⑥空からの援軍
タイサはシドリー達が窮地に立たされている現状をデル達に伝えると、彼等にも意見を求めた。
「事情は分かった………だが、百人に満たない騎士団が今すぐ駆けつけたとして、包囲しかけている五千の口を開ける事は不可能だ」
分かっているはずだが、とデルが眉をひそめる。
「私も同感です。さらに言えば、今から援軍に向かっても間に合うかどうか分かりません」
バイオレットもデルに賛同する。王女は特に言葉を放たなかったが、表情から見てもやはり二人の考えに近いのだろうとタイサは察する。
「時間、そして突破する力か………」
「さらに言えば、突破して合流、さらに撤退する穴を穿つ力も必要になります」
タイサの呟きにエコーが補足する。
時間、二回の突破力。その三つ全てが手元に揃っていなかった。
タイサの脳裏に最後の手段が浮かび始める。
「大魔王―――」「待て」
声をかけようとした矢先、大魔王が不意に空を見上げた。
「おおーぃ!」
青い空から見えた黒い影は、次第に面積を大きくしていき、やがてそれが飛竜だと気付かされる。
「あれは………飛竜? しかしだれが?」
「俺だよ」「がふっ」
突然、タイサの背後から耳元へと声がかかる。そして立っていたタイサの膝裏に力が加わり、そのまま力が抜けて草原に手をつけた。
「………膝かっくん」
すぐ横で見ていたバイオレットが小さく呟く
。
膝をつくタイサの後ろでは、黒と灰色の服で身を固めた細い男が挨拶がてらに右手を軽く上げていた。
「ギュード? お前、何でこんな所に!?」
王都で別れて以来の彼に指を向け、デルが驚く。
「何ってつれないなぁ。腐れ縁の仲間を助けに来たっていうのに」
大袈裟に両手を広げて残念そうに空を仰ぐギュード。言葉としては心強くても、彼自身の振る舞いと性格がそれを台無しにさせていた。
「白々しすぎる………」
遅れて飛竜が草原を横倒しになびかせながら着地する。革の防具で身を固めていた飛竜の体にはいくつもの木箱が防具に結ばれており、さらに黒装束を纏った短い黒髪の女性、クロムが飛竜から降り立ち、ギュードの薄い友情に目を細めた。
「ギュードさん!」
「おお! カエデちゃん、元気してたかい?」
ボーマの横でカエデが手を振ると、さも大袈裟にギュードが右手を高くして左右に振る。
「ギュード、お前はっ!」「はい残念賞」
その隙を狙い、タイサはギュードの膝を狙って自分の膝を曲げるが、瞬時に背後に移動したギュードはタイサの両肩を真下に押し込んだ。
「だっはぁ!」
「甘い甘い。俺から背後をとろうなんて、二百年は早いぞ」
膝を曲げていたタイサは、体勢を崩して草原に背中から倒れ込む。
「………かっくん返し」
バイオレットが感心するように呟く。
「彼、タイサが魔王だって分かってやっているのかしら?」
フォースィが腕を組んで呆れている。




