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lost19 虚構の歴史、真実の物語  作者: JHST
第二章 交差する歴史
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⑦大魔王からの助言

「断る」

 大魔王の返した言葉は短かった。

「貴方と同じ時代にいたエクセルも同じように………同じように私の問いに答えなかったわ!」

 事実を知る二人に断られたフォースィの語気が強くなる。


「知らない方が良い事もある………お前は勇者の妹マキ・イクステッド、その娘だ。そして母の育てられた思い出が僅かながらに残っているだろう。それだけを胸に秘めていればよい」

 大魔王が地面に向かって目を瞑る。言葉は相変わらず王としての威厳ある強さではあったが、どことなく男の言葉に、別の感情が混ざっているようでもあった。

「………気遣いは無用よ。私はこの百数十年、その事のためだけに費やしてきたのよ。今更引く事はしないわ」

 フォースィの言葉に、男は顔を上げる。

「そうか。まだそこまでは気付いていなかったか………」

「何の事?」

 全てを知っている男が自己解決するように頷き、フォースィの眉が低くなる。


「分かった。一つ、いや二つ程、話しておこう」

 大魔王が腕を解き、岩壁から離れる。

 そして人差し指を立てた。

「まず、余の友がいた歴史は今から二百年前のことだ」

「そんな事は―――」

 大魔王は立てた指を左右に揺らし、彼女の言葉を遮る。

「話は最後まで聞け………では、お前が母の事を調べ始めたのは、いつからだ?」

「………もう、百七十年近くになるわね」

「正確には百七十四年だ」

 大魔王が手首を回し、四本の指を立てて修正した。


「まだ気付かないか? どうやら、随分と強い暗示をかけたのだろう」

 フォースィが額に指を這わせ、大魔王の意図する事を必死に考える。

 そして目を大きくさせた。

「ちょっと待って………今、暗示をかけたって言ったわね?」

 かけられた、とは言わなかったと彼女の顔が強張る。

 大魔王も彼女が辿り着いた答えに眉を上げて、僅かに驚く。


「そっちの方に気が付くか………まぁ良いだろう」

 フォースィが辿り着いた答えに、大魔王は一度だけ頷いた。

「一つ目の矛盾に気が付けないよう、仕向けているのは他でもない。お前自身が、自分の記憶を封じているからに他ならない」

「そんな………」

 長年調べてきた事を全て拒否されたかのような衝撃だった。彼女自身が、自らの行動を自分自身で阻害している。フォースィにとって、その衝撃を表情で隠す事が出来なかった。


「やはり止めておくか?」

 その表情を大魔王は見逃さなかった。

「………いいえ。大丈夫よ」

 フォースィは自分の眉間に拳の角を何度も当てると、大きく息を吐いて大魔王の目を見る。

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