①二百年ぶりの対面
集落の村長であるプラウの家では、互いに報告を終えた者達が何も発言せず、静かに時間を過ごしていた。
アイナ王女やデル達は、タイサ達に王都で起きた貴族派の蜂起、そしてクライル宰相の計画について伝え、一方のタイサやシドリー達は魔王軍で起きていた二派との対立、そしてタイサが魔王になった経緯を報告する。
「私には、もう何が何だか。雲の上のような話にも聞こえますし、大の大人が絵本のような空想の話をしている様にも聞こえますな」
デルが不在の間、集落で指揮を執っていた老騎士のフェルラントが、両手を軽く広げて聞こえるように最初に溜息を吐いた。
それを皮切りに言葉が増え始める。
「ですが、事実として受け止めなければならないのでしょう」
デルの副官、フェルラントよりも頭一つ小さいバルデックが、周囲の顔色を伺いながら言葉を繋ぐ。彼もまたゲンテの街奪還作戦の後、フェルラントと共に集落に残り、負傷者の治療とデル達の戻りを持ち続けていた一人だった。
「その通りだ。そして我々………そして貴女方も、この件における利害は一致していると思うが」
シドリーは王女側の後ろに立つ二人の言葉に頷くと、木の椅子に腰かけたまま指を組み、互いの同盟と共闘について話を進めようとして王女に目を向ける。
王女の傍で立っているデルは、正面で座っているシドリーの表情を静かに見続けている。
『そうか………』
デルがオセの最期をシドリーに伝えた時、彼女はデルと目を合わせる事なく静かに目を瞑り、短くそう呟いただけであった。その言葉はまるで自分の部下が、しかしそれ程付き合いのない者が、自分の知らない所で、無関係に戦死した時の声とよく似ていた。
魔王軍司令官という立場としては、その言動が正しいのだろうと彼は理解しつつも、どことなく寂しさを感じざるを得なかった。しかし、彼女の姉妹の半分を手にかけた以上、デルにシドリーを慰める資格はなかった。
彼は数十分前の出来事を思い出しながら、改めて狭い部屋に集まった陣営を確認する。
アイナ王女を筆頭に、その左右で立つデルとバイオレット。バイオレットはシドリーから少し離れた場所で座っているタイサとエコーを何度も気にしている。さらに背後には集落でデルの帰りを待っていたフェルラントとバルデックの二名。シエンは集落に集まった騎士団の再編の為、この場には参加していない。
フォースィやイリーナも自分には関係がないと参加を拒み、この場にいない。
デルはテーブルを挟んで対岸に座るシドリー達を見つめた。
魔王軍からは司令官のシドリーが座り、その左右にアモンとバルバトスが立っていた。他にも幹部がいるとシドリーは自己紹介の際に言っていたが、今は王国側と同様に洞窟内で部隊の再編を行っているのだという。
『大魔王』と呼ばれた者は見当たらなかった。
デルは同期の親友に視線を向けて目を細めると、すぐに視線を戻した。




