していた事になる。
「ボーマ! カエデを連れてギュードと飛竜と合流してくれ! カエデはギュード達の援護だ!」
「よっしゃ、了解でさぁ!」「あ、兄貴も気を付けて!」
デルと王女に引き続き、ボーマとカエデも孤立を避ける為、その場を離れ始めた。
それでも赤鎧のドワーフ達は、一向に収まる気配もなく、空いた地面の穴から我先にと飛び出してくる。彼等は地面から出て来た時には無手であったが、耕した地面に手を入れると、まるで根菜類のように、初めからそこに埋まっていたかのように斧や剣を掘り出し、次々と武装を済ませていった。
「隊長! 援護します!」
バイオレットがエコーとは反対側、タイサの横についてドワーフの半回転の斧を、左腕に巻き付けた騎士の盾で受け止める。
「右手を槍に!」『イエス・マム』
バイオレットの合図で彼女の右の籠手が銀色の筒へと姿を変え、彼女の腕を包むように、先端に向かって細く、鋭い針状へと変化する。彼女は手刀のように突き出した右手を槍に変え、赤鎧を捻じるように貫き、すぐに引き戻す。
「バイオレット!?」
彼女がここに残っている事に、タイサが驚く。
「………伝令役として、デル総長の許可は得ています。私も隊長と共に戦わせてください」
その言葉には彼女なりのあらゆる感情と、その感情に従った結果の決意が込められていた。
タイサは彼女の言葉に、無言で答える。
「タイサ! 俺は帰っていいか!? 荷物はここに置いていくからよ! あ、サインはいらねぇよ!」
ギュードが飛竜の周囲で赤い死体を作り上げながら、余裕を見せつつ情けない声を上げていた。
「馬鹿野郎。それ所じゃねぇだろう! 今まで俺の妹にちょっかいを出しやがって。仲間なら最後まで付き合え! それに荷物って何だ!」
戦いの金属音に負けじと、タイサも声を上げる。
「お前の武器だ! 何て言ったっけ? 食いすぎ?」
「杭打ちだ! って、あるのか!? そこに!」
タイサが正面から飛び込んで来たドワーフを横に切り払うと、クレアとバイオレットを連れてギュードの元へと向かう。
ギュードはクロムに周囲の戦闘を任せると、タイサの前で飛竜の鎧に結ばれた左右の木箱の紐を素早く解いて、中を開封する。
そこには形は多少異なれど、鍛冶師トリーゼの祖父が作り上げたという歪な武装。盾から杭を射出する『杭打ち』が左右に一台ずつ入っていたのである。




