⑦意趣返し
突然の合流に、顔見知りの全員がら呆れと半笑いな視線を受けつつも、ギュードは意に関せず周囲を見渡す。そして大魔王とも視線が一度合ったが、互いにそのまま無反応を貫く。
「空から戦場の様子を見てきたが………最悪の時期に来た気がするのは気のせいか?」
「相変わらず良い勘をもってるな。悔しいがその通りだ」
立ち上がったタイサが膝に着いた土を払いながら投げやり気味に肯定する。
「………よし、クロム。帰るぞ。ここにいては、命がいくつあっても足りない」
手の平を拳で軽く叩いたギュードは、用事を思い出したという無言の仕草で全てを済ませようとした。
「さっき、腐れ縁の仲間を助けに来たって言ってませんでしたか?」
飛竜から降りたクロムが、近付いて来た彼に向け、溜息と共に上目で睨みつける。
「クロム、覚えておけ。もし真の友なら、仲間を窮地に立たせないものだ」
「貴方が言うと、全て冗談に聞こえるのは何故でしょうか?」
ギュードは彼女の肩に手を置いて声を低くつくるが、クロムは勝手に肩に乗った手を、埃と一緒に払いのけた。
「つれないなぁ………俺はただ―――」
緊張感のないギュードの言葉が止まる。
同時にタイサとデル、フォースィの表情が固まり、その表情を見た他の仲間達が一斉に自分の武器に手をかけた。
一瞬で場が静まりかえる。
僅かな地面の振動。慣れない者であれば、立ち眩みよりも弱い方向感覚の乱れ。
「下だ!」
デルの声に、全員が一斉にその場から飛び退けた。
その瞬間、雑草と共に土が馬車よりも高く舞い上がり、地中から赤い鎧に身を包んだ集団が現れた。
慎重こそ、大人よりも七割程度だが、中年貴族のような立派な腹回りに老神父のような見事な顎髭が胸に届くほどの長さを有していた。左右に角の生えた赤い兜からは顔までは覗けず、小さな体に似つかわしくない強靭な筋肉が纏わりついていた。
タイサ達は最初に噴き出してきた赤鎧達を難なく切り伏せると、次々と噴水のように土を舞い上げては姿を現していく赤い集団の位置を順々に確認する。
「タイサ! 説明!」
「知らん! 以上!」
斬り伏せても次々と現れる赤鎧の集団に、ギュードはクロムと共に飛竜と荷物を守りながらタイサに怒鳴り散らした。対するタイサも、黒の剣を迷わずに抜き放って赤鎧を体ごと切断していく。見た目通り、力はあるが動きは鈍重で、タイサの腕でも十分に対応出来ていた。
「ドワーフよ。それも、かなりの訓練を受けている集団………さしずめハイドワーフと言った所かしら!」
周囲の位置を確認しながら、フォースィは魔導杖から放たれる風の塊でドワーフを一体、また一体と吹き飛ばす。そこから漏れた敵は、護衛のイリーナが殴りつけ、砕けた紅い破片をそこら中に巻き散らしながら再び地面へと埋め直していった。




