②彼は変わらず
「我々は貴族派と、貴女方は新生派の魔王軍に対抗する為に、ですね」
王女達にとっては、魔王軍の戦力をもって貴族派に対する事が出来る。シドリー率いる魔王派にとっては戦力の補充という意味合いよりも、少数であれ後背から邪魔される存在が一つなくなる事、そして王国側の情報や物資が利用出来、さらに戦後における王国と魔王軍との交渉の場で有利な立場を維持出来る事を望んでいた。
どちらにとっても、手を結ぶ意味合いは十分にある。それをこの場にいる全員が確認出来た。
アイナ王女は、魔王軍側ではあるがシドリーから少し離れた場所で静かに座っているタイサ、その傍で立つエコーに目を向ける。そして小さく口を開けて一言を発しようとしたが、すぐに口を閉じ、再びシドリーに顔を戻した。
「分かりました。同盟と共闘、改めて結ばせてもらいます」
「理解してもらい、感謝する」
アイナ王女とシドリーは示し合わせたかのように立ち上がると、お互いに近付き、握手を交わす。
「………オセ殿は貴女の妹だと聞きました。私自身もその戦場にいましたが、とても勇敢な方でした」
「ありがとうございます。愚妹ではありましたが、今回の任務を果たす事ができ、姉として誇りに思っています」
シドリーの表情が僅かに柔らかくなり、王女に用意した笑みを見せる。
そして手を離すと、シドリーはタイサに顔を向けた。
「宜しいですか? 魔王様」
遅れてアイナ王女もタイサに体を向ける。
「ああ。少なくともこれでお互いに戦わなくて済む。これだけもかなり大きいはずだ」
タイサは大きく頷き、良かった良かったと頬を緩ませる。
「隊長………あ、いえ魔王様。もう少し威厳を」
「はっ」
エコーが咳き込むと、何かを思い出したかのようにタイサが口を開けて背筋を伸ばし、鋭い視線て表情をつくる。
「………うむ。余はそれで良い」
故意に声色を低くさせ、威厳を醸し出す。
部屋に誰もいなくなったかのような静寂が、辺りを包み込んだ。
タイサに全員の視線が集まる。
「「………はぁ」」
ほぼ同時にシドリーとアイナ王女が溜息をついた。
そしてデルとバイオレットは頬を緩ませ、同じ気持ちを理由に安心していた。
「失礼ですが王女殿下。騎士団の頃から、あのような調子だったのですか?」
「お恥ずかしい限りです………」
シドリーの問いに、アイナ王女は額に手を当てながら呆れ、息を吐く。その後ろではデルとバイオレットが小さく数回頷き、シドリーの問いを肯定していた。
その後、互いに陣営に戻って詳細を伝える事、そして翌朝に今後の動きについて幹部級で方針と作戦を立てる事が決められて会談は終了となった。




