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lost19 虚構の歴史、真実の物語  作者: JHST
第三章 それぞれが描く未来
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③漁夫の利

「しかし、タネガシマといった新兵器の報告は騎士団にも伝わっています。流石にそこまでの無茶は………」

 慌てるシエンがデルとタイサの二人の顔を見比べるが、その表情に変化はなかった。


「恐らくクライルも、彼を止めはしないでしょう」

 タイサ達と同じ結論に至っていたアイナ王女も長机に手を置き、前のめりになって黒石を見つめている。

「………救われない話ですね」

「いつも先に死んでいくのは、事情も知らない下っ端からって事ですかい」

 エコーとボーマが目を細め、複雑な表情を見せる。


「それで? 最も救われない私達はどう動くべきかしら」

 人間側、魔物側のどちらの事情を真実に近い形で知りながらも、満足に戦える力がない集団。フォースィは魔導杖で唯一地図の隅に置かれている3個の白石を小突いた。

「どうやって、たった千人程度の烏合の集団で、二万の敵を相手にするのかしら?」

 フォースィが意地悪くタイサに笑みを見せつける。


 全員の視線がタイサに集まった。


「………まずは放置する」

 タイサの一言に周囲が一瞬ざわついた。

「互いに数を減らしてもらう………か」

「ああ」

 デルの解釈にタイサが頷く。

 ではどちらか一方が全滅するまで待つかというと、そうではない。タイサは、口を開けかけたバイオレットに先んじて話を始める。

「シドリー、新生派が最初に騎士団に攻撃を支持する集団は、現地で調達した魔物達だと思うか?」

 タイサがシドリーに顔を向けると、彼女は口元を親指でなぞり『恐らく』と言葉を続ける。

「正規軍の戦力を極力温存し、かつ人間達の戦力を計る為には、それが一番です」

「ならば、序盤の戦闘で貴族派が崩壊する事はない」

 確証を得たタイサは、自身が経験したアリアスの街での戦いを思い出す。

 初期の戦闘は、蛮族としての実力に相応した一辺倒で、騎士達からすれば一方的に蹂躙できる内容だった。それが戦いを重ねる毎に、蛮族は対抗する手法を生み出し、ついには騎士団を苦戦させ、逆転させていった。


「それなら銀龍騎士団(俺達)も経験している。成程………貴族派は引き込まれるのか」

 デルがシモノフとブレイダスの間でぶつかった二種類の黒石を、中央で固めている集団と、左右に展開した集団に分ける。

「新生派にはまだ数多くのバードマンがいます。人間達の動きを上空から把握、合図をもって味方を左右に展開させる事くらいは造作もないでしょうな」

「哀れ人間共は挟み撃ちってことか」

 シドリーの後ろから紳士服を着た兎、肩眼鏡の参謀イベロスと狼男のアモンが遅れて合流してくる。

「悪ぃ、遅くなった………だが、準備はバッチリだ」

 アモンが頬を吊り上げた。

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