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lost19 虚構の歴史、真実の物語  作者: JHST
第三章 それぞれが描く未来
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⑥目標は五人

「誰を倒せばこの戦いが終わるのかと聞かれれば、分からないというのが実情だ」

「………随分と、回りくどいわね」

 フォースィが怪訝な顔になる。

 シドリーは彼女の声に僅かに反応しつつも、話を続けた。

「正確には、特定の指導者が存在する訳ではない、という事だ。新生派の行動は複数の幹部の総意によって成り立っている。もしも新生派の動きを完全に阻止するならば、その幹部達全員を倒す必要がある」

「人間でいえば、有力貴族達が話し合い、多数決で決定させる動きと同じいう訳ですね」

「あぁ。そういう組織だと思って構わない」

 アイナ王女が例えを作り、分かりやすく表現し直した。そしてその表現はほぼ答えに近いとシドリーが肯定する。

 彼女は中心となっている77柱が五人いると、それぞれの名前を並べ始めた。

「まず、様々な格闘技を極めたダークエルフのバール。次に大地を操る魔導士アーガレスト、触れた物の姿形を自由に変える錬金術師ザガン、闇魔法の使い手である魔女アスタロッテ、最後に言葉を話す魔獣ヴァサーゴの五名だ」

 それぞれが異なる能力に特化した猛者だとシドリーが短く、具体的に説明した。さらに、中立派にいる幹部達の詳細も併せて伝えると、長くなった話を一度切る。


 魔王軍の内部分裂にまで追い込めるほどの実力者。ただでさえ77柱と呼ばれる幹部級は、たった一人で戦況を覆せるだけの能力を持った者達ばかりだけに、一度でも戦ったことがある者達にとっては、その強さを正確に想像できる者はいなかった。

「前向きに考えれば、全員ではなく五人だけを相手にすればよいという事だな」

 タイサが周囲の空気を変えようと、肯定的な話にまとめた。


「その通りですね。この五人を倒す事が出来れば、決定権をもつ者がいなくなり、組織は大きく混乱するでしょう。中立派も新生派のに疑念を抱く事にもなり、上手くいけば組織は瓦解します」

 一万を超える魔物達よりも、いかにしてこの五人と戦う環境を作り出す事が出来るか。それを念頭に入れて動くべきだと、アイナ王女が放つ。

「何はともあれ、最初の戦いの成果次第だ」

 デルが顎を擦りながら広げたままの地図を眺める。タイサも、今はそれ以上考えても仕方がないと肩をすくめた。


 そして手を二度叩く。

「それでは出発は明日の正午。すでに大魔王配下のケリケラがここを出発し、我々が待機する場所に、転移用の魔方陣を描きに向かっている。準備が出来次第、大魔王の魔法で全戦力を一気に飛ばしてもらう」

 タイサが遠くで座る大魔王に視線を向ける。

「………そう心配せずとも、何も問題はない。だが、この移動方法は魔方陣を描く際の隙が大きい。お前達からすればどこにでも移動できる奇跡のような魔法に思えるのだろうが、使えるのはこの一往復のみだと思った方が良い」

 乱戦中では使えない。言葉として明確にはしなかったが、大魔王の言葉にはその意味が込められていた。

 タイサは顔を長机の周囲に集まる仲間に向け直し、小さく頷く。

「各自、最後の準備にかかってくれ」

 会議は解散となった。

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